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アイコン三国志  作者: 小金沢
第十章 秋風五丈原
PR
105/126

一〇四   獅子身中の虫

~~~魏 洛陽~~~



挿絵(By みてみん) 曹叡(そうえい)

「曹真君が倒れただって?」



挿絵(By みてみん) 劉曄(りゅうよう)

「蜀軍を相手に心労を重ねていた。図太い男だが限界を迎えたのだろう」



挿絵(By みてみん) 孫資(そんし)

「先にはワタシの同郷の郝昭(かくしょう)も亡くなりま~した。

蜀軍との戦いの厳しさがわかりま~すな……」



挿絵(By みてみん) 鍾繇(しょうよう)

「残念じゃがワシらは次のことを考えねばならん。

曹真の抜けた穴は空けられんぞ。後任は誰にするのじゃ?」



挿絵(By みてみん) 曹叡(そうえい)

「迷うことはない。司馬懿君に任せよう」



挿絵(By みてみん) 華歆(かきん)

「し、司馬懿殿ですか……。

そ、そのなんと申しますか。彼の知略は問題ありませんが、性格にいささか問題が……」



挿絵(By みてみん) 劉曄(りゅうよう)

「そんなことは誰もが知っている。

張郃や杜襲が脇を固めていれば問題あるまい。不安ならば私も行こう」



挿絵(By みてみん) 鍾繇(しょうよう)

「おっ。久々に戦場が恋しくなったのか?

腰痛がなければワシが行きたいところじゃがな!」



挿絵(By みてみん) 劉曄(りゅうよう)

「遊びに行くわけでも政務が嫌になったわけでもない。国のためにやるだけだ」



挿絵(By みてみん) 蒋済(しょうせい)

「待ってください。司馬懿の性格なら友人の俺が熟知しています。

そういうことなら俺が――」



挿絵(By みてみん) 劉曄(りゅうよう)

「やめておけ。友人のお前が行けば司馬懿はお前に全面的に依存するだろう」



挿絵(By みてみん) 蒋済(しょうせい)

「……あいつの性格をよくご存知で」



挿絵(By みてみん) 劉曄(りゅうよう)

「それに老人ばかりが都に残るのはよろしくない。若い君は残りたまえ。

……いや、これは失言だったな。忘れてくれ諸君」



挿絵(By みてみん) 鍾繇(しょうよう)

「お前が無礼なのは誰もが知っとるわ!」



~~~魏 長安~~~



挿絵(By みてみん) 司馬懿(しばい)

「さささささ早速蜀軍が四度目の遠征軍を出してきました!

みみみみみみなさんには謝らなくてはいけません!

わわわわわ私が指揮官になったせいで死ぬことを!」



挿絵(By みてみん) 杜襲(としゅう)

「戦う前から不吉なことを言うな。士気が下がる」



挿絵(By みてみん) 戴陵(たいりょう)

「はっはっはっ。この旦那のネガティブぶりは都の子供だって知ってるぜ。

今さらなんとも思わねえよ」



挿絵(By みてみん) 司馬懿(しばい)

「恐れ多い! 国家の将来を担うべき都のお子様方にまで

私ごときの存在が知られているなんて!

穴があったら入って埋まって土に帰って虫けらか何かに生まれ変わりたい……」



挿絵(By みてみん) 劉曄(りゅうよう)

「話が進まん。蜀軍は例によって祁山(きざん)に本陣を置き、

陳倉(ちんそう)に進出しているのだったな」



挿絵(By みてみん) 孫礼(そんれい)

「はい。前回のようなウガアアアッ!作戦はとらず、

我々の出方をギャアアアオ!っているようです」



挿絵(By みてみん) 郭淮(かくわい)

「電撃作戦はとらず、出方をうかがっているようであります」



挿絵(By みてみん) 張郃(ちょうこう)

「陳倉をめぐり以前とは逆の立場になったな。

どうする? 素直に陳倉を攻めるか」



挿絵(By みてみん) 杜襲(としゅう)

「諸葛亮ならば城に爆弾や落とし穴を仕掛けるかもしれん。

それに付き合う必要はあるまい」



挿絵(By みてみん) 楽綝(がくちん)

「ならば持久戦か」



挿絵(By みてみん) 魏平(ぎへい)

「曹真将軍は蜀軍に前線を突破されないことを第一義にしていた。

持久戦に持ち込めば兵站に問題を抱える奴らは、手もなく撤退するだろうよ」



挿絵(By みてみん) 劉曄(りゅうよう)

「うむ。我々も曹真の作戦を踏襲する。それでいいな司馬懿」



挿絵(By みてみん) 司馬懿(しばい)

「滅相もない!

