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アイコン三国志  作者: 小金沢
第三章 人中の呂布
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22/126

〇二一   孫策の逆襲

~~~寿春(じゅしゅん)~~~



挿絵(By みてみん) 周瑜(しゅうゆ)

「劉繇(りゅうよう)を攻撃している孫静(そんせい)と呉景(ごけい)から連絡です。

敵の防備は堅く、苦戦が続いているとのこと」



挿絵(By みてみん) 袁術(えんじゅつ)

「あいかわらず孫静どもは孫堅の弟のくせに大したことないザンスね。

ミーは失望したザンスよ」



挿絵(By みてみん) 周瑜(しゅうゆ)

「劉繇は名門の権威と揚州(ようしゅう)刺史の

地位を活かして数万の兵力を集めています。

孫静らの手勢だけではやはり難しいでしょう」



挿絵(By みてみん) 袁術(えんじゅつ)

「フン、劉繇が名門ザンスか?

ミーと比べたらぽっと出の成金ザンス。

で、どうしたら孫静のバカは勝てるザンスか?」



挿絵(By みてみん) 楽就(がくしゅう)

「殿! 俺に任せてくれればすぐに大勝してやるぜ!」



挿絵(By みてみん) 周瑜(しゅうゆ)

「フッ。楽就殿のお手をわずらわせるまでもありません。

孫静には兵よりも将を送れば助けとなるでしょう。

孫堅の旧臣だった程普(ていふ)や韓当(かんとう)ならば、

手足のように使いこなせるはずです」



挿絵(By みてみん) 袁術(えんじゅつ)

「周瑜がそう思うならそうすればいいザンス。

ところで、孫堅の息子の……なんといったザンスか?

あの山猿は」



挿絵(By みてみん) 周瑜(しゅうゆ)

「孫策ですか?」



挿絵(By みてみん) 袁術(えんじゅつ)

「そうそう孫策。

あいつはまた飽きもせず狩りに行ってるザンスか」



挿絵(By みてみん) 周瑜(しゅうゆ)

「はい。来る日も来る日も野原を駆けずり回って、

虎やウサギとたわむれているようです。

他愛もないものです」



挿絵(By みてみん) 袁術(えんじゅつ)

「孫堅の息子だけあって野蛮人ザンスねえ。

周瑜が呆れて、ミーに仕えるようになったのも納得ザンス」



挿絵(By みてみん) 周瑜(しゅうゆ)

「フッ。殿には孫策にはない、

名門ならではの気品がありますからね」



挿絵(By みてみん) 袁術(えんじゅつ)

「うっひゃっひゃっ。さすが周瑜はわかってるザンス!」



~~~寿春(じゅしゅん) 郊外~~~



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「袁術の監視はまいたか?」



挿絵(By みてみん) 朱治(しゅち)

「ええ。影武者の方を追っていきました」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「ああ見えてしつこいヤローだぜ。

いまだにオレを監視してやがる」



挿絵(By みてみん) 呂範(りょはん)

「周瑜がわざと監視させているのだ。

孫策は毎日、狩りに出かけていると思わせるためにな」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「たまにゃあ本当に狩りに行きてェもんだな。

――で、今日は誰に会うんだ?」



挿絵(By みてみん) 朱治(しゅち)

「これまでにも多くの人材と会い、協力を取り付けてきましたが、

今日お会いしていただくのは、これまでで最も重要な相手です」



挿絵(By みてみん) 呂範(りょはん)

「はっきり言って、この二人の協力を得られなければ、

今までの努力が水の泡だ」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「二人? そんな面倒な相手と二人も会わなきゃなんねェのかよ。

で、どこのどいつだそいつらは」



挿絵(By みてみん) 朱治(しゅち)

「聞いたことはありませんかな、『二張』の名を」



挿絵(By みてみん) 呂範(りょはん)

