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アイコン三国志  作者: 小金沢
第三章 人中の呂布
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23/126

〇二二   江東の小覇王

~~~曲阿(きょくあ)~~~



挿絵(By みてみん) 劉繇(りゅうよう)

「孫策め、調子に乗ってこの曲阿まで攻め寄せるとは、

つくづくバカな男よ。

兵たちも混乱からようやく落ち着いてきた。

こうして守備を固めていれば何もできまい」



挿絵(By みてみん) 許劭(きょしょう)

「さよう。私が見出した樊能や于糜を

素手で殺したなどという妄言も収まるでしょう」



挿絵(By みてみん) 太史慈(たいしじ)

「妄言ではない! 私は兵たちに確かめた。

彼らは本当にそれを見たのだ」



挿絵(By みてみん) 張英(ちょうえい)

「ええい! いつまで臆病風に吹かれて幻を見ているのだ!

お前がいたら我が軍の士気が下がる。偵察にでも出ていろ!」



挿絵(By みてみん) 太史慈(たいしじ)

「はっ…………」



~~~曲阿 孫策軍~~~



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「3万の兵で亀みてェに城にこもられちゃあ、

さすがになんにもできやしねェな」



挿絵(By みてみん) 朱治(しゅち)

「先の大勝利で多くの敵兵が降伏しましたが、

まだまだ敵との兵力差は大きいですな」



挿絵(By みてみん) 張紘(ちょうこう)

「挑発しておびき寄せようとしているのだが、

なかなか上手く行かないぞ」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「ここであれこれ考えててもしかたねェや。

ちょっくら城の裏手に回って、隙でもねェか見てくるぜ」



挿絵(By みてみん) 黄蓋(こうがい)

「殿! お一人で行かれては危険です!」



挿絵(By みてみん) 張昭(ちょうしょう)

「まったく落ち着きのない……早く連れ戻せ!」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「ふーん。どこの城壁も手入れが行き届いてんな。

さすがは皇族サマ、金があるんだろうよ」



挿絵(By みてみん) 太史慈(たいしじ)

「!? まさか……あれは孫策!

こんな所で出くわそうとは偵察に来ていた甲斐があったぞ。

孫策! 私と勝負だ!」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「あぁん? 誰だか知らねェが、

オレの前に立つなら死ぬ覚悟はできてんだろうな!」



挿絵(By みてみん) 太史慈(たいしじ)

「笑止! この双槍に対して徒手空拳では近づけまい!」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「やるじゃねェか! だが馬を狙ったらどうなるかな!」



挿絵(By みてみん) 太史慈(たいしじ)

「うおおっ!? 素手で私の馬を……だが!」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「チッ。こいつ馬から降りても強ええじゃねェか!」



挿絵(By みてみん) 太史慈(たいしじ)

「やはり地上戦では孫策に分があるか……ッ」



挿絵(By みてみん) 程普(ていふ)

「旦那様! ご無事ですか!」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「来んな程普! これはオレとこいつのケンカだ!」



挿絵(By みてみん) 黄蓋(こうがい)

「そういう訳にはいかぬ! 貴様、殿から離れろ!」



挿絵(By みてみん) 太史慈(たいしじ)

「ここまでか……孫策、勝負は後日に預けたぞ!」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「邪魔が入っちまって悪ィな。おい、お前の名は?」



挿絵(By みてみん) 太史慈(たいしじ)

「我が名は太史慈! 名乗り遅れた非礼を許せ」



挿絵(By みてみん) 蒋欽(しょうきん)