皆々様方がそう仰るというのに私に異議があるものでしょうか!」



挿絵(By みてみん) 劉曄(りゅうよう)

「ああ。形式的に聞いただけだ。

蜀軍への警戒を厳にしろ。行け」



~~~蜀 北伐軍~~~



挿絵(By みてみん) 李恢(りかい)

「……長雨のせいで兵糧輸送が遅れたと、そう言うのだな?」



挿絵(By みてみん) 句安(こうあん)

「へいへい。全くその通りでやんす。

まるで天の底が抜けたかのような大雨でやんして、

大事な大事な兵糧を濡らしてはいけないと、

あちきは屋根の下に息を潜めて、雨がやむのを待っていたでやんす」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「馬鹿め。雨など降ってはおらぬ」



挿絵(By みてみん) 句安(こうあん)

「これはこれは右将軍……いや、

前回の北伐の功績で丞相に返り咲かれたでやんしたな。

いくら丞相のお言葉でも、降ったものを降っていないとは言えないでやんすよ」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「余人はともかくこの余をたばかれると思ったか。

雨は降っておらぬ。余が降らせなかったのだからな」



挿絵(By みてみん) 句安(こうあん)

「…………へ?」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「まだ疑うのならば貴様の補給部隊に密かに同行させた

諸葛均の報告書を見せてやろう。読め黄月英」



挿絵(By みてみん) 黄月英(こうげつえい)

「はいです。○月×日。快晴。今日も苟安は酒を飲んでサボっていた。

○月△日。快晴。今日も苟安は芸者を呼んでどんちゃん騒ぎ。

○月□日。快晴。今日も苟安は昼寝を――」



挿絵(By みてみん) 句安(こうあん)

「あわわわわわわわ」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「殺せ」



挿絵(By みてみん) 黄月英(こうげつえい)

「はいです。殺すです」



挿絵(By みてみん) 李恢(りかい)

「お、お待ちください!

たしかに苟安の罪は重いですが、彼は兵站を担当する李平の腹心です。

彼を斬れば李平の面目は丸つぶれとなります!」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「で?」



挿絵(By みてみん) 李恢(りかい)

「う…………」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「それで? それがどうかしたのか?」



挿絵(By みてみん) 李恢(りかい)

「り、李平がもし苟安の処刑を不服として魏に寝返るようなことがあれば、

我々は窮地に立たされます。この場はどうか怒りをお鎮めください!」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「フン。ご高名であらせられる李恢殿に

そうまで言われては顔を立てざるをえないな」



挿絵(By みてみん) 李恢(りかい)

(心にもないことを……)



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「よかろう。この場は処刑をとりやめてやる。

だが代わりに百叩きの刑に処する。死ななければよいな」



挿絵(By みてみん) 句安(こうあん)

「ひ、ひいいいいいいい!!」



~~~魏 司馬懿軍~~~



挿絵(By みてみん) 杜襲(としゅう)

「……で、お前は魏に降ることにしたというのか」



挿絵(By みてみん) 句安(こうあん)

「へ、へい。諸葛亮へのこの恨み、晴らさでおくべきかでやんす!」



挿絵(By みてみん) 魏平(ぎへい)

「絵に描いたような逆恨みだな」



挿絵(By みてみん) 劉曄(りゅうよう)

「いずれにしろこの男は使える。苟安と言ったな。

お前は成都(せいと)に戻り、流言飛語を流せ」



挿絵(By みてみん) 句安(こうあん)

「は? モクギュウリュウバ?」



挿絵(By みてみん) 劉曄(りゅうよう)

「諸葛亮が謀叛を企み、遠征軍を率いて成都へ攻め上がるという噂を流すのだ」



挿絵(By みてみん) 句安(こうあん)

「それはお安い御用でやんす!

