〇〇〇 張角三兄弟
~~~山中~~~
「むう……。木の実を探していたらこんな山奥まで来てしまった。
全く、毎日の食べる物にも事欠く始末だ。
飢饉はいつまで続くのやら……」
「張角……………………。
張角よ……………………」
「んん? 誰だ、我を呼んでいるのは」
「張角よ。こっちだ。こっちに来い。
お前に良い物をやろう」
「良い物だと? 食えるのならばなんでもよいぞ」
「食えはせん。だがお前の助けになるだろう」
「なんだ、この薄汚い本は?」
「火を起こし、風を呼び、水を落とす……。
これを読めば、様々な術を身につけることができる。
使い道はお前に任せよう」
「ほほう、それはすごいな(金儲けに使えそうだ……)」
「だが忘れるな張角よ。
私利私欲で術を用いれば、必ずや報いが訪れるだろう。
我が名は南華老仙……。
お前たちの行く末を見守っているぞ……」
「おお、ジジイが消えてしまった。
さてはあれが噂に聞く仙人というヤツだな。
それにしても良い物をもらった。
これを使えば……。ひひひひひ」
~~~張角兄弟の家~~~
『お帰り兄者。食べられる物は見つかったか?』
「弟たちよ、食べ物よりもっと素晴らしい物を手に入れたぞ。
ようやく我らにも運が回ってきたのだ!」
『読むと妖術が使えるようになる本?
兄者、それは本当か?』
「ああ、帰り道で試してみたから間違いない。
弟たちよ、これを使い我がどうやって金を儲けるかわかるか?」
『妖術を見せ物にするとか……』
「そんなことでは、はした金しか稼げんぞ。
よいか、我は妖術を操る教祖となり、教団を作るのだ!
そして信者を集めて巨万の富を築くのだ!!」
『さすが兄者! 俺たちにできないことを平然とやってのける!
そこにシビれる! 憧れるう!!』
~~~??~~~
「やはり私腹を肥やすことに使ったか。
人の子の考えることは皆同じだな。
報いはいつでも与えられる。
今しばらく様子を見てみるとしよう……」
~~~~~~~~~
かくして張角は、黄色い布を旗印とした黄巾党を立ち上げた。
圧政への不満を抱いていた民衆の共感を呼び、
瞬く間に黄巾党は中国全土に広がった。
そして一斉に武装蜂起した彼らは黄巾賊と呼ばれ、さらなる戦乱を招くのだった……。
次回 〇〇一 桃園の誓い