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アイコン三国志  作者: 小金沢
第九章 南中の戦い
PR
92/126

〇九一   二縦二擒と三縦三擒

~~~孟獲軍 本陣~~~



挿絵(By みてみん) 阿会喃(あかいなん)

「蜀軍の強さは想像以上だったデース……」



挿絵(By みてみん) 董荼那(とうとな)

「都のひょろひょろ侍と侮っていたのは間違いだったようだ。

奴らは強い。装備や馬も俺たちよりはるかに優れてやがる……」



挿絵(By みてみん) 孟獲(もうかく)

「ぶはははは! おいおい、なんだよお前ら。

ここは孟獲大王の葬儀場か? 俺はこう見えて死んじまってんのかよ?

だったらおくやみ申し上げねえとな! わっはっはっはっはっ!」



挿絵(By みてみん) 阿会喃(あかいなん)

「だ、大王は元気デスネ……」



挿絵(By みてみん) 孟獲(もうかく)

「あったりまえだろうが! お前らの目はそろいもそろって節穴だな!

俺はこの目で蜀軍を観察してわかった。

奴らは俺らの敵じゃねえってな! ぶわっはっはっはっ!」



挿絵(By みてみん) 董荼那(とうとな)

「……簡単に奴らに捕らえられたのに強気だな」



挿絵(By みてみん) 孟獲(もうかく)

「そりゃいくら俺様でも一人じゃどうしようもねえよ。

ぶはははは! 忙牙長のバカが安い挑発に掛かって、俺様を一人にするからよ!

あーはっはっはっ! 思い出したらまた笑えてきたぜ!」



挿絵(By みてみん) 忙牙長(ぼうがちょう)

「…………面目ない」



挿絵(By みてみん) 孟獲(もうかく)

「水牛かぶった斧野郎がしょぼくれた顔してんじゃねえよ!

お、俺をもっと笑わせる気かよ。ぶあっはっはっはっ!」



挿絵(By みてみん) 阿会喃(あかいなん)

「大王! 笑っている場合ではないデスヨー!

いったいどうやって蜀軍を倒すつもりデスか!?」



挿絵(By みてみん) 孟獲(もうかく)

「だからお前らの目は節穴だってんだ。わざわざ倒す必要はねえ。

考えてもみろ。この南中には毒泉や毒ガス、虎に豹に狼に蛇に……。

ぶはははは! 心強い味方が山ほどいるじゃねえか!」



挿絵(By みてみん) 董荼那(とうとな)

「そ、そうか。俺たちから先制攻撃を仕掛けたのが間違いなんだな。

俺たちはしっかりと防備を固めて、奴らを懐深くに誘い込んでやれば……」



挿絵(By みてみん) 阿会喃(あかいなん)

「奴らは何もできずに全滅デスヨ!!」



挿絵(By みてみん) 孟獲(もうかく)

「がっはっはっはっはっはっ! そういうこった!

俺たちはなんにもする必要はねえ。酒でも飲みながら見物してりゃあ、

楽しい森の仲間たちが奴らを屠ってくれるだろうよ。

わっはっはっはっはっはっ…………」



~~~蜀軍 本陣~~~



挿絵(By みてみん) 李恢(りかい)

「孟獲の軍が引き上げただと?」



挿絵(By みてみん) 馬謖(ばしょく)

「口ほどにもない。きっと我々に逆らう愚を悟り総退却したのだろう!

いくら南蛮王といえども私や丞相の叡智には

敵わないということだ! あっはっはっはっ――」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「馬鹿め」



挿絵(By みてみん) 馬謖(ばしょく)

「はっはっはっ……へ? なんですって?」



挿絵(By みてみん) 黄月英(こうげつえい)

「馬謖はどうしようもない馬鹿だから今すぐここで死ね馬鹿めと言ったです」



挿絵(By みてみん) 馬謖(ばしょく)

「そこまでは言ってない! じ、丞相。いったいどういうことですか」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「犬や猫でも己の非力さをわきまえるが、獣よりも野卑なあの孟獲とやらが、

一度敗れただけでおとなしくなるものか。

彼奴らは余を誘い込んでおるのだ。首が欲しければ、ここまで来てみよと。

……面白い」



挿絵(By みてみん) 王伉(おうこう)

「丞相! 孟獲軍の居所がわかったぜ!