主人の李平様も抱き込んで大々的に噂を流すでやんすよ!」



挿絵(By みてみん) 張郃(ちょうこう)

「……しかし諸葛亮に劉禅は絶大な信頼を寄せていると聞くぞ。

はたしてそのような噂を信じるだろうか」



挿絵(By みてみん) 孫礼(そんれい)

「私が聞くところ、信頼というよりもあれはウオォォォン!

失礼、諸葛亮に全てを丸投げしているだけだと思われます。

劉禅はともかくも周囲には諸葛亮の権力が大きすぎることを

懸念している者もいるでしょう。……それにしても生肉が食べたい」



挿絵(By みてみん) 戴陵(たいりょう)

「おめえ、虎の呪いが悪化してねえか?」



挿絵(By みてみん) 劉曄(りゅうよう)

「そうだ。劉禅ではなく周囲の誰かが信じればよいのだ。

――司馬懿、それでいいな」



挿絵(By みてみん) 司馬懿(しばい)

「はッ! そのようにはからってください!」



~~~蜀 北伐軍 先鋒~~~



挿絵(By みてみん) 関興(かんこう)

「ッ!!」



挿絵(By みてみん) 廖化(りょうか)

「関興! 深追いはやめろ!」



挿絵(By みてみん) 陳到(ちんとう)

「魏軍は消極的だ。

兵を動かしても小競り合いだけにとどめ、すぐに退却してしまう。

下手に追撃し藪をつついて蛇を出すようなことは避けるべきでござろう」



挿絵(By みてみん) 関興(かんこう)

「………………」



挿絵(By みてみん) 高翔(こうしょう)

「張苞の分までがんばりたいって気持ちはわかるが、無理は禁物だぞ」



挿絵(By みてみん) 関興(かんこう)

「………………」



挿絵(By みてみん) 王平(おうへい)

「かーーっ! 張苞がいねえと話が通じてるのかどうかもわからねえな!

関羽さんってのもこんな感じだったのか?」



挿絵(By みてみん) 廖化(りょうか)

「いいや、もっと無表情だった。…………関羽将軍。

関羽将軍!! ううっ……」



挿絵(By みてみん) 張翼(ちょうよく)

「ああ、また泣き出した! 廖化の前でそれは禁句だと言ったでしょう!」



挿絵(By みてみん) 関興(かんこう)

「………………」



挿絵(By みてみん) 呉班(ごはん)

「おやおや関興さん? それって……アンタさん、吐血してはいやせんか?」



挿絵(By みてみん) 呂義(りょぎ)

「ど、どこか斬られたのか!?」



挿絵(By みてみん) 呉懿(ごい)

「いいえ。外傷はありませんね。お怪我ではなくご病気ではないでしょうか」



挿絵(By みてみん) 馬忠(ばちゅう)

「見たところ負傷はしていないな。どこか身体が悪いのではないか」



挿絵(By みてみん) 王平(おうへい)

「馬忠の言う通りだ。おい、急いで関興を医者に診せな!」



挿絵(By みてみん) 張嶷(ちょうぎょく)

「楊儀」



挿絵(By みてみん) 楊儀(ようぎ)

「は? 私は医者ではなく学者だぞ」



挿絵(By みてみん) 廖化(りょうか)

「魏延の身体をあちこちいじってるじゃないか! とにかく早く診察しろ!」



挿絵(By みてみん) 楊儀(ようぎ)

「い、医者と学者を一緒にするな!」



挿絵(By みてみん) 関興(かんこう)

「………………」



~~~蜀 北伐軍~~~



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「ほう。劉禅から全軍撤退の命令が来ただと」



挿絵(By みてみん) 黄月英(こうげつえい)

「本物の命令書です。玉璽が逆さに捺されてるです」



挿絵(By みてみん) 李恢(りかい)

「むむむ……。

劉禅陛下のことですからろくに目も通さずに捺されたのでしょうが……。

蔣琬(しょうえん)や費褘(ひい)らは何をしているのだ!