「孫策どん! ケガはないでごわすか?」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「タイシジか……。へへっ。久々に骨のある相手だったぜ」



~~~曲阿~~~



挿絵(By みてみん) 張英(ちょうえい)

「なんと! 孫策と一騎討ちしておきながら、

おめおめと逃げ帰ってきたのか!」



挿絵(By みてみん) 太史慈(たいしじ)

「面目ない。

だがあの男、私が望めばまた一騎討ちに応じるだろう。

その時には必ず首を挙げてみせる」



挿絵(By みてみん) 劉繇(りゅうよう)

「総大将が一騎討ちに応じる?

何をバカなことを。お前は夢みたいな話ばかり――」



挿絵(By みてみん) 笮融(さくゆう)

「……孫策ごときにいつまで手こずっているのだ劉繇」



挿絵(By みてみん) 薛礼(せつれい)

「キャーー笮融様!」



挿絵(By みてみん) 許劭(きょしょう)

(付近の村人から絶大な支持を受けている教祖の笮融か……。

あいかわらず気味の悪い男だ)



挿絵(By みてみん) 笮融(さくゆう)

「……聞けば孫策という男、素手で戦ったり、

一人で偵察に出たりと大胆不敵な性格。

……うかつに独りきりになったところを襲えばよいではないか」



挿絵(By みてみん) 劉繇(りゅうよう)

「し、しかし皇族に連なる私が、

そのような卑怯な手を使うわけには……」



挿絵(By みてみん) 笮融(さくゆう)

「……そのために我が来たのだ。

すでに手は打った。孫策は我の手の者が討つ」



挿絵(By みてみん) 劉繇(りゅうよう)

「お、おお。そうか。いつもすまぬな。

孫策を殺してくれればお布施は弾むぞ」



挿絵(By みてみん) 薛礼(せつれい)

(さすが笮融様、なんて手際がよろしいのかしら……)



~~~曲阿 西部~~~



挿絵(By みてみん) 呉景(ごけい)

「こっちだ孫策、この丘からなら城の中までよく見えるぞ」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「ほーう。丸見えだなこりゃ」



挿絵(By みてみん) 于茲(うじ)

(太史慈に襲われたばかりだというに、

また3人きりで行動とは愚かな……)



挿絵(By みてみん) 周泰(しゅうたい)

「む……。殿、気をつけろ。誰かいる」



挿絵(By みてみん) 于茲(うじ)

「気づいたか。

だが遅い! シャアアアアッ!!」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「ぐああっ!」



挿絵(By みてみん) 于茲(うじ)

「シャアアアアッ! シャアアアアッ!」



挿絵(By みてみん) 周泰(しゅうたい)

「ぐううっ!! き、貴様……」



挿絵(By みてみん) 于茲(うじ)

「まだ動けるのか。

しぶとい奴め! シャアアアアッ!」



挿絵(By みてみん) 周泰(しゅうたい)

「がああっ!

と、殿にはこれ以上、指一本触れさせぬ。ぐぬぅぅぅぅ!!」



挿絵(By みてみん) 于茲(うじ)

「わ、私の爪が喰い込んで外れぬ。

や、やめろ。ギャアアアア!!」



挿絵(By みてみん) 呉景(ごけい)

「孫策! 周泰! 大丈夫か!」



挿絵(By みてみん) 于茲(うじ)

「この爪には猛毒が塗ってある……。

もはや助かるまい……グボォッ」



~~~曲阿 孫策軍~~~



挿絵(By みてみん) 程普(ていふ)

「ああ……また旦那様を亡くしてしまうなんて……」



挿絵(By みてみん) 韓当(かんとう)

「ちきしょう! ちきしょおおおおう!!」



挿絵(By みてみん) 張英(ちょうえい)

「くっくっくっ。孫策軍め、身も世もなく泣き崩れておるわ。

さあ、葬列を襲って孫策の死体を奪ってやれ!!」



挿絵(By みてみん) 薛礼(せつれい)

「うおおお! 笮融様バンザーイ!」



挿絵(By みてみん) 黄蓋(こうがい)

「今だ! 撃てッ!!」



挿絵(By みてみん) 張英(ちょうえい)

「な、なに! 反撃してきただと。

だが孫策のいない敵など烏合の衆だ。蹴散らしてやれ!」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「へーえ。誰がいねェんだって?」



挿絵(By みてみん) 張英(ちょうえい)

「そ、孫策!?」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「てめェらが襲ったのは、ありゃオレの影武者だ。

周泰が影武者とは思えねェくらい必死に守ったから、

すっかり騙されやがったな。

城から出てきたてめェらなんか怖くもなんともねェぜ」



挿絵(By みてみん) 薛礼(せつれい)

「さ、笮融様の秘策が失敗するなんて……」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「影武者の仇は取らせてもらうぜ!」



挿絵(By みてみん) 薛礼(せつれい)

「ぎゃあああ! 笮融様バンザーイ!」



挿絵(By みてみん) 張英(ちょうえい)

「ば、バカな! そんなバカな!」



挿絵(By みてみん) 蒋欽(しょうきん)

「待て! 首を寄越すでごわす!」



挿絵(By みてみん) 張英(ちょうえい)

「うぎゃああああああっ!!」