濾水(ろすい)の向こうまで撤退して陣を布いてやがる!」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「馬鈞」



挿絵(By みてみん) 馬鈞(ばきん)

「はいはい。スプレー、スプレー。ファブリーズ、ファブリーズ」



挿絵(By みてみん) 呂凱(りょがい)

「濾水といえば河自体が猛毒みてえなもんだ。

それにあの辺りには毒蛇や猛獣が山ほど生息してるぜ。

いわゆる天然の要害って奴だな!」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「楊儀」



挿絵(By みてみん) 楊儀(ようぎ)

「は、はい。消臭スプレーが足りないぞ! 早く用意しろ!」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「フン。河と獣を盾にしたつもりか。愚かな。

馬岱、貴様は一軍を率いて河を渡れ」



挿絵(By みてみん) 馬岱(ばたい)

「……多少の犠牲は構わんから、とにかく河を渡る手段を

探して来いって解釈でよろしいやろか」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「行け」



挿絵(By みてみん) 馬岱(ばたい)

「はいな」



挿絵(By みてみん) 馬雲緑(ばうんりょく)

「馬岱兄やん、ウチも手伝おか?

旦那は輸送部隊の警護に回ってて、ウチは暇やし」



挿絵(By みてみん) 馬岱(ばたい)

「いらん。お前になんかあったら趙雲はんに申し訳が立たんやろが」



挿絵(By みてみん) 馬雲緑(ばうんりょく)

「……兄やんかて馬家の最後の一人やないか」



挿絵(By みてみん) 馬岱(ばたい)

「アホ。お前もおるし、董白の姐御もおる。

わてに何があろうと馬家は滅びん。

せやからお前は旦那を救けることだけ考えとき」



挿絵(By みてみん) 馬雲緑(ばうんりょく)

「…………気いつけてな」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「うるわしい兄妹愛は裏でやれ。とっとと行け」



挿絵(By みてみん) 馬岱(ばたい)

「はいはい」



~~~蜀 馬岱軍~~~



挿絵(By みてみん) 馬岱(ばたい)

「ちょっとこれはシャレにならへんで。

河を渡ろうとしただけで兵士がバタバタ死んでしまうわ。

どうすりゃええんやろ……」



挿絵(By みてみん) 関索(かんさく)

「お困りのようだな、馬岱殿」



挿絵(By みてみん) 馬岱(ばたい)

「おう、関索か。援軍に来てくれたんか」



挿絵(By みてみん) 鮑三娘(ほうさんじょう)

「キキ。李恢っちに手助けするよう言われたっキャ。

たぶんあの人、この遠征中に胃を悪くして死ぬと思うにゃ~」



挿絵(By みてみん) 関索(かんさく)

「それに俺は師匠になるべく厳しい戦場に臨めと言われている。

馬岱殿の任務がいま最も過酷だと思った」



挿絵(By みてみん) 馬岱(ばたい)

「同感や。河を渡れとか丞相も簡単に言いよるでほんま」



挿絵(By みてみん) 鮑三娘(ほうさんじょう)

「キキ? なんかあっちから物音がするっキャ」



挿絵(By みてみん) ??

「え? アンタたちひょっとして……」



挿絵(By みてみん) 関索(かんさく)

「おお、これはお嬢さん。ひょっとして付近の村人さんかい?」



挿絵(By みてみん) 馬岱(ばたい)

「!(関索はんの雰囲気が変わった……?)」



挿絵(By みてみん) ??

「……パパに聞いたわ。蜀の遠征軍の人ね」



挿絵(By みてみん) 関索(かんさく)

「おっと、怖がる必要はないぜ。俺たちは侵略に来たわけじゃねえんだ。

ましてや村人さんに、それも綺麗なお嬢さんに迷惑なんて掛けやしねえよ」



挿絵(By みてみん) 鮑三娘(ほうさんじょう)

「索にゃん。鼻の下伸びてる」



挿絵(By みてみん) ??

「……だったら何をしにこの南中に来たの」



挿絵(By みてみん) 馬岱(ばたい)

「んん……。それを話したらちょいと長くなるで。

そうや、そんなことよりあんさん、この河の渡り方を知らへんか?」



挿絵(By みてみん) ??

「河を渡って南中軍を攻めるのね」



挿絵(By みてみん) 馬岱(ばたい)

「ぶっちゃけるとその通りや。

わてらは南中を荒らしまわる孟獲らをこらしめに来たんやからな」



挿絵(By みてみん) ??

「別に大王は誰も困らせてないわ。

アンタたちが孟獲が邪魔になったから殺しに来ただけでしょ」



挿絵(By みてみん) 鮑三娘(ほうさんじょう)

「あーもう面倒くさいっキャ!

とにかく河を渡る方法を知ってるならおとなしく教えるにゃ!」



挿絵(By みてみん) 関索(かんさく)

「鮑三娘、物騒なものはしまっときな。

――なあ、お嬢さん。俺らは君と言い合いをするつもりはない。

孟獲を倒すこと。それが任務だからやるだけだ。

そのために、君の力が必要なんだ」



挿絵(By みてみん) ??

「!!」



挿絵(By みてみん) 鮑三娘(ほうさんじょう)

「索にゃん。どさくさにまぎれて手を握ってるのはなんでキャ?」



挿絵(By みてみん) ??

「は、離して!」



挿絵(By みてみん) 関索(かんさく)

「おっと、すまない」



挿絵(By みてみん) ??

「…………渡りたいなら、夜に渡ればいいのよ」



挿絵(By みてみん) 馬岱(ばたい)

「え?」



挿絵(By みてみん) ??

「夜なら河の毒素が薄れるから、イカダや小船で渡れる」



挿絵(By みてみん) 関索(かんさく)

「そうか。ありがとう、助かったよ!」



挿絵(By みてみん) ??

「……れ、礼なんて言わないでよ」



挿絵(By みてみん) 関索(かんさく)

「……行っちまった。かわいい子だったな」



挿絵(By みてみん) 鮑三娘(ほうさんじょう)

「索にゃん。今夜は徹夜で説教するから覚悟しといてにゃ……」



