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アイコン三国志  作者: 小金沢
第四章 官渡の戦い
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34/126

〇三三   皇帝への道

~~~汝南(じょなん)~~~



挿絵(By みてみん) 劉安(りゅうあん)

「それでは私は肉の下ごしらえをしてきます。

ごゆっくりどうぞ……」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「劉安さん、いつも家を貸してもらってすまんのう」



挿絵(By みてみん) 劉安(りゅうあん)

「私も曹操と戦うお手伝いがしたいのです。

遠慮はなさらずに……」



挿絵(By みてみん) 劉辟(りゅうへき)

「曹操め、袁紹と我々に挟み撃ちされてはたまらんと、

増援を送ってきたようだに」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「袁紹よりは楽に潰せるアタイたちを、

先に潰そうってんでしょ。的確な判断ね」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「それにしても、こうして劉辟さんと一緒に戦ってると、

わしらまで黄巾賊になった気がするのう」



挿絵(By みてみん) 劉辟(りゅうへき)

「あんたは黄巾党に入ったんじゃなかったのか?

俺はそのつもりだったんだがに」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「わしは恐れ多くも皇族の末裔じゃぞ!

黄巾賊になんか入るものか」



挿絵(By みてみん) 劉辟(りゅうへき)

「献帝(けんてい)陛下と同じ劉姓ってだけで

皇族になれるなら、俺も皇族だに」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「ははは。違いないのう。

それにしても劉辟さんはつくづく変わった人じゃな。

皇族なのに黄巾賊に入るわ、

曹さんとこにいる青州黄巾軍にも加わらんわ。

袁紹さんに味方せず、青州黄巾軍に加わってりゃ

楽できたんじゃないんか?」



挿絵(By みてみん) 劉辟(りゅうへき)

「そりゃそうだに。たとえばあんたらをふん縛って

曹操のもとにつれてけば、莫大な褒美がもらえるだに」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「!」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「あっはっはっはっはっ。…………冗談じゃろ?」



挿絵(By みてみん) 劉辟(りゅうへき)

「ギリギリで冗談だがに。

俺は劉姓だからってだけじゃなく、陛下を守るために戦ってるだに。

黄巾賊に入って世直ししようとしたのも、

曹操に逆らってるのもそのためだに。

だから、俺と同じく陛下のために戦ってるあんたは殺さないし、

青州黄巾軍にも加わらないだに」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「ふーん。意外と熱い男なのね、あんた」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「惚れたのか張さん」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「悪いけどアタイ好みの面相じゃないわ。

……ギリギリだけどね」



挿絵(By みてみん) 劉安(りゅうあん)

「さあ、新鮮な肉が焼けましたよ。

たくさんありますから召し上がってください……」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「おお、これは美味そうじゃな!」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「そういえば劉安、奥さんはどうしたのよ?

最近見かけないけど体調でも悪いの?」



挿絵(By みてみん) 劉安(りゅうあん)

「ええ。すこしね。ご覧のように……」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「は?」



挿絵(By みてみん) 龔都(きょうと)

「劉辟! 曹操軍が攻めてきたぞ! それも今までにない大軍だ!」



挿絵(By みてみん) 劉辟(りゅうへき)

「やれやれ。落ち着いて飯も食わせてくれんだに」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「ち、ちょっと待っとくれ。せめてこの肉を食べ終わるまで――」



~~~汝南~~~



挿絵(By みてみん) 劉辟(りゅうへき)

「ぐわあああっ!!」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「劉辟さん!」



挿絵(By みてみん) 劉辟(りゅうへき)

「こ……ここまでだに。り、劉備。あんたは無事に逃げるだに……」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「アンタ、陛下を守るんでしょ!

こんなとこで倒れていいの!?」



挿絵(By みてみん) 劉辟(りゅうへき)

「その役目は……あんたらに任せるだ……に……」



挿絵(By みてみん) 朱霊(しゅれい)

「クックックッ。黄巾賊の首領は討ち取った。一気に蹂躙するのだ」



挿絵(By みてみん) 満寵(まんちょう)

「敵は浮き足立っているぞ! かかれいッ!!」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「朱霊のヤツ、共闘したこともあるってのに遠慮なしね!」



挿絵(By みてみん) 簡雍(かんよう)

「あいつにそんなことは期待できないだろ。

さあ、早く逃げるぞ」



挿絵(By みてみん) 孫乾(そんけん)

「し、しかし曹操軍の中を突破して

袁紹と合流するのはもう不可能です」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「そうじゃ、今度はどこに逃げればいいんじゃ?

だいたいどこまで逃げてもわしは

曹さんに追い掛け回されとるんじゃぞ」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「じゃあ張繍(ちょうしゅう)みたく曹操に降る?

アタイたちは張繍みたいに多くの兵を持ってないし、

同じように許されるとは限んないけど」



挿絵(By みてみん) 糜竺(びじく)

「はっはっはっ。そんな一か八かの博打は御免こうむりたいですな」



挿絵(By みてみん) 龔都(きょうと)

「と、とりあえず背後に逃げるのだ。

まだ背後に敵は現れていな――ぎゃあああああっ!!」



挿絵(By みてみん) 曹仁(そうじん)

「俺たちに手抜かりはないぜ!

