喫茶店チェリー②
「ようこそ、喫茶店チェリーへ」
目の前に座った男はそう言って微笑みかけた。
「リーダー、そのセリフはまだちょっと早過ぎはしませんか。彼はまだ入るって決まってないし」
そう言いながら、もう一人の中年の男はカウンターの席に座った。
「そっか。ごめんごめん」
この人たちは一体、どんな関係なんだろうか。怪しい組織だったらどうしよう。しかし、おそらく彼らは私のことを助けてくれただろうから、ここを離れるにしても、このまま何もなしに退散するのも失礼だ。そう思いながら相手の様子をうかがっていると、よほど分かりやすい態度をしていたのだろう。
「まだ、外に出るのは危ないよ」
さっきの彼女が白髪の男の隣に座って、忠告してきた。
「君、あいつらに追われていたんだろう。彼らはしつこさだけが取り柄だからね。少なくとも1週間くらいは身を隠しておいたほうがいいよ。それに、これからどうするか決めるのは、僕たちの話を聞いてからでも遅くはないと思うんだけど」
「それに、君が今一番気になっていること、その答えを僕らは知っている」
私は少しためらいながらも話を聞くだけならと思い、黙って目線を目の前の男に向けた。
「僕の話を聞いてくれるってことでいいかな?」
私はコクリとうなずいた。
「ありがとう。じゃあ単刀直入に言うけど、僕らは世間一般から言うところの『悪魔』って存在なんだ。そして、君もそうだ。悪魔って言っても人間にちょっと毛が生えたような存在で、容姿も大差ないから本人も気づかないなんてよくあることなんだ」
「そうですか」
「驚かないんだね」
「そうですね。驚きはしましたが、その話が本当なら今までのことすべて説明がつくなと思って」
「だけど、悪魔が人間と違う点は『覚醒』にある。悪魔は人間と違って、一度死ぬと覚醒して蘇るんだ。そして、その時各々が特有の能力を得る。僕たちはその能力のことを『代償』って呼んでる。生物の理から脱するための代償。」
「ということは自分も」
「うん、持ってるだろうね。まあ、いずれ嫌でも気づくよ」
まだ、自分の身に起きていることに収集がついていないが、一つ分かったことがあるとしたらこの人たちは敵ではないということだ。
「これからどうするか決まってるかい?」
「いえ、まだです」
「だったらしばらくここでお世話になったら?どうせまだ外は危険なんだから」
「それじゃあ、お言葉に甘えて少しお邪魔させてください」
「やった!だったらまず自己紹介から。僕は、はじめ。一様ここのリーダーしてる。そして…」
「私は、ふたば。よろしくね」
「あっちに座ってるおっさんは、三平さん。君をここまで連れてきたのは彼だよ」
「その件はありがとうございました」
「ええって、こういうのはお互い様だから。とりあえずよろしく」
「そして、カウンターに立ってるのがここの店のマスター。みんなマスターって呼んでるから、きみもそう呼んでいいよ」
マスターにお辞儀をすると、マスターは微笑んだ。
「他にもメンバーはいるけど、ここにいるのは以上かな」
「それじゃあ、改めてようこそ『喫茶店チェリー』へ」
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