~~~忙牙長軍~~~



挿絵(By みてみん) 忙牙長(ぼうがちょう)

「へっへっへっ。蜀の遠征軍どもめ、

今頃は毒河や毒蛇の餌食になってるだろうな。こんなに楽な戦はねえぜ。

俺も退屈な偵察なんてさっさと切り上げて、宴会に戻るとするか」



挿絵(By みてみん) 馬岱(ばたい)

「ほう、宴会でっか。わてもお相伴にあずからせて欲しいもんやな」



挿絵(By みてみん) 忙牙長(ぼうがちょう)

「んな!? お、お前は蜀軍の……」



挿絵(By みてみん) 馬岱(ばたい)

「馬岱や。あんま有名じゃなくてすんまへんな」



挿絵(By みてみん) 忙牙長(ぼうがちょう)

「どこから湧いて出やがった!?

く、くそ。ここで始末してやる!」



挿絵(By みてみん) 馬岱(ばたい)

「人を湧いて出たとかボウフラみたいに言わんといてくれんかッ!!」



挿絵(By みてみん) 忙牙長(ぼうがちょう)

「ぎゃああああああ!!」



挿絵(By みてみん) 馬岱(ばたい)

「ほんますんまへんな。有名じゃない奴に斬られてまうなんて」



~~~孟獲軍 本陣~~~



挿絵(By みてみん) 阿会喃(あかいなん)

「ハハハハハ。大王、もう一杯どうぞデスヨー!」



挿絵(By みてみん) 孟獲(もうかく)

「がはははは! お前のほうこそ遠慮するな。

なかなかいける口じゃねえかよ!」



挿絵(By みてみん) 董荼那(とうとな)

「だ、大王! 大変だ!」



挿絵(By みてみん) 孟獲(もうかく)

「どうした? つまみが無くなったか?

ぶはははは! それなら弟に買いに行かせ――」



挿絵(By みてみん) 董荼那(とうとな)

「それどころじゃねえ! 蜀軍が河を渡りやがった!

しかも敵に出くわした忙牙長が斬られちまったぞ!

このままでは俺たちの補給路を断たれちまうぜ……」



挿絵(By みてみん) 阿会喃(あかいなん)

「オーマイガッ!

あのリバーを越えるなんて蜀軍は空を飛んだデスカー!?」



挿絵(By みてみん) 孟獲(もうかく)

「わっはっはっはっ! 俺様の見たところ奴らに羽根は生えてなかったぞ。

だが無傷で渡れたわけがねえ。蹴散らしてこいよ董荼那!」



挿絵(By みてみん) 董荼那(とうとな)

「あ、ああ。任せろ!」