いずれにしろ命令は命令です。無念ですが引き上げる他ありますまい」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「馬鹿め。蔣琬も費褘もお手柄だ。

全ては余の思うままに進んでおる」



挿絵(By みてみん) 李恢(りかい)

「へ?」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「こたびの北伐は膿を出すことにあった。

これからが本当の戦いだ。成都に戻り獅子身中の虫を殺せ」



挿絵(By みてみん) 李恢(りかい)

「だ――誰のことを言われているのですかな?」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「クックックッ……。戻ればわかる」



~~~魏 司馬懿軍~~~



挿絵(By みてみん) 劉曄(りゅうよう)

「追撃はするな」



挿絵(By みてみん) 張郃(ちょうこう)

「これは劉曄殿の言葉とも思えん。

全軍撤退を始めた今をおいて蜀軍に決定的な打撃を与えられるとでも?」



挿絵(By みてみん) 劉曄(りゅうよう)

「蜀軍は苟安の流言によって帰還するだけだ。

兵力は損耗していないし、士気も落ちていない。

下手をすれば我々のほうが痛い目にあう。それに――」



挿絵(By みてみん) 杜襲(としゅう)

「ああ。あまりに蜀軍は整然としすぎている。

まるで撤退命令が下されることをずっと前から承知していたようにな」



挿絵(By みてみん) 司馬懿(しばい)

「た、たしかに私などがもし陛下から突然の撤退命令をいただいたら、

首をはねられるのか拷問にかけられるのか、

良くて権力を奪われ平民に落とされるのかと、戦々恐々としてしまうでしょうな!」



挿絵(By みてみん) 戴陵(たいりょう)

「あんたはいつでも戦々恐々としてるじゃねえか」



挿絵(By みてみん) 張郃(ちょうこう)

「……軍師殿らの意見は伺った。

だが軍人として敵の背中を指をくわえ眺めているのは耐え難い。

俺の手勢だけでも追撃を掛けさせてもらう」



挿絵(By みてみん) 杜襲(としゅう)

「……曹真将軍がいない今、この場で最も地位が高いのはお前だ。

お前がそこまで言うのならば、誰も止めはせんよ」



挿絵(By みてみん) 孫礼(そんれい)

「ウガアアアアッ! 将軍の手勢だけでは無謀です!

見殺しにはできません。俺もお供をいたす!」



挿絵(By みてみん) 郭淮(かくわい)

「及ばずながら本官も力添えを――」



挿絵(By みてみん) 張郃(ちょうこう)

「待てい!」



挿絵(By みてみん) 孫礼(そんれい) 挿絵(By みてみん) 郭淮(かくわい)

「「!!」」



挿絵(By みてみん) 張郃(ちょうこう)

「戦う前から死は覚悟しても、敗北した時のことを考えるのは愚かだ。

俺はいつでも勝つために戦っている! 人それを『祈り』と呼ぶ」



挿絵(By みてみん) 魏平(ぎへい)

「……いちおう何者だって聞いたほうがいいのかな」



挿絵(By みてみん) 張郃(ちょうこう)

「お前たちに名乗る名は無い!

後を頼んだぞ。トォォウ!!」



挿絵(By みてみん) 楽綝(がくちん)

「……ご武運を」



~~~蜀 木門道(ぼくもんどう)~~~



挿絵(By みてみん) 姜維(きょうい)

「暫時待て」



挿絵(By みてみん) 張郃(ちょうこう)

「む。俺のセリフを横取りした貴様は……姜維だな。

殿軍として立ちはだかるか。

ならば天水の麒麟児とうたわれたその力、見せてもらおう!」



挿絵(By みてみん) 姜維(きょうい)

「魏にその人ありと響いた実力……。偽りに非ずか」



挿絵(By みてみん) 張郃(ちょうこう)

「お前のほうこそ噂に違わぬ剣さばきだ。

だがこれが受けられるか! ゴッドハンドスマ――」



挿絵(By みてみん) 姜維(きょうい)

「しばし別れの時を刻もう」



挿絵(By みてみん) 張郃(ちょうこう)

「なに? 逃げるのか姜維! 待てい!」



挿絵(By みてみん) 魏延(ぎゑん)

「オォォォォォォォォン!!」



挿絵(By みてみん) 張郃(ちょうこう)

「あれは――魏延か!

俺のお株を奪い、次々と新手を繰り出すつもりか。来い魏延!」



挿絵(By みてみん) 魏延(ぎゑん)

「ウァァァァァァァァア!!」



挿絵(By みてみん) 張郃(ちょうこう)

「なるほど、まるで野生の獣を相手にしているようだ!

