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アイコン三国志  作者: 小金沢
第七章 軍神・関羽
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〇七九   奸雄の死

~~~合肥(がっぴ)~~~



挿絵(By みてみん) 夏侯惇(かこうとん)

「……………………本当か?」



挿絵(By みてみん) 温恢(おんかい)

「は、はい。間違いありません。確証を得ています。

戦中のため華美な葬儀は慎み、

各戦線の将兵は持ち場を離れないようにとの厳命です」



挿絵(By みてみん) 張遼(ちょうりょう)

「曹操のダンナらしい遺言だぜ……」



挿絵(By みてみん) 夏侯惇(かこうとん)

「そうか……。

殺しても死なないような奴だと思っていたが、

あいつも人間だったんだな……」



挿絵(By みてみん) 張遼(ちょうりょう)

「夏侯惇のダンナ、何をぼやぼやしてんだよ。

早く会いに行ってやれよ」



挿絵(By みてみん) 夏侯惇(かこうとん)

「……持ち場を離れるなという厳命だ」



挿絵(By みてみん) 張遼(ちょうりょう)

「こんな時に限って堅物になってんじゃねーよ。

ダンナが会いに行きてーか行きたくねーかって話だろーが」



挿絵(By みてみん) 夏侯惇(かこうとん)

「…………すまぬ。行ってくる」



挿絵(By みてみん) 張遼(ちょうりょう)

「おう。留守はオレと温恢に任しとけよ」



挿絵(By みてみん) 温恢(おんかい)

「孫権は奪ったばかりの荊州の統治に手一杯です。

合肥までは手が回らないでしょう」



挿絵(By みてみん) 夏侯惇(かこうとん)

「ああ。すぐに戻る」



~~~漢中(かんちゅう)~~~



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「関さんと曹さんが、死ん、だ……?

わっはは。そ、そんな馬鹿な話があるもんか。

ど、どっちかが、それとも両方が間違いじゃろう!」



挿絵(By みてみん) 費詩(ひし)

「多数の間者を放ち確認しました。……間違いありません」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「そ、そんな……。わしは信じぬぞ!

わしは誰よりも関さんのバケモノじみた強さを知っとるんじゃ!

曹さんだってそうじゃ! あの二人が簡単に死ぬもんか!」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「劉備、しっかりなさい。

仮にも大将のアンタが動揺したら、全員が動揺すんのよ」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「ち、張さんは信じるんか?

関さんが、あの関さんが死んだなんて、そんなことを――」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「アタイだって関羽のバケモノさは知ってるわよ!

でも荊州は孫権の手に落ちたわ。それは確実なことよ。

だったら関羽が死んだっておかしくないわ」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「………………」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「いいこと、劉備。大将ってのはね、常に冷静に構えんのよ。

どんなに最悪の事態が起こったって、

平気な顔して笑ってりゃいいのよ。

関羽だってここにいたらアタイと同じことを言うわ」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「……いや、関さんは何もしゃべらんじゃろ」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「そ、そうね。あの無口バカがしゃべるわけないわ。

やっぱりアタイも動揺してるみたい……」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「……わかったよ張さん。

どうせわしにできることは何もないんじゃ。

じゃったら笑っとく。関さんもその方が喜ぶじゃろ……」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「傷の舐め合いは済んだか? それなら余の話を聞け」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「諸葛亮! まったくアンタは……。いったい何よ?」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「曹操が死んだ。この機を逃す手はない。魏を攻めるぞ」



挿絵(By みてみん) 趙雲(ちょううん)

「……たしかに曹操を失った魏は激しく動揺してるに違いないッス。

でもこんな時に――」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「いったいどんな時だ?

荊州を失ったからには別の土地を奪い取らねばならん。

その絶好の機会ではないか」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「……いや、それは駄目じゃ亮さん。わしは魏を攻めとうない」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「なんだと?」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「わしは権さんと、いや孫権と戦う。

やるなら関さんの仇討ちじゃ!」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「孫権軍は荊州に戦力のほとんどを集中させている。

それを打ち破るのは容易ではない。その点、魏ならば――」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「漢中王の命令じゃ! わしは孫権を討つ!」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「劉備…………」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「ほう。初めて王らしい言葉を発したな。

黄月英、史書に記しておいてやれ」



挿絵(By みてみん) 黄月英(こうげつえい)