~~~馬岱軍~~~



挿絵(By みてみん) 関索(かんさく)

「丞相に河の渡り方を連絡した。間もなく増援部隊が来てくれるだろう」



挿絵(By みてみん) 馬岱(ばたい)

「おおきに。……でもうちの丞相ならこんなめんどいことせんでも、

ウチワを一あおぎすりゃ河を干上がらせられるんちゃうか?

わてらを苦労させて楽しんでるだけやあらへんかな」



挿絵(By みてみん) 鮑三娘(ほうさんじょう)

「索にゃん! 董荼那のヤツが攻めてきたっキャ!

こっちよりずっと数が多いにゃ!」



挿絵(By みてみん) 関索(かんさく)

「早速来やがったか。よし、今度は俺に任せてくれ。

増援部隊を待つまでもなく片付けてやらあ!」



挿絵(By みてみん) 馬岱(ばたい)

「いや……ちょい待ち。

董荼那だったら戦うまでもあらへんやろ。わてにいい考えがあるで」



~~~董荼那軍~~~



挿絵(By みてみん) 董荼那(とうとな)

「蜀軍め! これ以上の進撃は許さんぞ!

この董荼那様が殲滅してやる!」



挿絵(By みてみん) 馬岱(ばたい)

「待て待て待て。董荼那やと?

おい、アンタ恥ずかしくないんか?」



挿絵(By みてみん) 董荼那(とうとな)

「な、なんだと?」



挿絵(By みてみん) 馬岱(ばたい)

「アンタも孟獲も阿会喃も、

わてらに捕らえられておきながら見逃してもろうたやろ。

その恩を忘れて、わてらをいてもうたるなんて大した面の皮やな。

恥知らずとはアンタらのことやでほんま」



挿絵(By みてみん) 董荼那(とうとな)

「ぐっ…………。

わ、我々とて恩も恥も心得ているわ!」



挿絵(By みてみん) 馬岱(ばたい)

「だったらやることは一つやろ。

とっとと帰って孟獲はんにも降伏を勧めたらどうや。

ほれほれ、はよせんとわてらに補給路を断たれてまうで」



挿絵(By みてみん) 董荼那(とうとな)

「むむむむむ……。

ひ、引き上げだ! いったん引き上げるぞ!!」



挿絵(By みてみん) 関索(かんさく)

「……蛮族も恥は恥と知るか」



挿絵(By みてみん) 鮑三娘(ほうさんじょう)

「おっ。索にゃんかっこいいッキャ!」



~~~孟獲軍 本陣~~~



挿絵(By みてみん) 孟獲(もうかく)

「ぶわっはっはっはっ!

そ、それでお前、言い負かされて逃げ帰ってきたのかよ!

なんてだらしのねえ野郎だ! あっはっはっはっはっ!!」



挿絵(By みてみん) 董荼那(とうとな)

「ぬう……。し、しかし大王!

奴らの言う通り、俺たちは補給路を断たれ、

しかも敵は続々と河を渡ってきている。とうてい勝ち目は無いぞ!」



挿絵(By みてみん) 阿会喃(あかいなん)

「彼らはジェントルマンデース。

おとなしく降伏すればきっと許してくれマースヨ?」



挿絵(By みてみん) 孟獲(もうかく)

「おいおいおいおい! 阿会喃まで降伏する気満々かよ!

だ、だったらこの前の時に降伏しとけばよかったじゃねえかよ!

ぶわっはっはっはっ! 言われなけりゃ気づかねえんだぜ!

駄目だこいつら早くなんとかしねえと!」



挿絵(By みてみん) 阿会喃(あかいなん)

「オゥ……。こうなったら董荼那」



挿絵(By みてみん) 董荼那(とうとな)

「な、なんだ?」



挿絵(By みてみん) 阿会喃(あかいなん)

「大王を縛り上げて蜀軍に降伏しマースヨ!!」



挿絵(By みてみん) 董荼那(とうとな)

「し、しかたねえ! やってやらあ!」



挿絵(By みてみん) 孟獲(もうかく)

「だっはっはっはっ! こりゃ参った!