「孫策、この二人を得られれば、いよいよ機は熟すのだ。

がんばって説得しろよ」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「超だりィ…………」



~~~寿春(じゅしゅん)~~~



挿絵(By みてみん) 袁術(えんじゅつ)

「なんザンスか孫策、ミーに改まって話なんて」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「急な話で悪ィんだけど袁術さんよ。

ちィとばかし兵を貸してくんねェかな。

苦戦してる叔父貴らを助けに行きてェんだ」



挿絵(By みてみん) 周瑜(しゅうゆ)

「フッ。狩りに飽きたら戦争ごっこがしたくなったのか」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「あっはっはっ。まあそんなところだ。

オレも20歳になったからよ、初陣に出て一人前になりてェんだ」



挿絵(By みてみん) 袁術(えんじゅつ)

「さすが山猿……いやいや勇ましいことザンス。

でも残念ザンスが、貸せる兵は余ってないザンスね~」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「そうかい。残念だな……。

ところでガラっと話は変わるんだけどよ、袁術さん。

実はオレはこんな物を持ってるんだ」



挿絵(By みてみん) 玉璽(ぎょくじ)



挿絵(By みてみん) 袁術(えんじゅつ)

「そ・そ・そ・そ・それは!?

ぎ・ぎ・ぎ・ぎ・玉璽!?」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「親父が遺してくれた形見なんだけどよ、

もし良ければ袁術さんに貸してやってもいいんだが……」



挿絵(By みてみん) 袁術(えんじゅつ)

「ど・ど・ど・ど・どうすればいいザンスか!?

兵か!? 兵を貸せばいいザンスか!?」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「ああ、親父の旧臣の兵を、ほんの少しでいいから貸してくんな」



挿絵(By みてみん) 袁術(えんじゅつ)

「三千の兵と、馬五百を貸してやるザンス!

貸すだけザンスよ! ちゃんと返すザンスよ!」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「わーってんよ。返す返す。

その代わり、袁術さんも玉璽は預けるだけだかんな。返せよ?」



挿絵(By みてみん) 袁術(えんじゅつ)

「もちろんザンス!

ミーは約束を破ったことはないザンス! いつの日か返すザンス!

だから気が変わらないうちに兵馬を受け取って

さっさと出ていくザンス!」



~~~揚州(ようしゅう)西部~~~



挿絵(By みてみん) 張昭(ちょうしょう)

「恐れ多くも陛下の所蔵される玉璽を、

袁術めなどにくれてやるとは!

孫策殿にはつくづく呆れ返ったぞ!」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「でもそのおかげで兵馬が手に入ったんだぜ」



挿絵(By みてみん) 張昭(ちょうしょう)

「たかだか兵馬と玉璽を引き換えにするとは、

それこそ正気の沙汰ではないわ!」



挿絵(By みてみん) 張紘(ちょうこう)

「玉璽が偉大なのではないぞ。

偉大なる陛下が持たれてこその玉璽なのだぞ。

陛下以外の誰が持っていようと同じことだぞ」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「そうそう。

袁術なら玉璽をさぞかし大事に保管してくれるだろうよ」



挿絵(By みてみん) 張昭(ちょうしょう)

「まったく……これがワシと『二張』と

並び称される者の言葉だろうか!」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「呆れちまったなら隠居生活に戻ってもいいぜ」



挿絵(By みてみん) 張昭(ちょうしょう)

「何をバカなことを! ワシの目が離れたら

諸君はより一層、好き勝手に振舞うに違いないわ!

特に孫策殿には教えなければならぬことが1000はあるのだ!

それを教え終わるまでは許さんぞ!」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「1000もあんのか……そりゃだりィな」



挿絵(By みてみん) 黄蓋(こうがい)

「若殿! よくぞ、よくぞ……。

この日を待ちわびていましたぞ!」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「久しぶりだな黄蓋!

そうか、袁術が貸してくれた兵の中にはお前もいたのか」



挿絵(By みてみん) 黄蓋(こうがい)

「若殿、いやもうそんな呼び方では失礼に当たる。殿!

我ら3千の寡兵とはいえ、全員が孫堅殿に鍛えられた一騎当千の兵!

必ずや殿の期待に応えてみせましょう!」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「叔父貴んとこには程普と韓当もいる。

これだけそろって負けるわけがねェよ!