劉備! どうやらここがお前の死に場所のようだな!」



挿絵(By みてみん) 糜芳(びほう)

「そ、曹仁が背後に現れたアル! 退路がないアル!」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「劉備! アンタがぐずぐずしてるからよ!」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「わしはここで死ぬのか……? 劉辟さん……」



挿絵(By みてみん) 趙雲(ちょううん)

「先輩! こっちッス!」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「趙雲!?」



挿絵(By みてみん) 趙雲(ちょううん)

「こっちに逃げるッス! 援軍が来てるッス!」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「え、援軍じゃと?」



挿絵(By みてみん) 関羽(かんう)

「…………ッ!!」



挿絵(By みてみん) 関平(かんぺい)

「関羽ここにあり! 命の惜しくない者は前に出よ!

……と父は叫びたいのを我慢しています」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「関羽! どうしたのよその軍勢は!?

3千はいるじゃないの!」



挿絵(By みてみん) 周倉(しゅうそう)

「関羽将軍を慕い、黄巾賊の残党やら

ゴロツキやらが集まったんでさあ」



挿絵(By みてみん) 裴元紹(はいげんしょう)

「劉辟が殺されたって?

それじゃあ仇討ち合戦と行こうじゃねえか!」



挿絵(By みてみん) 陳到(ちんとう)

「この場は拙者らが引き受けた。

貴君らは荊州(けいしゅう)へ逃れられよ」



挿絵(By みてみん) 廖化(りょうか)

「ゴロツキ連中のつてをたどって、

荊州の劉表(りゅうひょう)に渡りをつけたんだ。

劉表はあちこちから人材を集めてるからな。

喜んで迎えてくれるってよ! ありがたいな!」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「わ、わかった。荊州じゃな」



挿絵(By みてみん) 趙雲(ちょううん)

「自分が血路を切り開くッス! 先輩は後ろに続いて下さい!」



挿絵(By みてみん) 曹仁(そうじん)

「おのれ関羽! 夏侯惇が危惧していた通りだ!

やはり我々の災いになったな!」



挿絵(By みてみん) 関羽(かんう)

「…………ッッ!」



挿絵(By みてみん) 満寵(まんちょう)

「関羽は曹仁将軍に任せろ! 我々は劉備を追う!」



挿絵(By みてみん) 朱霊(しゅれい)

「逃がすなよ満寵。追い詰め、切り裂き、屠るのだ」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「おどきなさい! 関羽とアタイがそろえば無敵なんだから!!」



~~~汝南 西~~~



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「そうか……公ちゃんも死んじまったのか」



挿絵(By みてみん) 趙雲(ちょううん)

「公孫瓚(こうそんさん)先輩が亡くなって、自分は行き場を失ったッス。

でもその時、劉備先輩の言葉がよみがえりました。

だからここに来たッス。

先輩、今でも先輩は、いずれは皇帝になると思ってるッスか?」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「皇帝に……」



挿絵(By みてみん) 趙雲(ちょううん)

「正直、驚いたッス。死ぬほど大胆不敵なことを言ってるのに、

先輩の目には迷いも恐れも見えませんでした。

地位も兵も、失礼ッスけど力もないのに、

なんでこの人はこんなことが言えるんだろうと不思議でした」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「バカだからよ。

バカだから迷いも恐れも身の程も知らないの」



挿絵(By みてみん) 趙雲(ちょううん)

「バカでもいいッス。

自分は先輩と一緒に、バカな夢を追いかけてみたいッス。

だから先輩、もう一度聞かせて下さい。

まだ先輩は、皇帝になるつもりッスか?」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「なる。皇帝陛下に、わしはなる!」



挿絵(By みてみん) 孫乾(そんけん)

「即答した……」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「……本当にバカね」



挿絵(By みてみん) 糜竺(びじく)

「あっはっはっ。でもそんなバカな夢が、

だんだんと実現に近づいてると思いませんか?

こんなに多くの人が集まり、曲がりなりにも兵も手に入れて、

曹操相手に戦いながらなんだかんだで生き延びています」



挿絵(By みてみん) 簡雍(かんよう)

「集まったのはゴロツキばっかりだけどな」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「大将の劉備がゴロツキみたいなもんだもの。

しょうがないじゃない。

……ほら、関羽。アンタも何かこのバカに言ってやりなさいよ」



挿絵(By みてみん) 関羽(かんう)

「…………」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「言わんのかい!」



挿絵(By みてみん) 関平(かんぺい)

「我が兄者への思いは言葉にできるものではない!

……と父は思っています」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「前から思ってたけど、それは関平が思ってることでしょ。

関羽はなーんにも考えちゃいないわよ。

劉備とおんなじバカなのよ」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「それじゃあバカなわしや関さんと最初から

ずっと付き合ってる張さんも、大したバカじゃな」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「アンタにだけはバカ呼ばわりされたくないわ!!」



挿絵(By みてみん) 周倉(しゅうそう)

「……なんだか随分とにぎやかなとこに入っちまいやしたなあ」



挿絵(By みてみん) 陳到(ちんとう)

「たしかに騒がしい。だが、嫌いではない」



挿絵(By みてみん) 廖化(りょうか)

「曹操や袁紹に仕えるより、気楽そうでいいじゃないか」



挿絵(By みてみん) 裴元紹(はいげんしょう)

「黄巾賊の雰囲気にそっくりだもんなこいつら」



挿絵(By みてみん) 趙雲(ちょううん)

「……やっと自分の居場所を見つけた気がするッス。

自分は皇帝になる劉備先輩を守る槍になって見せるッス!」



~~~~~~~~~



かくして劉備は流浪の身に戻ったが、多くの仲間を手に入れた。

劉備は荊州で再起を図ることとなるが、それは後の話である。

一方、曹操と袁紹にはついに激突の時が迫っていた。


次回 〇三四   官渡の戦い

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