↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アイコン三国志  作者: 小金沢
第四章 官渡の戦い
PR
39/126

〇三八   孫権の船出

~~~荊州(けいしゅう)~~~



挿絵(By みてみん) 劉表(りゅうひょう)

「はあ、孫権さんがお父上と兄上の仇だとして、

黄祖(こうそ)さんの首を要求していると?」



挿絵(By みてみん) 蒯越(かいえつ)

「はい。断れば一戦交えることも辞さないと言っております」



挿絵(By みてみん) 劉表(りゅうひょう)

「兄上の孫策さんが亡くなったばかりだというのに、

喪にも服さずに合戦とは。

孫権さんという方はずいぶんと粗暴な性格のようですね」



挿絵(By みてみん) 蔡瑁(さいぼう)

「それにしても妙だな。

あの黄祖が孫堅、孫策を殺したとなぜばれたのだ。

あいつが尻尾をつかまれるとは考えられん」



挿絵(By みてみん) 劉表(りゅうひょう)

「黄祖さんも長年、裏の仕事をしてきてお疲れだったのでしょう。

黄祖さんはこのあたりで江夏(こうか)の太守に栄転させて、

骨休めしていただきましょう」



挿絵(By みてみん) 蔡瑁(さいぼう)

「劉表……まさか孫権に黄祖の犯行を教えたのはお前か?

しかも黄祖を前線の江夏に出して、孫権に首を取らせ、

事を穏便に済ませるつもりか」



挿絵(By みてみん) 劉表(りゅうひょう)

「はて、蔡瑁さんが何をおっしゃっているのか

私にはとんとわかりませんね」



挿絵(By みてみん) 蒯越(かいえつ)

「黄祖は知りすぎたのだ。

あとは言わぬが花というものだ、蔡瑁よ」



挿絵(By みてみん) 蔡瑁(さいぼう)

「劉表、恐ろしい男だよお前は……」



~~~呉(ご)~~~



挿絵(By みてみん) 張昭(ちょうしょう)

「兄君の喪にも服さず合戦とは……

まったく我が殿はなにを考えておいでなのでしょうかな!」



挿絵(By みてみん) 孫権(そんけん)

「兄貴とオヤジの仇を取るのが、オレ流の服喪ってヤツだ。

部屋に閉じこもってウダウダしてるより、

兄貴らも喜んでくれるだろうよ」



挿絵(By みてみん) 張昭(ちょうしょう)

「孫策殿も大概だったが、弟君はそれ以上じゃ!

第一、江夏を攻めている間に

曹操に背後を衝かれたらどうするのだ!」



挿絵(By みてみん) 周瑜(しゅうゆ)

「そのあたりは都に上がっている張紘(ちょうこう)殿や

華歆(かきん)殿がうまくやってくれるだろう」



挿絵(By みてみん) 呂範(りょはん)

「だが軍資金はどうするのだ?

大々的な遠征は久しぶりだから、多少の蓄えはあると思うが、

反乱の鎮圧でだいぶ出費がかさんでいるのだろう?」



挿絵(By みてみん) 周瑜(しゅうゆ)

「フッ。それも心配ない。出資者がついてくれた」



挿絵(By みてみん) 魯粛(ろしゅく)

「うちに二つある蔵の一つをあげるんでえ、それで十分っしょ。

ガチで」



挿絵(By みてみん) 呂範(りょはん)

「そ、そのチャラい若者は誰だ?」



挿絵(By みてみん) 周瑜(しゅうゆ)

「江東にその人ありと言われた魯粛だ。

このたび私の招きに応じて力を貸してくれることになった。

大富豪なだけではなく、頭も切れる男だ。頼りにしてくれていい」



挿絵(By みてみん) 魯粛(ろしゅく)

「よろしくウイッシュ」



挿絵(By みてみん) 朱治(しゅち)

「な、名前は聞いたことがあるが……」



挿絵(By みてみん) 張昭(ちょうしょう)

(また頭痛の種が増えそうじゃ……)