~~~曲阿~~~



挿絵(By みてみん) 劉繇(りゅうよう)

「生きていた張英が我が軍に殺され、影武者が降伏しただと?」



挿絵(By みてみん) 太史慈(たいしじ)

「生きていた孫策に張英が殺され、

我が軍の兵のほとんどが降伏した、だ」



挿絵(By みてみん) 笮融(さくゆう)

「……勝負あったな劉繇。

……我は逃げるぞ。達者でな」



挿絵(By みてみん) 劉繇(りゅうよう)

「ああっ笮融! お前まで私を見捨てるのか……」



挿絵(By みてみん) 太史慈(たいしじ)

「私が殿軍を務める。いまのうちに逃げられよ」



挿絵(By みてみん) 劉繇(りゅうよう)

「ど、どこに逃げればよいのだ。

暖かい寝床はあるのか? うまい食べ物は?」



挿絵(By みてみん) 許劭(きょしょう)

「そんなものは知らぬ!

私の最大の過ちは劉繇、お前に仕えたことだ。

……太史慈よ、お前の言葉を信じなかった我々が愚かであった。

孫策がこれほどの男だとはな」



挿絵(By みてみん) 太史慈(たいしじ)

「いや、そんなことはどうでもよい。貴殿も早く逃げるのだ」



挿絵(By みてみん) 許劭(きょしょう)

「劉繇に仕えた私の目など当てにはならんだろうが太史慈、

見たところお前の命数はまだ尽きておらん。

命を粗末に散らすでないぞ」



挿絵(By みてみん) 太史慈(たいしじ)

「……わかった」



挿絵(By みてみん) 劉繇(りゅうよう)

「ああ……私はどうすれば…………」



~~~曲阿 城門前~~~



挿絵(By みてみん) 黄蓋(こうがい)

「殿! 曲阿にこもっていた劉繇軍は大半が離散したようです。

あとは味方を逃がすために残った、あの一軍だけですな」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「今や数万の大軍にふくれ上がったオレたちに、

あれっぽっちで立ちふさがるなんて根性のある奴だぜ。

あの軍を率いているのはきっと……」



挿絵(By みてみん) 太史慈(たいしじ)

「孫策! もはや逃げも隠れもせぬ。私と一騎討ちしろ!」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「やっぱりおめェだったか太史慈!」



挿絵(By みてみん) 太史慈(たいしじ)

「私が敗れれば後ろにいる兵は全員降伏する。

だが私が勝ったら、全員を逃してやってくれ」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「どっちにしろ、配下は生き残らせてェってことか。

わかった、その条件でいいぜ!」



挿絵(By みてみん) 張昭(ちょうしょう)

「孫策殿!

このようなバカげた一騎討ちなどワシは認めんぞ!」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「いいや、オレは認めるぜ! うおぉぉぉぉ!!」



挿絵(By みてみん) 太史慈(たいしじ)

「ぬうぅぅぅぅん!!」



~~~呉(ご)~~~



挿絵(By みてみん) 厳白虎(げんはくこ)

「孫策軍5万が向かってきているだと!?

た、たしか最初は3千ほどではなかったのか」



挿絵(By みてみん) 虞翻(ぐほん)

「そうでゲス。降伏した劉繇軍や、

付近の豪族を次々と加えてそこまで増えたでゲス」



挿絵(By みてみん) 王朗(おうろう)

「人々は孫策を『江東の小覇王』ともてはやしているそうだ」



挿絵(By みてみん) 厳白虎(げんはくこ)

「ご、5万の敵となど戦えるものか!