「はいです。219年某日。

劉備、偉そうに怒鳴る。メモメモです」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「……や、やっぱり怒っとるかのう、亮さん?」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「貴様の好きにしろ。この国は貴様の国だ。

事を決めるのは余ではない」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「すまんな亮さん……。これだけはわがままを言わせとくれ。

桃園の誓いを裏切るわけにはいかないんじゃ」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「好きにしろと言ったはずだ」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「劉備、アタイはもう何も言わないわ。

やるからには勝つ。関羽の弔い合戦よ!!」



~~~南郡(なんぐん)~~~



挿絵(By みてみん) 孫権(そんけん)

「さすが呂蒙だぜ。関羽を殺して荊州を奪い取っただけじゃねェ。

曹操まで道連れにしやがった」



挿絵(By みてみん) 韓当(かんとう)

「有言実行の男だった。

いや、与えられた以上の仕事を必ずしてのける野郎だった」



挿絵(By みてみん) 孫権(そんけん)

「まあ曹操が死んだのは偶然だけどよ。

あのジジイもいい年だったからな。

だがオレは呂蒙がやってくれたんだと思うぜ。

厄介なヤローどもをみーんな片付けてくれた」



挿絵(By みてみん) 陸遜(りくそん)

「……でも、呂蒙さんにはもっと生きていて欲しかったな。

もっといろんなことを教えてもらいたかった」



挿絵(By みてみん) 孫権(そんけん)

「頼りねェこと言ってんじゃねェよ陸遜。呂蒙の後任はおめェだ。

呂蒙ほどじゃなくていい。おめェにできることをやれ」



挿絵(By みてみん) 陸遜(りくそん)

「がんばります!」



挿絵(By みてみん) 孫権(そんけん)

「……ったく、どいつもこいつも一仕事終えたら

さっさとくたばりやがってよォ。

呂蒙にも同じこと言った気がすんが、おめェは長生きしろよな」



挿絵(By みてみん) 陸遜(りくそん)

「当たり前じゃないですか。ボク、孫権艦長より若いんですよ。

艦長の方こそ気を付けてくださいよね。お酒好きなんですし」



挿絵(By みてみん) 孫権(そんけん)

「ははっ。違ェねェや」



挿絵(By みてみん) 虞翻(ぐほん)

「……ところで艦長。ちょっとお聞きしたいんでゲスが」



挿絵(By みてみん) 孫権(そんけん)

「あぁん?」



挿絵(By みてみん) 虞翻(ぐほん)

「どうして降将どもが雁首そろえてやがるんでゲスかね?

寝返ったヤツから関羽の捕虜だったヤツまで、

目障りでしょうがないんでゲスが」



挿絵(By みてみん) 于禁(うきん)

「………………」



挿絵(By みてみん) 浩周(こうしゅう)

「へ、へへ……」



挿絵(By みてみん) 東里袞(とうりこん)

「チッ……」



挿絵(By みてみん) 潘濬(はんしゅん)

「フン」



挿絵(By みてみん) 糜芳(びほう)

「き、気まずいアルね……」



挿絵(By みてみん) 傅士仁(ふしじん)

「あ、ああ……」



挿絵(By みてみん) 孫権(そんけん)

「おう、忘れるとこだったぜ。

集まってもらったのは他でもねェ。てめェらどうしてェんだ?」



挿絵(By みてみん) 糜芳(びほう)

「ど、どうしたい……と言うアルと?」



挿絵(By みてみん) 孫権(そんけん)

「だから、オレらに降りてェのか、

それとも国に帰りてェのか。望みを言えよ」



挿絵(By みてみん) 浩周(こうしゅう)

「か、帰してくれるのですか!?」



挿絵(By みてみん) 孫権(そんけん)

「オレんとこは曹操みたく景気が良くねェんだよ。

捕虜を飼っとく余裕なんてねェんだ。

おとなしく降伏してオレらを手伝うか、

国に帰ってまた戦うか、好きな方を選べよ」



挿絵(By みてみん) 傅士仁(ふしじん)

「そ、それなら俺は……ど、どうするかな。

きっと俺や糜芳は、劉備様に会ったら

関羽の仇だって殺されちまうよな……」



挿絵(By みてみん) 于禁(うきん)

「おれっちは帰るぜ。

曹操のダンナが死んだってのに、こんなところにゃいられねえ」



挿絵(By みてみん) 東里袞(とうりこん)

「なら、俺も于禁将軍に従おう」



挿絵(By みてみん) 浩周(こうしゅう)

「…………じ、じゃあ私も帰ります。帰してください!

(于禁と東里袞が口添えしてくれれば罪に問われないかも!)」



挿絵(By みてみん) 糜芳(びほう)

「わ、ワタシは孫権様に降るアル!

帰っても絶対殺されるアル……」



挿絵(By みてみん) 傅士仁(ふしじん)

「そ、それなら俺もそうしよう!」



挿絵(By みてみん) 糜芳(びほう)

「あ、あとできれば徐州(じょしゅう)方面に回して欲しいアル。

出身地だから土地勘もあるし、きっとお役に立てるアル!」



挿絵(By みてみん) 傅士仁(ふしじん)

「ず、ずるいぞ糜芳! お前ばっかり!」



挿絵(By みてみん) 虞翻(ぐほん)

「ええい! 見苦しい連中でゲスね!

こんな奴らみんな殺してしまえばいいでゲス!」



挿絵(By みてみん) 孫権(そんけん)

「贅沢なこと言うな。オレらは人手も足りてねェんだよ。

使える人材なら喜んで迎え入れるぜ。

――んん? そういやあてめェはまだなんも言ってねェな。

潘濬とかいったか。どうすんだよ」



挿絵(By みてみん) 潘濬(はんしゅん)

「…………オレは、アンタに降るよ。

アンタも面白そうだ。ゲームをやり直したくなった」



挿絵(By みてみん) 孫権(そんけん)

「げえむ? よくわかんねェけど、

関羽の下でいろいろやってたそうだな。

使えそうじゃねェか。じゃあ陸遜を手伝ってやってくんな」



挿絵(By みてみん) 陸遜(りくそん)

「荊州のことでわからないことがあったら教えてくださいね!」



挿絵(By みてみん) 潘濬(はんしゅん)

「…………フン」



挿絵(By みてみん) 孫権(そんけん)

「あと重傷で寝込んでる廖化とかって拳法家もいるんだろ?

どれ、そいつのツラでも見に行くかな。

拳法家たァ珍しいぜ。仲間になってくんねェかな……」



