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アイコン三国志  作者: 小金沢
第八章 夷陵の戦い
PR
88/126

〇八七   桃園の誓い

~~~蜀 永安(えいあん)~~~



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「ほうか、簡ちゃんに麋竺さん、それに孫乾さんだけじゃのうて、

馬超さんまで亡くなってもうたか……」



挿絵(By みてみん) 董夫人(とうふじん)

「ええ……」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「一年、遠征してただけなのに、

ずいぶんといろんな人が亡くなったんじゃなあ……」



挿絵(By みてみん) 来敏(らいびん)

「彭羕の馬鹿などは謀叛を企んで殺されたんじゃぞ。

劉備陛下がいないと国は乱れ放題じゃな!」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「わはは。わしがいてもいなくても、

国の治安は変わらんよ。わしは無能じゃからなあ……。

それにしても、もう90になろうかという来敏さんはこんなに元気なのに、

なんでみんな次々と死んでまうんじゃろうな……」



挿絵(By みてみん) 来敏(らいびん)

「そういう陛下も今にもくたばりそうな顔色じゃぞ。

白帝城を永安だなんて平和な名前に改めたり、

手痛い敗北を喰らって弱気になったのか?」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「そうじゃな……。

関さんも張さんも、法さんもみんな亡くなって、さみしくなってもうたわ……」



挿絵(By みてみん) 董夫人(とうふじん)

「…………こんな時になんだけど、陛下。さっきの話なんですが」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「ああ、董白さんが引退して、馬超さんの墓を守って暮らしたいって話じゃな」



挿絵(By みてみん) 董夫人(とうふじん)

「あたしは曹操に復讐するため馬超を利用してきたわ。

おじい様やお父様、部下のみんなを失い、

あたしは本当は……さみしかっただけなのかもしれない。

馬超はいつだってあたしのために戦ってくれた。あたしのそばにいてくれた。

だから今度はあたしが、馬超がさみしくないよう、ずっとそばにいてあげたいの」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「こんなことを言ったらあんたや張飛さんに怒られるかもしれんが、

でもやっぱりわしは、戦場で女のあんたに無理はさせとうない。

いいことじゃと思うぞ。馬超さんも安心するじゃろう」



挿絵(By みてみん) 董夫人(とうふじん)

「……ありがとうございます」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「軍師格の董白さんが抜けてみんな困るじゃろうし、

わしもべっぴんさんがいなくなったらさみしいがな。わはは」



挿絵(By みてみん) 董夫人(とうふじん)

「…………諸葛亮、帰ってくるといいわね」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「……………………そうじゃな」



挿絵(By みてみん) 董夫人(とうふじん)

「では陛下、お元気で」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「おう。董白さんも達者でな」



挿絵(By みてみん) 趙雲(ちょううん)

「劉備先輩、ちょっといいッスか。

お耳に入れといたほうがいいと思う話があるんスが」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「おう。ちょうど董白さんとの話も終わったところじゃ。

ん? 横にいるべっぴんさんは誰じゃ?」



挿絵(By みてみん) 趙雲(ちょううん)

「ああ、これは妻の馬雲緑ッス」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「妻!? り、龍さん結婚しとったんか? いつの間に……」



挿絵(By みてみん) 馬雲緑(ばうんりょく)

「お初にお目にかかるっす。ウチは馬超の妹で趙雲の嫁や」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「そ、そのうえ馬超さんの妹なのか……。そんな縁組わしは初めて聞いたぞ。

で、どうしてここにいるんじゃ?

そりゃべっぴんさんが見舞いに来てくれるのはうれしいがのう」



挿絵(By みてみん) 馬雲緑(ばうんりょく)

「うす。馬超兄やんが死んでもうたんで、今度はウチの出番だと思ったんや。

兄やんの分もウチが戦うで!」