だが鍛え抜かれた俺の奥義を、反射神経と勘だけでかわし切れるかな!」



挿絵(By みてみん) 楊儀(ようぎ)

「もう十分だギヱン! 引き上げろ!」



挿絵(By みてみん) 張郃(ちょうこう)

「またしても戦い半ばで矛を収めるか……。

どうやら俺を誘い込もうとしているようだな。

だが蜀に俺と互角に打ち合える将はそう多くはあるまい。

さあ、次はどいつだ!?」



挿絵(By みてみん) 関興(かんこう)

「………………」



挿絵(By みてみん) 張郃(ちょうこう)

「関羽の息子か!

…………む? お前、どこか病んでいるな?

下がれ! この張郃、病床の人間と戦う剣は持ち合わせていない!」



挿絵(By みてみん) 関興(かんこう)

「…………ッ!」



挿絵(By みてみん) 張郃(ちょうこう)

「病人だろうと向かってくるならば容赦はせんぞ!

人それを『決意』と呼ぶ!」



挿絵(By みてみん) 関興(かんこう)

「ッ!」



挿絵(By みてみん) 姜維(きょうい)

「やはりその身体では無謀だ。つむじ風を背負い撤退しろ。

後は私と魏延が引き受ける。あの丘の風に吹かれながら……」



挿絵(By みてみん) 関興(かんこう)

「………………」



挿絵(By みてみん) 張郃(ちょうこう)

「そうやってこまめに交代し、俺を疲れさせる算段か?

無駄だ。その前に剣狼がお前の首を刎ねる!

喰らえッ! バーストキィィィック!!」



挿絵(By みてみん) 姜維(きょうい)

「自壊せよロンギヌスの黒猫。一読し、焼き払い、自ら首を刎ねるがいい。

覇道の九――撃」



挿絵(By みてみん) 張郃(ちょうこう)

「それがお前の奥義か! 笑止!!」



挿絵(By みてみん) 姜維(きょうい)

「くっ…………!」



挿絵(By みてみん) 楊儀(ようぎ)

「ま、まずい! 姜維と病み上がりの関興ではあいつに敵わないぞ!

ギヱンよ再起動しろ!」



挿絵(By みてみん) 魏延(ぎゑん)

「ガァァァァァァァァオ!!」



挿絵(By みてみん) 張郃(ちょうこう)

「ゴッドハンドファイナル!!

お前たちの技はすでに見切った! 俺には通用しない!」



挿絵(By みてみん) 廖化(りょうか)

「姜維たち三人がかりでも敵わないのか!?

かくなる上は俺も加勢に――」



挿絵(By みてみん) 馬忠(ばちゅう)

「やめろ! 我々では力不足だ。かえって姜維らの足手まといになる」



挿絵(By みてみん) 王平(おうへい)

「だからってこのまま見殺しにはできねえぜ!

なんとか一瞬でも隙を作れれば――」



挿絵(By みてみん) 関興(かんこう)

「ッッ!!」



挿絵(By みてみん) 張郃(ちょうこう)

「む!? な、なんのつもりだ!」



挿絵(By みてみん) 張嶷(ちょうぎょく)

「関興!」



挿絵(By みてみん) 張翼(ちょうよく)

「か、関興が捨て身で張郃に飛びかかったぞ!!」



挿絵(By みてみん) 張郃(ちょうこう)

「ゴッドハンドスマッシュ!!

――ぐうっ!!」



挿絵(By みてみん) 姜維(きょうい)

「隙、有りだ」



挿絵(By みてみん) 陳式(ちんしき)

「か、関興が迎撃された隙に姜維が一撃を入れた……!!」



挿絵(By みてみん) 張郃(ちょうこう)

「…………そうか。すでに命を捨てるつもりだったか。

あたら若い命を捨てるとは愚かな……。

だがその覚悟……人、それを『勇気』と呼ぶ……」



挿絵(By みてみん) 関興(かんこう)

「…………………」



挿絵(By みてみん) 廖化(りょうか)

