〇二三 裏切りの呂布
~~~徐州 宴会場~~~
「あっはっはっ。なーに勘違いしてんのよ。
アタイはノンケも構わず喰っちゃうような肉食系女子じゃないわよ。
お酒の相手をして欲しいだけ。ただし一晩中ね」
「そ、そうでしたか。私はてっきり……」
「ホッ……ですの」
「まったく、何を不安がっていたのだお前たちは」
「…………」
「いやー関羽の大将いいわ!
なんつーの、男は黙って酒を飲むみたいな。
オレはついつい手も口も出ちまうからさ、
大将みたいな男に憧れんだよ」
「どうだい呂さん、楽しんどるか?」
「ghjdklsa;::879kl」
「久しぶりのことです。こんなに楽しくお酒を飲めるのは。
私も部下も大変感謝しています。
あなた方を頼ってよかったと思いますよ。心からね」
「堅っ苦しいことは抜きにしようや。
天下無双の呂さんと一緒に酒が飲めるなんて、
わしらも光栄なことじゃからな」
「dfjk9736vl;o」
「あなたもご兄弟も立派な方です。
あなた方がうらやましいと思います。
私もあなた方をブラザーと呼んで仲間入りしたいくらいです」
「ほんなら呂さんももうわしらの兄弟じゃ!
呂さんが一番年上じゃから、
わしらを弟じゃと思ってくれて良いぞ」
「…………」
~~~徐州~~~
「歓迎してくれてるのはうれしいですの。
でもこんなに毎日毎晩、宴会に付き合わされたら困るですの。
血がお酒に入れ替わったみたいですの……」
「呂布将軍や高順殿、張遼はウワバミだからいいが、
俺たちは付き合いきれんな……」
「ウップ、ですの。
吐きそうですの……。先に帰っててですの……」
「ああ、大丈夫か? 少し夜風に当たって行け」
「ふらふらですの……。
このままじゃ張飛ちゃんにお酒で殺されるですの……」
「……ならば先に殺してしまえばいい」
「だ、誰ですの?」
「……先に殺してしまえばいい。
……吾の目を見よ。
……先に殺してしまえばいい」
「…………先に殺してしまえばいいですの」
~~~徐州~~~
「袁術軍が攻めてきた?」
「はい。配下の孫策が南方を平定したおかげで、
北の徐州に兵を向ける余裕ができたようです」
「フン、上等じゃないの。
関羽、劉備! 踏んづけてきてやりなさい」
「わ、わしらだけか? 張さんは出ないのか?」
「アタイが出陣しちゃったら誰が徐州の統治すんのよ。
アンタが代わりできんの?」
「そりゃあ無理じゃ」
「あんなニセ名族なんてアタイがいなくても楽勝でしょ?
さっさと行ってきなさいよ」
「dajkld7145cvl」
「私に提案があります。その戦いをぜひ手伝わせて下さい。
お世話になっているお礼にです」
「それなら大将が出るまでもねーよ。
オレと成廉が加勢してくらぁな」
「はい、せっかく落ち着いたのです。
呂布将軍は骨休めしていてください」
「関さんに遼さん、おまけに成さんか。
はははっ。こりゃ無敵じゃのう。
じゃあちょっくら行ってくるわ」
「………………」
~~~徐州 夜 張飛の私室~~~
「ふう、劉備がいないだけで仕事がはかどるわね。
あのスカポンタンと来たら何かと面倒を起こして邪魔するんだから」
「張飛ちゃん……。お酒を持ってきましたですの」
「んん? 気が利くじゃないの。
でもごめんね、アタイは仕事中は酒を飲まないって決めてんの。
遠征軍の兵站とかいろいろ考えなきゃいけないから、
今日は宴会も開けないわ」
「……ならば、先に殺してしまえばいいですの」
「は?
ち、ちょっと何よこの連中は。
刀なんておっ下げて何のつもり!?」
「……先に殺してしまえばいいですの」
「ま、まさか呂布軍の反乱!? 冗談じゃないわよ!!」
~~~徐州 呂布陣営~~~
「fjk90k;;9-0!?」
「これはなんの騒ぎですか? 誰と誰が戦っているのですか?」
「誰かが張飛を襲ったそうだ。
襲った奴らは口々に『ですの』と言ってるそうだが……」
「……どう考えても郝萌の部下ではないか。しかしなぜ郝萌が」
「り、り、り、呂布め! よくも我々の好意を裏切ったな!」
「ghjkas9081」
「ミスター曹豹、これは誤解です。
いま原因を究明しているところです。
決して我々は敵意を持っていません。あなた方には」
「何を白々しいことを言うか!
連日連夜のどんちゃん騒ぎに、
浪人の分際でずうずうしくも我々の主君を弟呼ばわり。
お前らが恩を恩とも思っていないことは明白ではないか!
我々も丁原や董卓や袁紹のように殺すつもりであろう!」
「いや、だから袁紹は殺してねえって」
「袁紹は殺していない?
ならばお前らは袁紹の従弟の袁術と通じているのだな!
徐州を乗っ取り、袁術に明け渡すつもりか!」
「あんたちょっとうるせえよ!」
「あがあああっ!!」
「侯成! 何も殺すことはなかろう」
「い、いやそんなつもりじゃ……。
べらべらしゃべってるところを殴ったから、
たまたま舌を噛んだだけだ」
「ちょっとアンタたち説明しな……曹豹……」
「…………最悪だ」
「sdfaklssg89766」
「ミスター張飛、これは誤解なのです。我々は決して――」
「問答無用!」
「afjkslio0899!」
「戦ってはいけません!