泥酔してて抵抗できねえや!

あっさり縛られちまったぜ! わっはっはっはっはっ……」



~~~蜀軍 本陣~~~



挿絵(By みてみん) 孟獲(もうかく)

「――ってえ顛末だ。わっはっはっはっ!

こんなに早くまたお前に会うとは思わなかったぜ!」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「なるほど。大した人望であるな」



挿絵(By みてみん) 孟獲(もうかく)

「ぶはははは! まったくだぜ!

――なあ諸葛亮サンよ。こりゃノーカンだろ?」



挿絵(By みてみん) 馬謖(ばしょく)

「は? ノーカン?」



挿絵(By みてみん) 孟獲(もうかく)

「俺様は酔いつぶれてたし、子飼いの連中に裏切られたんだぜ。

がはははは! こんなの負けたうちに入りゃしねえよ! ノーカウントだろ!

だからさっさと解放してよ、仕切り直しの一戦と行こうぜ!」



挿絵(By みてみん) 李恢(りかい)

「な、なにを馬鹿なことを……。

孟獲! 人心がお前から離れていることはこれで身にしみたはずだ!

観念して我々に降伏しろ!」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「よかろう。この野蛮人を解放してやれ」



挿絵(By みてみん) 李恢(りかい)

「な――わ、私の意見はガン無視ですか丞相!?」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「は? 何か言っていたのか?

羽虫のごとき貴様らのさえずりなど余には届かぬ」



挿絵(By みてみん) 李恢(りかい)

「…………い、胃が…………」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「孟獲とやら。奇遇だな。

余もまだまだ貴様を苦しめ足りぬと思っていたところだ。

さっさと蛮族の巣に帰り、戦の準備を整えるがいい」



挿絵(By みてみん) 孟獲(もうかく)

「がっはっはっはっはっ! 話がわかるじゃねえか。

次はお前に吠え面かかしてやるからな! ぶわっはっはっはっはっ……」



挿絵(By みてみん) 楊儀(ようぎ)

「こ、心の強い男ですな……」



挿絵(By みてみん) 馬忠(ばちゅう)

「ところで丞相、先に降伏してきた阿会喃と董荼那の処遇はどういたそうか」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「いらぬ」



挿絵(By みてみん) 馬忠(ばちゅう)

「いらぬ?」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「獣を飼う趣味はない。獣は獣らしく野に放してやれ」



挿絵(By みてみん) 李恢(りかい)

「し、しかし彼らは孟獲を裏切った身です。

このまま帰せばきっと孟獲に殺されますぞ」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「それがどうした」



挿絵(By みてみん) 李恢(りかい)

「う………………」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「蛮族の獣が死のうが生きようが余の知ったことではない」



挿絵(By みてみん) 李恢(りかい)

「…………ば、馬鈞殿。

い、胃薬は作れますかな……?」



~~~孟獲軍 本陣~~~



挿絵(By みてみん) 董荼那(とうとな)

「うう……。まさか俺たちも解放されるとは思わなかったぜ」



挿絵(By みてみん) 阿会喃(あかいなん)

「てっきり蜀軍に加えてもらえると思ってましたヨ……。

大王に会ったらきっと殺されマース」



挿絵(By みてみん) 董荼那(とうとな)

「こんなことになるなら、大王の首を手土産に持って行けばよかったな……」



挿絵(By みてみん) ??

「董荼那さぁぁん! 阿会喃さぁぁん! うわぁぁぁぁん!」



挿絵(By みてみん) 哭く南蛮王の弟・孟優



挿絵(By みてみん) 阿会喃(あかいなん)

「ジーザス!! だ、誰かと思ったら大王の弟の孟優サンじゃないデスカ」



挿絵(By みてみん) 董荼那(とうとな)

「ど、どうしたんだ号泣なんかして」



挿絵(By みてみん) 孟優(もうゆう)

「だって……。お二人とも野蛮な蜀軍に

殺されたんだと思ったんですよぉぉ……。

僕も兄ちゃんも心配してたんですよぉぉ……。

無事でよかったです。さあ、早く兄ちゃんに顔を見せてやってください」



挿絵(By みてみん) 阿会喃(あかいなん)

「で、デモ……」



挿絵(By みてみん) 孟優(もうゆう)

「兄ちゃんは諸葛亮に説得されて反省したんです。

蜀軍につてを持つお二人に協力してもらって、

降伏したいと考えてるんですよぉぉ」



挿絵(By みてみん) 阿会喃(あかいなん)

(これは……もしかしてチャンスじゃないデスカ?)