「やった! 関興がやったぞ! は、早く医者の元へ運ぶんだ!」



~~~蜀 成都 玉座の間~~~



挿絵(By みてみん) 劉禅(りゅうぜん)

「あれ? 諸葛亮なんで帰ってきたの?

わしは勝ったとも負けたとも聞いてないけど?」



挿絵(By みてみん) 李平(りへい)

「まったくだ! せっかく俺様が兵糧を用意して送ってやろうとしてたのによ。

その矢先にのこのこ帰ってきやがって――」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「これを読め」



挿絵(By みてみん) 劉禅(りゅうぜん)

「これは……わしの命令書? なにこれ?

全軍撤退しろって命令したの? いつ? どこで?」



挿絵(By みてみん) 蔣琬(しょうえん)

「テッテレー! ドッキリ大成功~!!」



挿絵(By みてみん) 尹黙(いんもく)

「し、蔣琬殿! こ、今度は屋根をくり抜いて現れるとは――」



挿絵(By みてみん) 蔣琬(しょうえん)

「あれ、陛下は驚いてませんね?」



挿絵(By みてみん) 劉禅(りゅうぜん)

「だってそこに怪しいハシゴがあるし、

さっきからずっと天井にいるお前の足音が聞こえてたぞ」



挿絵(By みてみん) 蔣琬(しょうえん)

「あらら。急いで用意したから準備不足でしたね。

おじさん反省します。反省! 終了!」



挿絵(By みてみん) 董允(とういん)

「それで蔣琬殿。陛下が撤退命令を下されたなど、私も聞いておりませんぞ。

これはどういうわけですかな」



挿絵(By みてみん) 費禕(ひい)

「それは拙僧から説明いたそう」



挿絵(By みてみん) 劉禅(りゅうぜん)

「おっ。費褘じゃん。今日は珍しく朝議に出席してるんだ」



挿絵(By みてみん) 費禕(ひい)

「喝! 名ばかりの軍議になど拙僧が出るまでもない。

だが諸葛亮丞相がおられるなら話は別だ」



挿絵(By みてみん) 郭攸之(かくゆうし)

「単にサボっていることを偉そうに言うな……」



挿絵(By みてみん) 費禕(ひい)

「陛下は以前、食事中に裁決をいただいた書類を覚えておられるかな。

餓鬼道に堕ちた亡者のように、晩餐を意地汚く平らげておられた時に」



挿絵(By みてみん) 劉禅(りゅうぜん)

「あーあー。お前と蔣琬が持ってきたヤツか。

なんだっけ。風呂場の扉が壊れたから直したいとかなんとか。

ご飯中にうるさいから玉璽をポンと適当に捺したけど」



挿絵(By みてみん) 費禕(ひい)

「南無三! あれが全軍撤退命令書です」



挿絵(By みてみん) 譙周(しょうしゅう)

「へ?」



挿絵(By みてみん) 費禕(ひい)

「丞相の指示により、拙僧と蔣琬が

こっそりと裁決をいただいたのだ。迷わず成仏されよ」



挿絵(By みてみん) 来敏(らいびん)

「し、諸葛亮丞相! これはいったいどういうことじゃ!?」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「馬鹿め。それは余の台詞だ。

聞いての通り全軍撤退命令は余が自ら出したものだ。

それだというのに成都に戻る道すがら、こんな世迷い言を漏れ聞いたぞ。

曰く、余が謀叛を企み北伐軍を率い成都に攻め上がるとな」



挿絵(By みてみん) 劉禅(りゅうぜん)

「わっはっはっ! それわしも聞いたぞ! 馬鹿な話だよな~。

諸葛亮がその気になれば北伐軍なんか動かさなくても、

指一本でわしを殺せるのにさあ。

だいたいパパが死ぬ前に、諸葛亮に帝位を譲るって言ってるんだよ。

それを断っといて、なんで今さら謀叛しなくちゃいけないのさ」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「そこの無能の言う通りだ。

余はわざわざ謀叛など企まぬ。撤退命令も余が下したものだ。

それなのに浅はかにも、余の謀叛を恐れ、

劉禅が撤退させたという噂を流した愚か者がおる」



挿絵(By みてみん) 黄月英(こうげつえい)

「諸葛均に調べさせたです。噂の出どころは李平の腹心の苟安です」



挿絵(By みてみん) 李平(りへい)

「ぐぬぬ……」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「余を失脚させる好機とでも思ったか? 馬鹿め。罠に嵌ったのは貴様だ。

――ついでに来敏。貴様は噂を積極的に広めたそうだな」



挿絵(By みてみん) 来敏(らいびん)

「んぐっ! いや、それはその……。

丞相ならばやりかねないと、そのくらいは言ったかもしれんが……」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「李平、苟安、来敏を殺せ」



挿絵(By みてみん) 黄月英(こうげつえい)

「はいです。殺すです」



挿絵(By みてみん) 李恢(りかい)

「れ、例によってお待ちください!

苟安はともかく李平も来敏殿も、先帝(劉備)が厚く信頼した人物です。

これまでの功績を鑑み、死罪だけはなにとぞ考え改めください!」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「また貴様か。減刑ばかり嘆願しおって、後世で人格者と褒められたいのか?

無駄だ。貴様はただのむむむ男だ」



挿絵(By みてみん) 李恢(りかい)

「む……むむむ……」



挿絵(By みてみん) 劉禅(りゅうぜん)

「諸葛亮、わしからも頼むよ。

しょっちゅう顔を合わせてたこいつらが殺されたら目覚めが悪いじゃん。

それに玉座の間を汚されても困るし」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「フン。李恢はどうでもいいとして、皇帝陛下サマに頼まれては否とは言えぬな。

李平、来敏は平民に落とす。苟安は殺せ」



挿絵(By みてみん) 黄月英(こうげつえい)

「はいです。殺してくるです」



挿絵(By みてみん) 李平(りへい)

「ちきしょう……」



挿絵(By みてみん) 来敏(らいびん)

「わ、わしの老後設計が……」



挿絵(By みてみん) 向寵(しょうちょう)

「--・-・・・----・・・・---・-・・・・・-・・・・・-(自業自得)」