さあ、劉繇退治に出陣だ!!」



~~~曲阿(きょくあ)~~~



挿絵(By みてみん) 劉繇(りゅうよう)

「ふむ? 孫静に袁術のもとから援軍が送られただと?」



挿絵(By みてみん) 太史慈(たいしじ)

「ああ。孫堅の子・孫策の率いるおよそ3千が孫静と合流し、

こちらに進軍してきている」



挿絵(By みてみん) 張英(ちょうえい)

「さ、3千だと。はっはっはっ!

たかが3千で我々と戦おうというのか!」



挿絵(By みてみん) 劉繇(りゅうよう)

「張英、そう笑っては気の毒だ。

彼らは命を賭して我々と戦お……さ、3千で、我々と戦お、ぶふぉ。

ぶふぉふぉふぉふぉふぉふぉふぉ!」



挿絵(By みてみん) 許劭(きょしょう)

「孫策という男、子供の頃に人相を見たが、

好戦的で野卑な印象を受けた。

どうやらそのまま大人になってしまったようだな」



挿絵(By みてみん) 劉繇(りゅうよう)

「ぶふぉふぉふぉふぉふぉふぉふぉ!

いやいや、笑ってばかりもいられんな。

張英、1万の兵を預ける。

孫策殿を丁重に出迎えて差し上げなさい」



挿絵(By みてみん) 張英(ちょうえい)

「さすがは殿、たった3千の兵にも礼を惜しみませんな。

私の自慢の珈琲で手厚くもてなしますとも!」



~~~牛渚(ぎゅうちょ)の要塞 孫策軍~~~



挿絵(By みてみん) 呉景(ごけい)

「見違えたな孫策!

よくぞ来てくれた。お前がいれば百人力だ!」



挿絵(By みてみん) 孫静(そんせい)

「だが劉繇という男、傲慢だが決して無能ではない。

1万もの大軍で迎撃に出てきたか」



挿絵(By みてみん) 張紘(ちょうこう)

「あわよくば我々を踏みつぶした勢いで、

そのまま揚州に攻め入ろうと考えているのだぞ」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「だったら踏みつぶされる前に、

こっちから踏みつぶしてやろうぜ!」



挿絵(By みてみん) 程普(ていふ)

「ええ。正々堂々と正面から打ち破ります。

旦那様はごゆるりとご見物ください」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「そうはいかねェぜ程普。これはオレにとって初陣なんだ。

オレが先頭切って戦わねェでどうすんだよ!」



挿絵(By みてみん) 韓当(かんとう)

「よく言った艦長!

背中は俺が守ってやるから安心して戦ってくれ!」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「これが孫家の新たな船出だ!

野郎ども、面舵いっぱい! 突撃するぜ!!」



~~~牛渚(ぎゅうちょ)の要塞 劉繇軍~~~



挿絵(By みてみん) 張英(ちょうえい)

「三倍の兵力の我々に対して正面攻撃だと!?

孫策め、気が違ったか」



挿絵(By みてみん) 太史慈(たいしじ)

「無策で向かってくるのは歓迎すべきだが……しかしご覧あれ。

孫策を迎えた孫家の兵の士気は、天を突かんばかりに高まっている。

あれと正面からぶつかるのは得策ではありますまい」



挿絵(By みてみん) 張英(ちょうえい)

「何を弱気なことをぬかすか!

これは袁術と戦う前の予行演習に過ぎん。

先鋒の樊能(はんのう)、于糜(うび)に迎撃させろ!」



挿絵(By みてみん) 太史慈(たいしじ)

(あれほど意気軒昂とした軍は見たことがない。

この戦い、ひょっとするとひょっとするぞ……)



~~~牛渚(ぎゅうちょ)の要塞前 戦場~~~



挿絵(By みてみん) 樊能(はんのう)

「我こそは劉繇軍にその人ありと知られた猛将・樊能だ!」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「オレこそは孫策軍の総大将・孫策だ!

いざ尋常に勝負しろや!」



挿絵(By みてみん) 樊能(はんのう)

「むう? 貴様、素手で俺と戦うつもりか?」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「素手じゃねェ。オレの右手はモリ、左手はイカリだ!」



挿絵(By みてみん) 樊能(はんのう)

「何を訳のわからんことを! 死ね孫策!!」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「モリの一撃、喰らいなッ!!」



挿絵(By みてみん) 樊能(はんのう)

「ぐふぉぉっ!?」



挿絵(By みてみん) 于糜(うび)

「し、手刀で樊能の首をえぐっただと!?」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「次はお前か!?」



挿絵(By みてみん) 于糜(うび)

「こ、こいつめ!」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「今度は左手、イカリが喰い込むぜェ!」



挿絵(By みてみん) 于糜(うび)

「ば、馬上で首絞めとは……がああああああ!」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「樊能と……ええと、誰だっけこいつ?