~~~許昌(きょしょう)の都~~~



挿絵(By みてみん) 曹彰(そうしょう)

「オヤジの印綬はどこだ!?」



挿絵(By みてみん) 賈逵(かき)

「……やぶから棒になんですか殿下。

魏王が亡くなられ都が、いや国中が大騒ぎをしている時に、

印綬をどうなさるおつもりですか」



挿絵(By みてみん) 曹彰(そうしょう)

「誤解すんじゃねえよ。

僕様が曹丕のアニキに取って代わろうと考えてるとでも思ったか?

あのおっかねえアニキに逆らうわきゃねえだろ!」



挿絵(By みてみん) 賈逵(かき)

(ほう……。曹彰殿下でも曹丕様は怖いのか)



挿絵(By みてみん) 曹彰(そうしょう)

「国中が大騒ぎしてんだから、

この隙にどっかの誰かが馬鹿なことを企むかも知んねえだろ?

だから僕様がしっかりと印綬を守ってやるって言ってんだよ」



挿絵(By みてみん) 賈逵(かき)

「……なるほど。殊勝なお心がけです。

しかしご心配いただくまでもなく、都の守りは万全ですし、

曹丕様から今は誰も入れるなとの命令を受けています」



挿絵(By みてみん) 曹彰(そうしょう)

「なんだと? 僕様にオヤジの顔も見せねえってのか?」



挿絵(By みてみん) 賈逵(かき)

「いいえ。もちろん殿下は話が別です。

曹丕様はあちらにいらっしゃいますので、

ぜひお会いになってください」



挿絵(By みてみん) 曹彰(そうしょう)

「おう!」



挿絵(By みてみん) 田豫(でんよ)

「殿下! やはりここにいらしたか。

勝手に先走らないでいただきたい」



挿絵(By みてみん) 曹彰(そうしょう)

「やっと来たか田豫。ちょうどいい、

連れてきた兵はアニキに預けてくからよ、

お前は都の守備を手伝ってやれ」



挿絵(By みてみん) 田豫(でんよ)