~~~蜀 成都~~~



挿絵(By みてみん) 黄月英(こうげつえい)

「苟安はとっくに逃げてたです。魏にでも降ったみたいです」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「そんな小者はどうでもよい」



挿絵(By みてみん) 黄月英(こうげつえい)

「あと帰ってくる途中に李恢にこれを渡されたです。辞職願です。

胃が溶けて無くなる前に辞めたいそうです」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「好きにしろ」



挿絵(By みてみん) 楊儀(ようぎ)

「まったく、なんで私がこんな

使いっ走りのようなことをさせられなければならんのだ……。

こうしている間にも私の偉大なる頭脳が浪費され――あ、丞相!

ご、ご報告に上がりました!」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「李恢の辞職なら聞いた。消えろ」



挿絵(By みてみん) 楊儀(ようぎ)

「へ? 李恢殿が辞職?

い、いえ。私が報告に上がったのは、関興が亡くなったという――」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「そうか。消えろ」



挿絵(By みてみん) 楊儀(ようぎ)

「は、はあ。失礼いたしました!」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「いや、待て。ちょうどいい。李恢の後任は貴様だ」



挿絵(By みてみん) 楊儀(ようぎ)

「――――え?

わ、私が、あの、李恢殿の代わりに、丞相の、直属の側近に!?」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「李恢の代わりなど誰でも務まる。やれ」



挿絵(By みてみん) 楊儀(ようぎ)

「かしこまりました! み、見たか!

丞相は私の卓越した頭脳を買ってらしたのだ! うははははは!!」



挿絵(By みてみん) 黄月英(こうげつえい)

「すごい浮かれようです。まるで馬謖二世です」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「フン。馬謖よりはマシだ。

そんなことよりも第五次北伐の準備を手配しろ」



挿絵(By みてみん) 黄月英(こうげつえい)

「はいです。

……あれ? です。これは楊儀の仕事です」



挿絵(By みてみん) 諸葛亮(しょかつりょう)

「連れ戻してこい」



挿絵(By みてみん) 黄月英(こうげつえい)

「はいです。首に縄かけて引きずってくるです」



~~~~~~~~~



かくして諸葛亮は成都に巣食う病原を排除した。

一方で若武者たちを失い、蜀の戦力はさらに落ちていく。

その頃、呉が虎視眈々と魏の隙を窺っていた。


次回 一〇五   合肥新城の戦い

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