挿絵(By みてみん) 孫権(そんけん)

「そんなことよりよォ、さっさと遠征軍の陣容を決めちまおうぜ。

早くしねェと程普(ていふ)や韓当(かんとう)が抜け駆けしちまうぞ」



挿絵(By みてみん) 凌操(りょうそう)

「先鋒は俺に任せてくれ。

先代、先々代の仇討ちと聞いて黙ってられないのは俺も同じだ」



挿絵(By みてみん) 孫権(そんけん)

「おめェはこの戦で引退するんだったな。

じゃあ最後の一仕事をお願いするぜ」



挿絵(By みてみん) 凌操(りょうそう)

「息子も立派に育ってくれたから、跡継ぎの心配もいらん。

無事に仇を討ったら、故郷でのんびり余生を送るつもりだ……」



~~~江夏(こうか)~~~



挿絵(By みてみん) 呂公(りょこう)

「うぎゃああああ!!」



挿絵(By みてみん) 黄蓋(こうがい)

「呂公は討ち取ったぞ!」



挿絵(By みてみん) 凌操(りょうそう)

「やるな黄蓋! 俺も負けてはいられん。

孫堅艦長の仇は出てこい!」



挿絵(By みてみん) 甘寧(かんねい)

「仇じゃなくて悪いけどよ、ジジイはすっこんでな!」



挿絵(By みてみん) 凌操(りょうそう)

「ぐわああっ! ふ、不覚……」



挿絵(By みてみん) 孫権(そんけん)

「凌操!」



挿絵(By みてみん) 凌操(りょうそう)

「さ、最後の最後に役に立てずすまぬ……。

殿に預けた、妻の形見の首飾りを、どうか息子に……」



挿絵(By みてみん) 孫権(そんけん)

「バカ野郎が! 仇を増やしやがって……」



挿絵(By みてみん) 蒋欽(しょうきん)

「ここは危険でごわす。早く後方に下がるでごわす」



挿絵(By みてみん) 甘寧(かんねい)

「ザコどもが泡喰って逃げてんぜ! 逃がすかよ!」



挿絵(By みてみん) 蘇飛(そひ)

「待て、敵は大軍だ。深追いはするな。いったん陣に引き上げるぞ」



挿絵(By みてみん) 甘寧(かんねい)

「あぁん? 退却命令だと? クソが!」



~~~江夏 黄祖軍~~~



挿絵(By みてみん) 甘寧(かんねい)

「蘇飛サンさー、なんで引き上げるんデスカ?

勝つ気がないんデスカ?」



挿絵(By みてみん) 蘇飛(そひ)

「そう怒るな。さっきも言ったが敵は大軍だ。

調子に乗って攻めかかっても逆襲されるのがオチだ」



挿絵(By みてみん) 甘寧(かんねい)

「だからってさー、叩ける時に叩かないってのは意味わかんなくね?

兵が少ないってグチってるくせに、

城にこもらずに外に出てるのもわけわかんねーし。

籠城して援軍待つのがフツーじゃね?」



挿絵(By みてみん) 蘇飛(そひ)

「どうせこの戦は……。いや、なんでもない。

次の出陣に備えて休んでおけ」



挿絵(By みてみん) 甘寧(かんねい)

「え? なんか言いかけたんじゃね? チョー気になんですけど」



挿絵(By みてみん) 黄祖(こうそ)

「どうせこの戦は負け戦だ」



挿絵(By みてみん) 蘇飛(そひ)

「し、将軍」



挿絵(By みてみん) 甘寧(かんねい)

「あ、大将チョリース。――で、負け戦ってなんなんすか?」



挿絵(By みてみん) 黄祖(こうそ)

「我々は孫権に差し出された生贄だ。

援軍は来ない。死ぬのが我々の仕事だ」



挿絵(By みてみん) 甘寧(かんねい)

「へ? なんなんすかそれ」



挿絵(By みてみん) 蘇飛(そひ)

「将軍、そんなことを言われては――」



挿絵(By みてみん) 黄祖(こうそ)