挿絵(By みてみん) 董荼那(とうとな)

(お、おう。考えてみりゃ、俺たちは大王にとっても貴重な戦力だ。

それをみすみす失うほど大王は馬鹿じゃないはずだ。

よし、首尾よく大王を降伏させて蜀軍に褒美をもらおうぜ!)



挿絵(By みてみん) 阿会喃(あかいなん)

(董荼那が金環三結みたいなこと言ってマスヨー!)



挿絵(By みてみん) 孟優(もうゆう)

「ほらほら、兄ちゃんもお待ちかねですよ。

――早くお前らの首が見たいってねえええええ!!」



挿絵(By みてみん) 董荼那(とうとな)

「うわぁぁぁぁあああ!!」



挿絵(By みてみん) 阿会喃(あかいなん)

「ノォォォオオオオウ!!」



挿絵(By みてみん) 孟優(もうゆう)

「う……うぇぇぇえええん!

董荼那と阿会喃が首だけになっちゃったよぉぉ。

かわいそうだよぉぉ……」



挿絵(By みてみん) 孟獲(もうかく)

「ぶわっはっはっはっ! 我が弟ながらサイコっぷりに身の毛がよだつぜ!

……で、どうしてあいつらを殺しちまったんだ?」



挿絵(By みてみん) 孟優(もうゆう)

「兄ちゃぁぁん……。董荼那と阿会喃が死んじゃったよぉぉ」



挿絵(By みてみん) 孟獲(もうかく)

「ぶっ!! だ、だからお前が殺したんだっての!! あっはっはっ!

落ち着けよ弟。怖ええから泣いてねえで早く説明してくれ」



挿絵(By みてみん) 孟優(もうゆう)

「うっうっ。兄ちゃんがね、

董荼那たちに説得されて、降伏するって嘘をつくんだ。

それで僕が降伏の印にって、しびれ薬を入れた酒を持っていくのさ。

えぐっ。それを蜀軍に飲ませて、動けなくなったところを

兄ちゃんが攻め込むんだよぉぉ」



挿絵(By みてみん) 孟獲(もうかく)

「がっはっはっ! そりゃ妙案だぞ弟よ!

…………で、あいつらを殺す必要はあったのかそれ?」



挿絵(By みてみん) 孟優(もうゆう)

「あいつらが密告したら台無しだから、念には念を入れたんだよぉぉ。

か、かわいそうだよぉぉぉぉ!!」



挿絵(By みてみん) 孟獲(もうかく)

「そうかそうか! あっはっはっ! そりゃかわいそうだ!

おっと、俺に抱きつくのはやめてくれよ。怖ええからよ。

わかったからさっさと行ってこいよ!

