表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冷遇され死に戻って「今度こそ君を愛する」って?断固お断りです!!  作者: あらいサラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
4/4

エピローグ.勝手な改心の、その後に

——それから、三年という月日が流れた。


柔らかな陽光が差し込む庭で、私は愛しい我が子(カノン)を抱き、お乳を与えていた。


「おい、嬢ちゃん。朗報だぞ」


ひょっこりとパラソルの上から姿を現したのは、あの日からの腐れ縁である小鬼だった。相変わらず私の事を『嬢ちゃん』と呼ぶ()()は、ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべて語り出す。


「あの男……イーシスだっけか? 修道院でお前にフラれた後、どこぞの子爵令嬢と結婚したろ。けどショックを引きずりすぎて、妻を放置あ〜んど領地経営に没頭してたんだとさ。

そしたら例のごとく、使用人どもが『お飾り妻だ、旦那様の本命は他にいる』なんて勘違いして、新しい妻をいじめ始めたらしくてな」


「まぁ。また同じことを繰り返しているのね」


「確か、嬢ちゃんをいじめてた奴らは首にされてたはずなのにな?」


「新しい使用人が見ても、勘違いするような態度だったんでしょう」


呆れを通り越して小さくため息をつく。


自分が周囲にどんな誤解を与えているのかも省みず、過去の罪に囚われるだけで成長のない元旦那の姿が、容易に目に浮かんだ。


「けどな、今度の妻はタダもんじゃなかったぜ。

裕福な子爵家の出で後ろ盾も強くてな。陰湿ないじめを真っ向から返り討ちにした挙げ句、『一度も閨を共にしない冷酷な夫』だって裁判で訴えて、完勝で離婚を勝ち取ったそうだ」


「あら、素敵な奥様ね。以前の私も、それくらい逞しければよかったのかしら」


苦笑しながら、満腹そうな顔で眠る我が子の頭を撫でる。


自分を死へと追い詰めた環境すら、強さを持った者なら踏み潰せたのだ。そう思うと、改めて自分が囚われていた過去の小ささを感じる。


「まあ、そんなわけで男は今や大恥晒して崖っぷち伯爵よ。

あいつ、いまだに『小鬼、出てきてくれ…小鬼…』なんつって虚空に向かって俺様を呼び続けてるからさ、怖ぇ〜のなんの。しばらく近寄らねぇ。

まあ、死んだら魂の回収には行くけどな」


「今度はどんな願いを叶えようとしているのかしらね?」


「さぁな。俺様、搾取されるだけで終わる愚か者には興味ねぇのよ」


その時、庭の向こうから「おーい」という優しい声が響いてきた。


「ベルタ〜、カノン〜」


小走りで近づいて来たのは穏やかな目元をした、少しふっくらとした体型の男性…私の愛する夫だ。


「あなた、お帰りなさい。商会のお仕事はよろしいのですか?」


「ああ、無性に君とカノンに会いたくなってね。死に物狂いで仕事を急いで片付けてきたんだ!」


夫はそう言って汗を拭うと、愛おしそうに私とカノンをまとめてぎゅっと抱きしめてくれた。その温もりに包まれながら、胸の奥がじんわりと満たされていく。


(木の陰に隠れた小鬼が、ニヤニヤとこちらを見つめているけれど……見なかったことにしておきましょう。

はいはい、契約通り、貴方は良い縁を持ってきてくれたわ)


平民(ベルタ)として出会い、心を通わせ、溢れんばかりの愛を注いでくれた大切な人だ。


「そういえば、 隣の国の伯爵家が妻を冷遇して、離婚されたんだそうだよ。やっぱり家族は一番に大事にしないといけないよねぇ」


「あら……ふふ、さすが商人。耳が早いのね」


「え? 何か言ったかい?」


「ううん、なんでもないわ」


私は夫の胸に顔をうずめ、くすりと微笑んだ。


勝手に時を巻き戻し、勝手に改心し、勝手なハッピーエンドを押し付けようとした愚かな男の末路なんて、もうどうでもいい。


私は今、自分自身の手で掴み取った、世界で一番愛おしいハッピーエンドの中にいるのだから。


おしまい

なお、小鬼は小人サイズのゴブリンのような見た目である。

可愛くなくてカノンに泣かれるので、常に背後に回り込む優しさは持ち合わせてる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
「やり直しも何も、あんた嫌われてんのよ」とあの元旦那に言ってやりたいわ。 たぶん彼女は憎むほどの情も持ってないでしょうね。 ただただ「もう二度と私の人生に関わってくんな」というだけで。 死ぬ前は体力も…
ハッピーエンドですね。 主人公が賢く立ち回ったのが良かったです。 復讐のために自分まで魂を差し出したら救われないですもんね。
小鬼が人間にじゃなくて真面目に仲人してくれるとこに好感。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