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オタク、刀に狂う  作者: Asansol ackey
第一章:ダンジョンについての有識者会議
25/88

1-25:探索者制度、発表

「本日、政府として『探索者制度』の基本方針を発表いたします」

九条恒一の声が、会見場に響く。

いつもより、報道陣の数が多い。

テレビカメラの放列。

海外メディアの姿も、これまで以上に目立った。

「まず、資格制度についてです」

スクリーンに資料が映し出される。

「内部への立ち入りを許可制とし、五段階のランクを設けます。第五級から第一級まで、実技と講習を経て段階的に昇格する仕組みです」

記者たちがペンを走らせる。

「第五級の取得には、身体検査及び基礎講習のみで対応可能です。上位級ほど、実地経験と試験が必要になります」

「素材の扱いについては」

「採取された素材は、原則として国が買い取ります。ただし、危険度・希少度が一定基準以下の素材については、探索者本人の申請により、研究機関または職人への譲渡を認めます」

この一文に、会場が小さくざわついた。

「配信活動についても、許可制とします。生命に関わる映像の公開制限、位置情報の秘匿義務などを定めます」

九条は、一拍置いた。

ここから先が、今日の本題だった。

「そして」

資料が切り替わる。

「近接武器の携行についてです」

会場の空気が、明確に変わった。

「調査の結果、内部生物の一部には、銃器による有効打が得にくい個体が確認されています。これを踏まえ、探索者資格保持者に限り、業務目的での刃物携行を特例として認めることといたします」

どよめきが広がる。

「ご質問をどうぞ」

真っ先に手が挙がった。

「NHKです。刃物の携行と申しますと、日本刀のようなものも対象になるのでしょうか」

「対象となり得ます。ただし、認定を受けた作業用途に限られ、通常の銃刀法とは別枠での運用となります」

記者がメモを取る手を止め、顔を上げる。

「総理、これは......廃刀令以来、初めての大きな転換ということになりますか」

九条は、少しだけ間を置いた。

その質問への答えは、実は昨夜のうちに、自分でも何度も考えたものだった。

「この国は、かつて刀を手放すことで近代化を進めました。今回は、逆です」

はっきりと言う。

「未知の脅威に立ち向かうため、必要な手段として、改めてその選択肢を取り戻す。そう捉えていただいて構いません」

会場が、しんと静まった。

「別の質問を」

「一般開放の時期については、いかがでしょうか」

「現時点で、明確な期日はお約束できません」

九条は、慎重に言葉を選ぶ。

「ですが、制度の骨格が固まった以上、次の段階へ向けた準備は着実に進んでいます」

「つまり、遠くない将来に、ということでしょうか」

「......そう受け取っていただいても、間違いではありません」

会見場が、これまでで一番大きくどよめいた。

会見は一時間半に及んだ。

終了後、控室に戻った九条は、深く息を吐いた。

「総理、お疲れさまでした」

「ああ」

ソファに腰を下ろす。

資料の束を見つめながら、思う。

(まさか、刀の話を、自分の口から発表する日が来るとはな)

あの分科会での議論から、ここまで来た。

早い。

早すぎるくらいだ。

だが、それだけ本気で取り組んできた証でもある。

スマホが震える。

孫からのメッセージだった。

『会見見たよ!!』

『刀持てるようになるとかヤバすぎる!!』

『じいちゃんが決めたんでしょ?』

九条は、小さく笑って返信を打つ。

『わしだけの手柄じゃない』

『みんなで決めたことだ』

『でも、じいちゃんが最初に言い出したんでしょ?』

図星だった。

答えず、代わりに窓の外を見る。

夕暮れの東京。

あの門の方角。

まだ、何も終わっていない。

むしろ、ここからが本番だ。

だが、確かな手応えがあった。

この国は、未知への向き合い方を、少しずつ見つけ始めている。

「......さて」

九条は、スマホをしまいながら呟いた。

「世界はこれを、どう見るかな」

その答えは、その日の夜のうちに、世界中から届くことになる。

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