「甘寧は今までよく働いてくれた。知る権利がある。

我々は暗殺部隊として、汚れ仕事をしてきた。

だから劉表の裏の顔を知りすぎてしまい、切り捨てられたのだ」



挿絵(By みてみん) 蘇飛(そひ)

「…………」



挿絵(By みてみん) 黄祖(こうそ)

「……だからといって孫権に降伏することもできない。

我々は父と兄の仇なのだからな。私や蘇飛の首を差し出せば済むが、

江夏の守りを命じられたからそうもいかぬ。

我々にできることは、せいぜい兵に被害を出さないようにして、

死ぬことだけだ」



挿絵(By みてみん) 甘寧(かんねい)

「……なんつーか、黄祖サンさー」



挿絵(By みてみん) 黄祖(こうそ)

「なんだ。同情ならいらぬぞ」



挿絵(By みてみん) 甘寧(かんねい)

「いや、意外とおしゃべりだったんすね。オレ驚いたわ」



挿絵(By みてみん) 黄祖(こうそ)

「フン」



挿絵(By みてみん) 蘇飛(そひ)

「……甘寧、お前は逃げろ。

お前はまだ若い。俺たちに付き合うことはない」



挿絵(By みてみん) 甘寧(かんねい)

「はあ?

逃げろったって、さっき孫権んとこのジジイを殺しちまったぜ。

逃げても孫権に追われちまうじゃねーの」



挿絵(By みてみん) 蘇飛(そひ)

「それなら孫権に降れ」



挿絵(By みてみん) 甘寧(かんねい)

「それこそ無理じゃね?」



挿絵(By みてみん) 黄祖(こうそ)

「……邾(ちゅ)の県令にしてやるから赴任しろ。

県令が寝返るとなれば受け入れてくれるだろう」



挿絵(By みてみん) 甘寧(かんねい)

「……カッコつけるわけじゃないけどさー。

アンタらを残してオレだけいい目を見るのは嫌だな」



挿絵(By みてみん) 蘇飛(そひ)

「考えが甘いな。

仇のままで孫権に降伏したほうが、ここで死ぬよりよほど辛いぞ」



挿絵(By みてみん) 黄祖(こうそ)

「処刑を待つだけだった江賊のお前を拾ってやった、

我々の言うことが聞けんのか」



挿絵(By みてみん) 甘寧(かんねい)

「それ言われると返す言葉がねーな……。

でもなんつーかさ。顔に似合わずお人好しだよなアンタら」



挿絵(By みてみん) 蘇飛(そひ)

「お前に言われたくはない」



挿絵(By みてみん) 黄祖(こうそ)