「まったく殿下は……」



~~~上庸(じょうよう) 葭萌関(かぼうかん)~~~



挿絵(By みてみん) 徐晃(じょこう)

「関羽は討たれた!

もはや貴殿らに勝機はない! おとなしく降伏されよ!」



挿絵(By みてみん) 夏侯尚(かこうしょう)

「……上庸を奪回したらきっとたくさん褒美をもらえるよ。

そうしたらお前にも何か買ってあげるからね。


まあ楽しみだわ! あなた愛してる!(夏侯尚裏声)」



挿絵(By みてみん) 鄧賢(とうけん)

「どどどどうすんのよ!?

劉封様は関羽を助けに行ったきり帰ってこないし、

徐晃の大軍に囲まれちゃったわよ!」



挿絵(By みてみん) 孟達(もうたつ)

「魏軍に夏侯尚という男がいましてね。

よく仕事のできる男なんだが、ひとつ変わった趣味を持っている。

大~きな人形をいつも持ち歩いてるんだ。

女性の等身大の人形で、本物の服をまとってるよくできた人形なんだ。

でもそれがよく見るとおかしいんだ。なんだろな~。

何がおかしいんだろな~ってよくよく考えて――」



挿絵(By みてみん) 鄧賢(とうけん)

「いまさら夏侯尚の紹介なんてどうでもいいわよ!

あれは妻のミイラなんでしょ! みんな知ってるわよ!」



挿絵(By みてみん) 申耽(しんたん)

「成都に援軍を要請しましたが、いつ到着するものか……。

それに……」



挿絵(By みてみん) 鄧賢(とうけん)

「それに……何よ?」



挿絵(By みてみん) 申耽(しんたん)

「はたして関羽将軍を見殺しにした我々に、

援軍は来るのでしょうか?」



挿絵(By みてみん) 鄧賢(とうけん)

「う…………。そ、そうね。

劉備様はあちしらに激怒してるでしょうし……」



挿絵(By みてみん) 霍峻(かくしゅん)

「……援軍が来ないから、だからどうしたと言うのだ」



挿絵(By みてみん) 鄧賢(とうけん)

「か、霍峻。ダメよ寝てないと」



挿絵(By みてみん) 霍峻(かくしゅん)

「援軍など関係ない。

我々の責務はこの葭萌関を守るこ――ゴホッ! ゲホッ!」



挿絵(By みてみん) 孟達(もうたつ)

「病み上がりなんですから無理しちゃいけませんよ。

あたしの古い友人にもね。長いこと患ってた人がいるんですが、

ある日、急に手紙をくれたんだ。

手紙なんてくれるのは初めてでしたからね。

あれ~どうしたんだろうな~と思いながら読んでみると――」



挿絵(By みてみん) 申耽(しんたん)

「お、お待ちください! 徐晃軍の様子が妙です」



挿絵(By みてみん) 劉封(りゅうほう)

「どけ! この葭萌関は渡さん!」



挿絵(By みてみん) 呂建(りょけん)

「劉封のヤローが戻ってきたぜ!」



挿絵(By みてみん) 徐商(じょしょう)

「くそっ! 背後を襲われた!」



挿絵(By みてみん) 鄧賢(とうけん)

「り、劉封様よ! 戻ってきてくれたわ! 早く助けないと!」



挿絵(By みてみん) 劉封(りゅうほう)

「孟達! 城門を開けてくれ!」



挿絵(By みてみん) 孟達(もうたつ)

「……いや、開けられません」



挿絵(By みてみん) 鄧賢(とうけん)

「へ?」



挿絵(By みてみん) 孟達(もうたつ)

「いまさら劉封さんが戻ったからと言ってね。

状況はな~んにも変わらないんだ。

劉封さんが来たら勝てますか? それは無理だ。無理なんだ~。

それに万が一勝てたとしても、あたしらは処罰されます。

なんせ関羽将軍を見殺しにしたんですからねえ。

関羽将軍は夜な夜な劉備様の枕元に立って、

憎い憎い、孟達や劉封が憎いって言ってるんだ。

どう転んでもあたしらは助からないでしょう。

だったらあたしらのやることは一つです。

この上庸を魏に明け渡す。そういうお話です……」



挿絵(By みてみん) 霍峻(かくしゅん)

「孟達! 貴様――ゲホッ! ゴボッ!!

ぐっ……孟達……なんということを……」



挿絵(By みてみん) 鄧賢(とうけん)

「孟達……アンタ……本気なのね?」



挿絵(By みてみん) 申耽(しんたん)

「………………」



挿絵(By みてみん) 劉封(りゅうほう)

「孟達ーーッ! 何をしている!? 門を開けろーーッ!!」