俺は孫策と和睦するぞ!」



挿絵(By みてみん) 王朗(おうろう)

「私は逃げぬ。会稽(かいけい)を陛下に任されたのだ」



挿絵(By みてみん) 虞翻(ぐほん)

「あいかわらず王朗殿は真面目でゲスなあ」



挿絵(By みてみん) 厳白虎(げんはくこ)

「そ、そうか。ならばもはやお前と会うことはあるまい。

孫策に殺されても知らんからな!」



~~~呉 西部 孫策軍~~~



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「厳白虎が和睦を申し出てきた?」



挿絵(By みてみん) 程普(ていふ)

「厳白虎様といえば『東呉の徳王』を名乗り、

圧政を布いていると聞きます」



挿絵(By みてみん) 呂範(りょはん)

「さんざん民を苦しめておいて、

いざとなったら真っ先に和睦か。典型的な小者だな」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「まあまあそう言うなよ。

ここに通してやんな、オレが話を聞いてやんぜ」



挿絵(By みてみん) 朱治(しゅち)

「……殿が何か企んでいる顔をしているように思えるのは、

私の気のせいですかな」



~~~呉 西部 孫策軍~~~



挿絵(By みてみん) 厳白虎(げんはくこ)

「がっはっはっ。さすがは今をときめく小覇王殿!

話がわかりますなあ」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「そういうアンタも面白い男だな。気に入ったぜ」



挿絵(By みてみん) 厳白虎(げんはくこ)

「いやいや孫策殿にはかなわぬ。

これからも対等な付き合いをよろしく頼みますぞ」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「対等?」



挿絵(By みてみん) 厳白虎(げんはくこ)

「がっはっはっ。……へ?」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「へーえ。アンタとオレは対等なのか。そりゃ驚いた」



挿絵(By みてみん) 厳白虎(げんはくこ)

「そ、孫策殿……?」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「オレはアンタの十倍近い5万もの大軍を持ってるし、

民を苦しめたこともねェ。そんなオレとアンタが対等なのか」



挿絵(By みてみん) 厳白虎(げんはくこ)

「そ、それは……」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「はっはっはっ! 冗談だよ冗談。

なんせアンタは身の程知らずにも降伏じゃなくて、

和睦を申し出てきたんだ。劉繇を倒したおかげで、

江東の豪族はほとんどがオレに降ったが、

会稽の王朗はアンタよりも兵が少ないのに、

職務を守って抵抗してやがる。

一方アンタは保身のために我先にと和睦だってよ。立派なもんだぜ。

戦えば一瞬でオレが勝つけども、

同盟相手なんだからそりゃ対等な立場だよなあ」



挿絵(By みてみん) 厳白虎(げんはくこ)

「が、がはは……」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「ところでアンタは、見かけによらず俊敏なんだってな。

たとえば何ができんだ?」



挿絵(By みてみん) 厳白虎(げんはくこ)

「た、たとえばそうですな、飛んできた矢を、

こう座ったままの姿勢でサッとかわすことができます!」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「そいつぁすげェ!

じゃあ矢じゃなくて短剣でもかわせんのか?」



挿絵(By みてみん) 厳白虎(げんはくこ)

「もちろんですとも!」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「試してやらァ」



挿絵(By みてみん) 厳白虎(げんはくこ)

「ごほぉぉぉっ!?」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「なんでェ。かわせなかったじゃねェか。

おい、死体を片付けといてくんな」



挿絵(By みてみん) 張昭(ちょうしょう)

「孫策殿……なんと趣味の悪い……」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「こいつほどじゃねェよ。

さあて、あとは王朗をどうにかすりゃあ、敵はいなくなんな。

王朗は立派な野郎だから殺したくねェ。

手加減して攻撃してよ、どうにか降伏させてくんな」



挿絵(By みてみん) 張紘(ちょうこう)

「王朗殿の説得は私に任せるのだぞ」



~~~~~~~~~



かくして孫策は快進撃で江東を制した。

その頃、張飛のもとに身を寄せた呂布に、思いもせぬ波乱が待ち受けていた。

流浪の主従に安息の時は訪れないのか?


次回 〇二三   裏切りの呂布

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