話せばわかります。どうか剣を抜かないで下さい」
「……殺してしまえばいいですの」
「また来たわね! アンタだけは許さないんだから!」
「キャーーーーですの!」
「萌タン! てめえよくも!」
「かくなる上はもう衝突を抑えられますまい。
呂布将軍、徐州を乗っ取りましょう」
「ooh......」
「このまま我々だけ逃げ出しては
遠征に同行している張遼や成廉、兵たちが危ない。
徐州を乗っ取り彼らを迎え入れるしかないのです」
「…………sadfjk90dfjls」
「わかりました。ただしミスター張飛や
彼の兵はあまり傷つけないようにして下さい」
「無論です。
城に火をかけろ! そうすれば張飛は兵を引くはずだ!」
「張飛様! 城に火の手が上がりました!
もはや持ちこたえられません。
退却し、遠征中の関羽様らと合流しましょう」
「んぐぐ……」
「呂布殿も城が欲しいでしょうから、
このまま焼け落とさせず消火にかかるはずです。
我々まで手が回らず、今のうちなら逃げ切れるでしょう」
「しかたないわね……。退却よ! 関羽たちと合流するわ!」
「よし、敵は去った。追撃はするな。急いで城の火を消せ」
「萌タンの仇をみすみす見逃すのかよ!?」
「言うな。我々は望んで城を乗っ取るのではない。
これ以上の戦いは無意味だ」
「チッ……」
「……呂布よ」
「fjksal;apwhoareyou?」
「何者だ!?」
「……感謝しろ。根無し草のお前に城を与えてやった」
「!? ……jska9as17xzcla]」
「さてはあなたですね。
ミスター郝萌をそそのかし、こんな事態を巻き起こしたのは。
なんと余計なことをしたのでしょうか、あなたは!
私はしません。感謝していないのです。
今すぐ去りなさい、ここを!」
「……そうか」
「呂布将軍? どちらへ行かれるのですか」
「fhak;ao@:ak」
「ミスター高順、私は行かねばならない場所があります。
少しこの場を任せます。心配いりません。
私はすぐに戻るでしょう」
~~~揚州~~~
「張飛軍が逃げるぞ! 追撃をかけろ!」
「ヒャッホー! 皆殺しだぜい!」
「待ちやがれええ!」
「逃げるしかない! 逃げるしかないんじゃが……
でも、どこへ行けばいいんじゃ」
「徐州は呂布に乗っ取られたからなあ。
でも張飛は脱出してこちらに向かっているそうだ。
張飛と合流しよう」
「………………!?」
「お、おい! あれを見るんじゃ!」
「………………」
「り、呂布!?」
「jsfa;ds:;o;kk」
「袁術軍に伝えることがあります。
ここから先に進むことは許しません。
もしあなた方がそれでも進もうというのなら、
私が相手になります。私が戦うのです」
「り、呂布と戦うだと? 冗談ではない! 引き上げるぞ!」
「退却? 冗談きついぜ将軍! 俺はまだブッ殺し足りねえよ!」
「俺たちは張飛軍と戦うことを命じられたのだ!
呂布軍と戦うことは任務に入っておらん! 退却だーーッ!」
「なんと弱気なことを……」
「り、呂布がわしらを助けた……?」
「asjsls;dopplkl」
「ミスター劉備。いろいろと誤解がありました。
私は心ならずも弟さんの治める徐州を乗っ取りました。
しかし、もし許して頂けるならば返却したいのです」
「は? せっかく乗っ取った徐州を返すじゃと?」
「騙されんじゃないわよ劉備!」
「張さん!」
「呂布は本性を現したのよ。
アンタのことも曹豹みたいに騙し討ちする気に違いないわ!」
「jakldasil」
「私は――」
「アンタを信じたアタイが馬鹿だったわ。
アンタの言葉なんてこれ以上聞く気はないわ!
今すぐここから消えなさいよ!」
「………………」
「…………なんか呂布のヤツ、悲しそうな顔じゃったな」
「フン。白塗りの下で何を考えてるのか得体が知れないわよ。
……それよりこれからどうする?」
「そうじゃなあ。今度は誰を頼ろうかのう」
「どこに落ち延びるにしろ、
アタイは今度のことですっかり懲りたわ。
やっぱりアタイは人の上に立つ器じゃないのよ。
誰かを上に立てて、二番手でいるのがいいわ」
「ふーん。つまり張さんは軍師タイプってことじゃな」
「そうそう、今後は軍師様と呼びなさいよね。
ってことで劉備。
これからはアンタを御主人様ってことにしといてあげるわ」
「えー。せっかく気楽にやっとったのにのう」
「あっはっはっ。
城を失ったというのに明るい方々だ。安心しましたよ」
「糜竺、アンタもついてきてたの?
アンタは大富豪なんだから、徐州に残ってればよかったのに」
「あっはっはっ。
お金を儲けるより、みなさんと一緒にいる方が楽しそうですから」
「金を持つと人間は余裕ができるんじゃなあ」
「私や糜竺の他にも、劉備様たちを慕って
多くの者が逃れてきています。どこへなりとついていきましょう」
「そんなら今度は西へでも行ってみるかのう。
曹操のヤツとか最近、羽振りがいいみたいじゃし、
受け入れてくれるかもしれんわ」
~~~~~~~~~
かくして呂布は心ならずも徐州を乗っ取った。
一方、献帝を擁する曹操も着々と版図を広げつつあったが、
そこに忍び寄らんとする陰謀の影があった。
次回 〇二四 宛城の戦い