挿絵(By みてみん) 趙雲(ちょううん)

「妻は弓の名人ッスよ。力になれると思うッス」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「ほ、ほうか……。龍さんがそう言うなら頼もしいのう。

それにしても妻帯しとったとは驚いたぞ。龍さんも隅に置けんのう。

……そういえばわしは龍さんの年齢も知らんかったな。いくつなんじゃ?」



挿絵(By みてみん) 趙雲(ちょううん)

「93ッス」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「へ? ………………き、き、きゅうじゅうさん!? マジで!?」



挿絵(By みてみん) 伊籍(いせき)

「へ、陛下、お体にさわります。落ち着かれよ」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「こ、これが落ち着いていられるか……。マジか。マジでか龍さん?」



挿絵(By みてみん) 趙雲(ちょううん)

「マジッス」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「わ、わしよりずっと年上じゃったのか……。

来敏さんより上じゃないか……。その若さはどうなっとるんじゃ……」



挿絵(By みてみん) 馬雲緑(ばうんりょく)

「ウチの亭主はバケモノやから」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「……と、ところで馬雲緑さんは何歳なんかのう?」



挿絵(By みてみん) 馬雲緑(ばうんりょく)

「ウチは19やけど」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「年の差婚とか犯罪ってレベルじゃねーぞ……。もう神話か何かじゃな……」



挿絵(By みてみん) 趙雲(ちょううん)

「じ、自分の話はそれくらいでいいッスよ。

それより、陛下が寝込まれてるのを見て、南の方がきな臭くなってるッス。

一大勢力を築いてる豪族の雍闓(ようがい)に、越嶲(えっしゅん)王の高定(こうてい)、

さらに牂柯(しょうか)太守の朱褒(しゅほう)らが手を結んで反乱を企んでるッスよ。

早く対処しないと大変なことになるかもしれないッス!」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「もし謀叛を起こされたら、討伐軍を送らにゃいかんのう。

……でも討伐軍を誰に任せたらいいんじゃろうか。

龍さんがやっとくれるか?」



挿絵(By みてみん) 趙雲(ちょううん)

「自分は指揮官の器じゃないッス。

……そうッスね。李恢先輩とか、あとは…………そうだ、呉懿先輩とかどうスか?」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「李恢さんじゃちと頼りないのう。

ええと、もう一人は誰じゃったか? ……ああ、呉懿さんか。

漢中やこの永安の守りも考えると、呉懿さんあたりは残しときたいのう」



挿絵(By みてみん) 馬謖(ばしょく)

「陛下、誰かお忘れではありませんか?

この蜀の未来を担う俊英・馬謖の名を!

私にお任せいただければ反乱軍はもちろんのこと、魏軍も粉砕して見せましょう!」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「…………へ?

馬謖さんや、あんたは戦はもちろん笑いのセンスもないのう。

それちぃとも面白くないぞ」



挿絵(By みてみん) 馬謖(ばしょく)

「え? あ、その。ははは。

へ、陛下に笑ってもらえるかと思ったんですが。ははは。す、すみません……」



挿絵(By みてみん) 趙雲(ちょううん)

「じゃあやっぱり先輩が早く元気になって、遠征軍を率いるのが一番ッスよ!」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「……わしはもう無理じゃよ。

こんな時こそ…………。いや、なんでもない。

いつまでもいない人のことを引きずってもしょうがないわい。

――伊籍さんや」



挿絵(By みてみん) 伊籍(いせき)

「は、はい」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「ちょっくら成都に戻って、劉禅(りゅうぜん)さんを呼んでくれんか」



挿絵(By みてみん) 伊籍(いせき)

「阿斗(あと)様、い、いえ劉禅様をですね……。

か、かしこまりました!」



挿絵(By みてみん) 趙雲(ちょううん)

(劉備先輩がご長男の劉禅先輩を病床に呼ぶ……。

いよいよ後事を託すつもりみたいッスね……。

劉備先輩…………)



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「……………………」