「フン……」



~~~江夏 数年後~~~



挿絵(By みてみん) 馮則(ふうそく)

「黄祖を討ち取ったぞ!」



挿絵(By みてみん) 董襲(とうしゅう)

「蘇飛も捕らえました!」



挿絵(By みてみん) 孫権(そんけん)

「よし、ついにやったぜ!」



挿絵(By みてみん) 張昭(ちょうしょう)

「やれやれ、ようやく江夏が落ちたか。

こう何年も掛かるのならばもっと強く反対していたものを……。

まったく、魯粛が提供してくれた軍資金が無ければ

どうなっていたことやら」



挿絵(By みてみん) 韓当(かんとう)

「さっそく蘇飛の首を孫堅艦長の墓の前で刎ねて、

黄祖の首と並べて供えてやるぞ!」



挿絵(By みてみん) 蘇飛(そひ)

「こうなってはしかたない。さっさと殺せ」



挿絵(By みてみん) 甘寧(かんねい)

「どけどけどけどけ! 大将! 孫権の大将!」



挿絵(By みてみん) 孫権(そんけん)

「おう、どうした甘寧」



挿絵(By みてみん) 甘寧(かんねい)

「一生のお願いだ! 蘇飛を助けてくれ!

蘇飛はオレの恩人なんだ!」



挿絵(By みてみん) 虞翻(ぐほん)

「な、何を言うんでゲスか! 降将ふぜいがなんということを!」



挿絵(By みてみん) 蘇飛(そひ)

「やめろ甘寧。

せっかく孫権に仕えるようになったお前の立場が悪くなるだけだ」



挿絵(By みてみん) 甘寧(かんねい)

「そうはいかねえし。

アンタ、死ぬより辛い目に遭えってオレに言ったし。

そう言う自分は楽な道を選ぼうなんてずりいし」



挿絵(By みてみん) 蘇飛(そひ)

「フン……しばらく会わないうちに口ばかり達者になったようだな」



挿絵(By みてみん) 甘寧(かんねい)

「孫権の大将!

どうしても首が欲しいってんならさ、オレの首をやるから――」



挿絵(By みてみん) 孫権(そんけん)

「いらねェよ、んなモン。

オレは仇でもないヤツの首を集める趣味はねェぜ。

蘇飛はおめェに預けるから好きにしろ」



挿絵(By みてみん) 甘寧(かんねい)

「あざーっす!」



挿絵(By みてみん) 張昭(ちょうしょう)

「お……親の仇をそんなにあっさりと。

孫権殿! いいのですかそれで!」



挿絵(By みてみん) 孫権(そんけん)

「いいっての。

甘寧が死んだり、逆ギレしてオレを殺そうとするよりマシだろ?」



挿絵(By みてみん) 甘寧(かんねい)

「…………いや、そんなことしねーし」



挿絵(By みてみん) 張昭(ちょうしょう)

「こ、この男! その手があったかという顔をしましたぞ!」



挿絵(By みてみん) 孫権(そんけん)

「ははは。その前に蘇飛を釈放して助かったぜ。

んじゃあそろそろ帰るか」



挿絵(By みてみん) 朱治(しゅち)

「では殿、江夏は誰に守らせましょうか?」



挿絵(By みてみん) 孫権(そんけん)

「へ? いや、守るも何も、別に江夏を占領する気はねェんだけど。

江夏を攻撃してたのは黄祖や蘇飛を殺すためだけだし」



挿絵(By みてみん) 張昭(ちょうしょう)

「わ、我々はなんのために何年もかけて……ッ!?」



挿絵(By みてみん) 孫権(そんけん)

「だってまだオレたちにゃ、江夏まで領土を広げる余力はねェぜ?

まずは山越(さんえつ)の連中とか、

揚州(ようしゅう)の賊どもをなんとかして、足場を固めるべきだろ。

おい、諸葛瑾」



挿絵(By みてみん) 諸葛瑾(しょかつきん)

「はいはい」



挿絵(By みてみん) 孫権(そんけん)

「劉表に江夏は返すからよォ、

停戦しようぜって交渉してきてくんな」



挿絵(By みてみん) 諸葛瑾(しょかつきん)

「はいはい。お任せください」



挿絵(By みてみん) 張昭(ちょうしょう)

「何年間も争っていた相手と、気軽に和睦を……。

こ、これだけ苦労して何も得られず、

せっかく捕らえた蘇飛も殺さず…………ッ!!

――うーん」



挿絵(By みてみん) 程普(ていふ)

「旦那様、張昭様が卒倒してしまいました」



挿絵(By みてみん) 孫権(そんけん)

「血管が切れてねェか医者に診せてやってくんな。

――オヤジや兄貴の仇をとらなきゃ、

前に進めねェってわけじゃねえけどよ。

まあ、これでオレなりのけじめは付いたぜ。

んじゃあ、別働隊の周瑜や呂範と合流して帰ろうぜ!」



挿絵(By みてみん) 蘇飛(そひ)

(これが孫権か……。

孫家は、孫策の頃よりもさらに繁栄するかもしれんな……)



~~~~~~~~~



かくして孫権は仇敵・黄祖の首をあげた。

時はさかのぼり、北方では袁紹が死の床についていた。

さらに失意の名族に追い討ちをかけるように、後継者争いがくり広げられようとしていた。


次回  〇三九   名族の落日

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。