これで蜀軍は終わりだ! ぐわっはっはっはっ!」



~~~蜀軍 本陣~~~



挿絵(By みてみん) 孟獲(もうかく)

「ぐふふふふ……。孟優の野郎はうまくやったかな。

そろそろ蜀軍の連中がしびれ薬で泡吹いてる頃だが……。

ええい、もう待ちきれねえぜ! 行くぞ野郎ども!!」



挿絵(By みてみん) 孟優(もうゆう)

「あわわわわわわわわわわ」



挿絵(By みてみん) 孟獲(もうかく)

「も、孟優!? あっひゃっひゃっひゃっ!!

お、おめえが泡吹いてどうすんだよ!」



挿絵(By みてみん) 孟優(もうゆう)

「ぼ、ぼぼぼぼ僕らが。

さ、ささささ先にしびれれれれ薬を飲まされれれれ」



挿絵(By みてみん) 孟獲(もうかく)

「ぶほっ! い、いくら酒好きだからってお前、

しびれ薬まで飲む奴があるかよ!」



挿絵(By みてみん) 馬謖(ばしょく)

「あがががががががががが」



挿絵(By みてみん) 楊儀(ようぎ)

「しびびびびびびびびびび」



挿絵(By みてみん) 孟獲(もうかく)

「…………ところで、何人か蜀軍の野郎どもも

しびれてやがんのは気のせいかな?」



挿絵(By みてみん) 馬鈞(ばきん)

「ちょっと効き目を確かめるために味見してもらっただけだヨ」



挿絵(By みてみん) 王平(おうへい)

「てめえらは完全に包囲されてんぜ。おとなしく降伏しろってんだ!」



挿絵(By みてみん) 孟獲(もうかく)

「ぶはははは! 前にも見た光景だなおい!

だがてめえら、この孟獲大王を甘く見るなよ!」



挿絵(By みてみん) 馬忠(ばちゅう)

「抵抗するつもりか? ならば我が油相撲の妙技を味わうが――」



挿絵(By みてみん) 孟獲(もうかく)

「うぷぷぷぷ。お、俺様を他の連中と同じだとあなどってもらっちゃ困るぜ!

はっはっはっ! 俺様は降伏するぞ!」



挿絵(By みてみん) 張翼(ちょうよく)

「こ、降伏だと? 抵抗しないと言うのか?」



挿絵(By みてみん) 孟獲(もうかく)

「ひゃひゃひゃひゃひゃ!

どう考えたってこっから逆転できるわきゃねえからな!

ほれほれ、さっさとあの悪人面の前までつれてってくれよ!」



~~~蜀軍 本陣~~~



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「まったくうんざりだな。

一日と措かず貴様の醜悪な面を拝む羽目になるとは」



挿絵(By みてみん) 孟獲(もうかく)

「ぶはははは! そうつれないことを言うなよ。

俺様にはお前の悪人面も好ましく思えてきたぜ!」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「そうか。ならば帰れ」



挿絵(By みてみん) 孟獲(もうかく)

「おう! やっぱり逃がしてくれるんだな!

そうしてくれると思ったぜ! ははははは!」



挿絵(By みてみん) 李恢(りかい)

「や、やっぱり逃がすのですか……」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「当然だ。こやつらは勝手に自滅しただけではないか。つまらぬ」



挿絵(By みてみん) 李恢(りかい)

(つまる、つまらないで戦をしないでいただきたい……)



挿絵(By みてみん) 孟獲(もうかく)

「……ところで諸葛亮サンよ。

ついでと言っちゃなんだが教えてくれんか。

今回の策はなかなかうまいと思ったんだがよ。

なんで簡単に見破られたんだ?」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「ほう。それは興味深い。あれを蛮族の間では策などと呼ぶのか。

余はあれを浅知恵と呼んでいるがな」



挿絵(By みてみん) 孟獲(もうかく)

「ぶふぉっ! アンタは面相だけじゃなく口も悪いな!

だったら、どうしたらアンタに勝てるかも教えてくれねえか?」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「下手の考え休むに似たりという言葉を教えてやろう。

貴様ら脳筋の蛮族どもがいくら頭をひねろうが時間の無駄だ。

だが貴様らの中にも少しは頭の血の巡りがマシな者も

一匹くらいはいるだろう。今度はそいつを連れて来い」



挿絵(By みてみん) 孟獲(もうかく)

「知恵者の味方か……。おお、そういえばアイツがいたな!

気持ち悪い野郎だから忘れてたぜ!

がっはっはっ! ありがとよ!

今度はそいつを引きずり出して、てめえらを倒してやるぜ!

わっはっはっはっはっ…………」



挿絵(By みてみん) 張翼(ちょうよく)

「ま、まさか丞相に助言を求めるとは……」



挿絵(By みてみん) 李恢(りかい)

「……たしかに野卑な男だが、

丞相に感化されて、少しは頭を使うようになったのだろう」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「馬鹿な。あの者は余に勝てるとまだ思っているのだ。

何一つとして成長してはおらぬ。なんと無知蒙昧な輩であるか。

その蛮族どもの知恵者とやらが、どの程度のものであるか、楽しみになってきたな。

クックックッ……。少しは余の暇つぶしに寄与してくれればよいのだがな……」



~~~~~~~~~



かくして諸葛亮は孟獲を三度捕らえ三度解放した。

孟獲は諸葛亮の助言を得て南蛮の知恵者を頼る。

はたして南蛮の智力は諸葛亮の予想を超えるのか。


次回 〇九二   南中の知恵者

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