~~~蜀 成都(せいと)~~~



挿絵(By みてみん) 伊籍(いせき)

「――は? り、劉禅様がいない……?」



挿絵(By みてみん) 龐羲(ほうぎ)

「ああ。大騒ぎで探し回っているところだ。

居場所がわかるなら教えて欲しいわ!」



挿絵(By みてみん) 許靖(きょせい)

「父親が、皇帝陛下がこんな時に、いったいどこをほっつき歩いているのだ!」



挿絵(By みてみん) 尹黙(いんもく)

「め、面目ない。傅役のワシがしっかりしていないからだ……」



挿絵(By みてみん) 李恢(りかい)

「尹黙ばかりを責められまい。

呉への遠征や、陛下の病状のことで、我々も劉禅様まで気が回らなかったのだからな」



挿絵(By みてみん) 李厳(りげん)

「ケッ。馬鹿息子の考えることなんて誰にもわかりゃしねーよ」



挿絵(By みてみん) 呉懿(ごい)

「おやおや李厳さん、ちょっと口が悪過ぎますよ」



挿絵(By みてみん) 秦宓(しんふく)

「口が過ぎるぞ李厳!

陛下が倒れた今こそ、我々は一致団結して劉禅様を守り立てる時であろうが!」



挿絵(By みてみん) 費詩(ひし)

「秦宓の言うとおりだ。

なんでもいい、誰か劉禅様の行き先に心当たりはないのか?」



挿絵(By みてみん) 楊儀(ようぎ)

「……心当たりはないが、ギヱンに匂いをたどらせることはできるぞ」



挿絵(By みてみん) 魏延(ぎゑん)

「――――――」



挿絵(By みてみん) 伊籍(いせき)

「おお、魏延将軍にはそんなこともできるのですか。

……で、でも、将軍に後を追わせたら、その……。

見つけた先で劉禅様を襲ったり、食べたりしませんか?」



挿絵(By みてみん) 楊儀(ようぎ)

「その可能性は否定できんな。なに、些細な事だ」



挿絵(By みてみん) 劉巴(りゅうは)

「どこが些細だ! とにかく探せ!

兵をいくら使っても構わん! 一刻も早く劉禅を見つけ出すのだ!」



~~~隆中(りゅうちゅう) 諸葛亮の草蘆~~~



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「ほう、劉備がくたばりそうなのか。

わかった。これを持って行け」



挿絵(By みてみん) 黄月英(こうげつえい)

「…………なんですか、この包みは?」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「香典だ。貴様は弔問に行きたいのだろう?

給料代わりにくれてやる」



挿絵(By みてみん) 黄月英(こうげつえい)

「いらないです。

……御主人様は劉備の死に目に会えなくてもいいですか」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「腕長猿の死に様なら密林に行けばいくらでも見られるぞ」



挿絵(By みてみん) 黄月英(こうげつえい)

「………………」



挿絵(By みてみん) 諸葛均(しょかつきん)

「兄上、お久しぶり――。

おやおや、夫婦喧嘩中でしたか」



挿絵(By みてみん) 黄月英(こうげつえい)

「誰が夫婦だです」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「愚弟か。何の用だ」



挿絵(By みてみん) 諸葛均(しょかつきん)

「諸葛瑾の兄上が江陵まで遠征してきたので、会ってきたんですよ。

これ、お土産です。長江の魚を干した物」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「ちょうどいい。黄月英、香典のおまけに付けてやれ」



挿絵(By みてみん) 諸葛均(しょかつきん)

「香典? 誰か死んだんですか?」



挿絵(By みてみん) 黄月英(こうげつえい)

「これから死ぬです。劉備です」



挿絵(By みてみん) 諸葛均(しょかつきん)

「ははあ、劉備ですか。

それで彼が……。なるほどなるほど」



挿絵(By みてみん) 黄月英(こうげつえい)

「何の話です。一人で納得してるじゃないです」



挿絵(By みてみん) 諸葛均(しょかつきん)

「いえね。ここに来る時に見かけたんですよ。

でもね、まさかこんな所に彼がいるはずもないって思ったんですけど――。

ああ、来ましたよ。ほら」



挿絵(By みてみん) ??

「諸葛亮!!」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「!?」



挿絵(By みてみん) ??

「や、やっと見つけたよ……。

どんだけヘンピな所に住んでるんだよお前……。仙人かお前は。

あたりの人に道を尋ねても、お前の名前を出すだけで逃げ出されたり、

失神されたりするしさあ。魔王かお前は。

もう、本当に疲れた~~」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「劉禅…………」