とにかく二将討ち取ったぜ!」



挿絵(By みてみん) 朱治(しゅち)

「徒手空拳で敵将を討ち取るとは……なんでもありだなうちの殿は」



挿絵(By みてみん) 黄蓋(こうがい)

「敵は泡を喰ったぞ! 蹴散らせえ!」



~~~劉繇軍~~~



挿絵(By みてみん) 張英(ちょうえい)

「は? 孫策が? 素手で? 二人を?

何を言ってるのだお前は! 寝言は寝てから言え!」



挿絵(By みてみん) 太史慈(たいしじ)

「いや張英殿。いまの伝令の報告がもし本当のことならば……」



挿絵(By みてみん) 張英(ちょうえい)

「本当のわけがあるか!

素手で樊能や于糜を殺せる奴がいるものか!」



挿絵(By みてみん) 太史慈(たいしじ)

「それではなぜ前衛は大混乱に陥っているのだ!

このままでは全軍が崩壊するぞ!」



挿絵(By みてみん) 張英(ちょうえい)

「むむむむむむむ」



挿絵(By みてみん) 太史慈(たいしじ)

「ここはいったん牛渚(ぎゅうちょ)の要塞に退却し、

態勢を立て直すべきだ。

兵力差を盾に籠城すれば……いや、遅かったようだな」



挿絵(By みてみん) 張英(ちょうえい)

「ああっ! ぎ、牛渚の要塞が燃えているぞ!

これはどうしたことだ太史慈!?」



挿絵(By みてみん) 太史慈(たいしじ)

「ただの正面攻撃ではなかったということだ。

孫策……恐るべき男だ」



~~~牛渚(ぎゅうちょ)の要塞~~~



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「おう! ご苦労だったな呂範、蒋欽!」



挿絵(By みてみん) 呂範(りょはん)

「孫策をおとりにしての、要塞への奇襲攻撃。

上手くいったものだな。

だが我々が要塞に火を放つより前に、敵は大混乱していたようだ。

何かあったのか?」



挿絵(By みてみん) 韓当(かんとう)

「聞いて驚くなよ!

艦長が素手で敵将を二人も討ち取ったんだ!」



挿絵(By みてみん) 蒋欽(しょうきん)

「おお! さすがは孫策どんでごわす!」



挿絵(By みてみん) 呂範(りょはん)

「……あいかわらず非常識なことだ」



挿絵(By みてみん) 張昭(ちょうしょう)

「何を喜んでおるか!

素手で戦場に臨むなぞ、君主のやることではないわ!」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「はっはっ。張昭みてェにごてごて鎧兜つけてたら

動きにくくってしかたねェからよ」



挿絵(By みてみん) 張昭(ちょうしょう)

「ワシは頭脳労働が務めだからな。

自ら槍をとって戦うことはない。

流れ矢への対策に防備を重点的に固めるのは当然だ。

……いやいや待て。

武器を持たないことの理由にはなっておらんぞ!」



挿絵(By みてみん) 程普(ていふ)

「つまり旦那様は鍛え上げられた肉体そのものが武器なのです」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「てェこった。

そんなことより、劉繇軍の様子はどうなってやがる?」



挿絵(By みてみん) 張紘(ちょうこう)

「全軍、本拠地の曲阿(きょくあ)まで退却したぞ。

今度は劉繇自ら報復に出てくるぞ」



挿絵(By みてみん) 孫策(そんさく)

「上等だ。まとめて蹴散らしてやろうぜみんな!」



挿絵(By みてみん) 挿絵(By みてみん) 挿絵(By みてみん) 挿絵(By みてみん)

「「「「おう!!!!」」」」



~~~~~~~~~



かくして孫策は初陣を大勝利で飾った。

だが南の名族・劉繇もこのままでは引き下がらない。

妖しげな怪人物と手を組み、反撃の機会を虎視眈々と窺っていた。


次回 〇二二   江東の小覇王

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