~~~許昌の都~~~



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「――――ここは」



挿絵(By みてみん) 華佗(かだ)

「お目覚めかね。薬が効いたのじゃろう。よく眠っておられた」



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「……面白い夢を見た。

僕がもう死んでしまって、その後の様子を空から見ていたんだ」



挿絵(By みてみん) 華佗(かだ)

「ほほう。麻沸散(まふつさん)にそのような副作用はなかったはずじゃが」



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「このところ僕が死んだ後のことをよく考えている。

きっとそのせいだろう」



挿絵(By みてみん) 華佗(かだ)

「おやおや。位、人臣を極めた魏王様が弱気なことじゃ」



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「別に弱気になったわけではないさ。

僕もいい歳だからね。そろそろ死ぬだろう。

死んだらいろいろと面倒事が起きる。

その面倒をできるだけ減らしたいから、思い悩んでいるだけだよ。

――いや、後に残る人々に気を遣っているわけでもない。

ただ僕は全力を尽くしたいだけさ。

死ぬまでにやれることがたくさんあるのに、

それをやらずにいるのは気持ち悪いだろう?」



挿絵(By みてみん) 華佗(かだ)

「ほうほう。それで魏王の死後に職にあぶれる、

宮女の仕事の世話まで、いちいち書き遺したのじゃな」



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「……なぜ君が僕の遺書の内容を知っているんだい」



挿絵(By みてみん) 華佗(かだ)

「はてさて」



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「そうか。やっと思い出したよ。全てが不合理な話だ。

僕はもう死んでいるんだ。

だって僕が君と話せるわけがないじゃないか。

君ももうとっくに死んでいるんだからね。なんせ、僕が殺したんだ」



挿絵(By みてみん) 華佗(かだ)

「………………」



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「君は医師だとばかり思っていたけど、妖術師だったのかな?

まあいい、これ以上君と話すことはないよ。

さっさとあの世かどこかへ案内してくれたまえ」



~~~許昌の都~~~



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「………………ここは」



挿絵(By みてみん) 卞氏(べんし)

「ぁ、曹操っちぉきた?

ぃくらロ乎んでもぉきなぃから死んぢゃったと思ったょ」



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「…………僕も死んだと思っていたよ」



挿絵(By みてみん) 卞氏(べんし)

「曹操っちが冗言炎ぃぅの珍しぃね。

デモぜんぜんぉもしろくなぃょ?」



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「冗談を言ったつもりはないけどね。

まあいい、せっかく戻れたんだ。久しぶりに歌ってくれないか」



挿絵(By みてみん) 卞氏(べんし)

「ぇぇ~?

またアタシの哥欠言司がヘンだって笑ぅっもりでしょ??」



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「笑わないさ」



挿絵(By みてみん) 卞氏(べんし)

「曹操っち、ぃっぱぃ言寺ぉ書ぃてるんダカラ、

アタシの哥欠にも書ぃてくれればぃぃのに」



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「僕が作ったんじゃない、君の歌が聞きたいんだよ」



挿絵(By みてみん) 卞氏(べんし)

「もぅ。。。ぢゃぁ哥欠ぅネ。

♪ぁぃたくて震ぇて ぁぇなくて震ぇなくて

ぁなたのそばにぃたくて デモぃなくて」



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「………………」



挿絵(By みてみん) 卞氏(べんし)

「♪ゃっとぁぇたケド 震ぇてて――ホラ!

また曹操っち笑ってる!」



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「………………」



挿絵(By みてみん) 卞氏(べんし)

「ダカラ曹操っちが哥欠言司ぉ書ぃてって――。

ぁれ? 曹操っち?」



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「………………」



挿絵(By みてみん) 卞氏(べんし)

「曹操っち。。。。。。??」



~~~~~~~~~



かくして覇王はその生涯を閉じた。

関羽が死に、曹操が死に、それでも航路は進む。

そして覇王の子は己の覇道を歩み、一つの世を終わらせようとしていた。


次回 〇八〇   天に二日あり

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