挿絵(By みてみん) 劉禅(りゅうぜん)

「おっ。驚いてる! 驚いてるだろ諸葛亮!

お前も驚くことがあるんだな! ここまで来てやった甲斐があったぞ!」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「貴様……一人で来たのか」



挿絵(By みてみん) 劉禅(りゅうぜん)

「当たり前じゃん。誰かに言ったら絶対止められるよ?

尹黙じいやとか見張りの兵の隙を見てさ、はるばる来てやったわけ。

――で、わしが来たわけ、わかるよね?

お前、頭良いもんね。わかるだろこれくらい?」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「…………断る」



挿絵(By みてみん) 劉禅(りゅうぜん)

「おっ。迷ったな! 今度は迷っただろ一瞬! わしの目はごまかせないぞ!

迷ったってことは、ちょっとは受ける意志があるってことだよな」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「………………」



挿絵(By みてみん) 劉禅(りゅうぜん)

「よし、単刀直入に言うぞ。

諸葛亮、お前戻れ。わしに仕えろこの野郎」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「全知全能の余が貴様ごときに仕えるだと……?」



挿絵(By みてみん) 劉禅(りゅうぜん)

「おっ。出たな全知全能!

わしが現れることを予測できなかったくせに大きく出たな!」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「………………」



挿絵(By みてみん) 劉禅(りゅうぜん)

「知っての通り、パパが死んでわしはもうすぐ皇帝になる。

そしたらお前に全権を任せるつもりだ。

パパほどじゃないけど、わしも結構無能だからね。

すっごい甘やかされたし。槍の持ち方なんて知らないし。

兵法? 何それおいしい?」



挿絵(By みてみん) 黄月英(こうげつえい)

「いばることじゃないです」



挿絵(By みてみん) 劉禅(りゅうぜん)

「だからさ、諸葛亮。お前に全部丸投げしちゃうよ。

蜀を。丸ごと。お前の。好きにできるんだぜ? 面白くね? 興味なくね?」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「興味がない」



挿絵(By みてみん) 劉禅(りゅうぜん)

「ま、そりゃそうか。パパが元気な頃から丸投げされてたもんな。

――じゃ、こういうのはどうだ?

パパが死んで、わしがあとを継いだらさ、すぐお前に帝位を譲っちゃうよ」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「………………」



挿絵(By みてみん) 劉禅(りゅうぜん)

「皇帝諸葛亮! 諸葛亮帝国! 余の余による余のための国家!

国名もなんか虫とか入ってる蜀なんてだせーのから変えられるよ。

なんにする? わしなら『聖』とか『神』とか入れたいなあ」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「………………」



挿絵(By みてみん) 劉禅(りゅうぜん)

「ってことで月英ちゃん。しばらく厄介になるね」



挿絵(By みてみん) 黄月英(こうげつえい)

「…………え?」



挿絵(By みてみん) 劉禅(りゅうぜん)

「おっ。今度は月英ちゃんが驚いてる! かわいい! キタコレ!」



挿絵(By みてみん) 黄月英(こうげつえい)

「………………」



挿絵(By みてみん) 劉禅(りゅうぜん)

「だってほら、諸葛亮の顔見てごらんよ。

あの極悪な顔。そう簡単には了解してくんないよ。

だけどわしも、諸葛亮が首を縦に振るまでは動かないから。

絶っっっ対に連れて帰るから」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「………………」



挿絵(By みてみん) 劉禅(りゅうぜん)

「もうね、嫌ならわしを殺すしかないよ? 殺す? 殺してみる?

月英ちゃんなら2秒、諸葛亮でも30秒で殺せるんじゃない?

でも殺したら大変だよ。討伐隊とか来るよ。諸葛亮討伐隊。

いちおうここにいるよって手がかりを成都に残してきたから、

殺したらそのうちバレるからね」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「………………」



挿絵(By みてみん) 劉禅(りゅうぜん)

「そういうことでよろしくね!

夕食はカレーがいいなあ。え? カレー知らない?

印度とかいう西の方の国で……。じゃあ作り方教えるよ。まずカレー粉をね。

ってカレー粉がないじゃんか。どうしようか。わはは」



~~~涿郡(たくぐん) 桃園~~~



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「ほれほれ張さん。盃を掲げて、ほれ。

何か宣誓せえ。なんかかっちょいいことを言うんじゃ、ほれ」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「はあ? アンタなんかと何を誓うのよ?」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「だから、わしらは今日から義兄弟だって言ったろ?

義兄弟らしい誓いの言葉じゃよ」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「だから、アタイは義兄弟だなんて認めないって言ってるでしょ!」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「張さんは意固地じゃのう……。

じゃあ関さんはどうじゃ。何か思いつかんか」



挿絵(By みてみん)関羽(かんう)

「………………」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「思いつかんか。ほんならわしが考えるしかないか。

ええと。そうじゃなあ……。

――わしら三人! 死ぬ時は一緒だ!」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「…………何それ。なんの運命共同体よ。

それを言うなら、もっとマシな言い方があるでしょ。たとえばほら、

――我ら生まれし日はたがえども、願わくば同年同日に死せん、とかなんとか」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「それじゃ!! それで行こう張さん! 関さん!

――我ら生まれた日は違うが死ぬ時は一緒だ!」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「あんまり変わってないじゃないの!」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「わはは。細かいことはどうでもいいんじゃ。

こうして義兄弟が三人で何かを誓った。それが大切なんじゃよ。

そういうことで乾杯!!」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「……ま、くれるなら酒は飲むけどさ。

でも勘違いしないでよね。義兄弟なんてアタイはまっぴらごめんなんだから!」



挿絵(By みてみん)関羽(かんう)

「………………」



~~~蜀 成都~~~



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「………………ここは」



挿絵(By みてみん) 馬謖(ばしょく)

「お目覚めですか、陛下」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「馬謖さん……。それに龍さん、伊籍さん、来敏さんも。

おお、そうじゃ伊籍さん。息子を、劉禅さんを連れてきてくれたか?」



挿絵(By みてみん) 伊籍(いせき)

「は、はい。それが……」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「んん? なんじゃ、浮かない顔をしおって。

ま、まさか……劉禅さんに何かあったんか!?」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「何もない」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「ほ、ほうか。ほんなら良かった……。

って。え。り、亮さん…………!?」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「どうした。余の顔に何かついているか。

貴様には死神が取り憑いているようだが」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「わ、わしは夢を見ておるのか……?

い、いや。この胸糞悪い物言いは間違いなく本物じゃ……」



挿絵(By みてみん) 劉禅(りゅうぜん)

「えっへん。わしが連れ戻してやったんだぜ、パパ!」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「劉禅さんが亮さんを……?」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「馬鹿な。余は貴様らごときの言葉で動きなどせぬ。

この国を好きにして良いと言われ興味を覚えただけだ」



挿絵(By みてみん) 黄月英(こうげつえい)

「また会えてうれしいって言ってるです」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「黙れ黄月英」



挿絵(By みてみん) 来敏(らいびん)

「こ、この国を好きにじゃと……?」



挿絵(By みてみん) 劉禅(りゅうぜん)

「うん。パパが死んだらわしが次の皇帝じゃん?

そしたら国を諸葛亮の好きにしていいよって言ったんだ」



挿絵(By みてみん) 馬謖(ばしょく)

「な、な、なんという…………」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「わはは。そりゃいい。でかしたぞ劉禅さん!

ほうか。そう言えば亮さんを連れ戻せたのか。そんな簡単なことで良かったのか……。

なあ亮さん。劉禅さんの言ったとおりじゃ。

なんなら、わしが死んだら次の皇帝に亮さんが――」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「断る。帝位になど興味が無い」



挿絵(By みてみん) 黄月英(こうげつえい)

「面倒事は劉禅に押し付けるから自分は好きにやらせろって言ってるです」



挿絵(By みてみん) 伊籍(いせき)

「み、身勝手にも程がある……」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「だって、わしが帝位につけたのも、こうして国を持てたのも、

みーんな亮さんのおかげじゃないか。

亮さんがおらんかったら、わしは曹さんにやられてとっくにおっ死んどるぞ。

帝位や国の一つや二つくれてやっても罰は当たらんじゃろ」



挿絵(By みてみん) 劉禅(りゅうぜん)

「そうそう。どうせわしの代になったら、

ややこしいことは全部、諸葛亮に丸投げするしね」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「…………親子そろってまるで寄生虫だな」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「ほうか。ほうかほうか。

亮さんが戻ってくれたなら、わしはなーんも心配することありゃせん。

曹丕さんってのも相当のドSらしいが、

亮さんのほうがSっぷりは10倍は上じゃろ。怖いものなしじゃ。

じゃから、後は任せたぞ……」



挿絵(By みてみん) 趙雲(ちょううん)

「せ、先輩」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「わはは。亮さんの顔を見たら安心してもうた。ちょっと眠らせとくれ。

何かあったら亮さんに聞くんじゃ。

劉禅さんも、亮さんを父親だと思って、よく言うことを聞くんじゃぞ」



挿絵(By みてみん) 劉禅(りゅうぜん)

「うん。っていうか諸葛亮に全権を任せちゃうよ」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「それがいい。……それでいい。

亮さん、あんたに会えて良かった。最期の時にも来てくれて、感謝しとるぞ。

良い冥土の土産になったわい……」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「余の顔が引導代わりだ。安心して死ぬがいい」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「うんうん。

……張さんや関さんを待たせすぎた。

きっとあの桃園で、待ちくたびれておるじゃろう。わしはもう行くぞ……」



挿絵(By みてみん) 趙雲(ちょううん)

「劉備先輩!!」



挿絵(By みてみん) 伊籍(いせき)

「へ、陛下!!」



挿絵(By みてみん) 劉禅(りゅうぜん)

「じゃあねパパ。おやすみ」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「…………死ね」



~~~~~~~~~



かくして一代の巨人・劉備は没した。

諸葛亮は蜀に戻り、南中に蠢く有象無象の一掃に乗り出す。

曹操、劉備が果て、三国時代は新たな幕を開こうとしていた。


次回 〇八八   南中への道

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