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40 双子再び

お読みくださり、ありがとうございます!

 パーチメント伯爵家の双子にまたもやや強引に押し切られたカトリーは、グレイ伯爵家の自宅にジゼルとヘレンを招いた。


 昼食を一緒にしてから時間も経っていて、直接会う機会はなかったが手紙のやり取りをしてそれなりに交流は深めている。

 強引に押し切られたといっても、カトリーにとって初めてまともに友人と呼べるような関係になった友人なので、甘くなってしまうのは仕方がない。


 リサの体調の方も落ち着いていて、ジゼルとヘレンを招いても大丈夫だということや、リサ自身も娘の友人に会いたいと望んだことも大きい。


 リサに関して言えば、使用人たちが戻って来たことや、二年間の静養によるところが大きいらしくここのところ体調を崩すことはなく、以前よりも元気に屋敷を動き回ってはカトリーと使用人たちに心配されていた。


 今回はデイジーの予定が合わなかったため、双子の付き添いはフランになった。


 フランが同行していないと代わりに医者を旅に同行させなくてはならないディオは、その間(いえ)でじっとしていたくないとフランについて行くことにする。


 すぐに合流出来る距離にいられるなら、ディオたちがグレイ伯爵家にお邪魔する必要はないのだが、ディオたちが近くまで来ると知ったリサとカトリーの好意でお邪魔させてもらうことになった。


 グレイ伯爵家に着いて早々、挨拶もそこそこにカトリーはジゼルとヘレンを庭に連れて行くのでフランはそれに着いて行った。


 使用人たちはディオたちが、リサやカトリーに再び引き合わせてくれたと知っているのでやや歓迎っぷりが凄かった。

 王子や侯爵家の子供だからではなく、心からの感謝での歓迎なのでディオたちは苦笑しながらも、歓迎を受けた。


「前に見た時よりも花が増えてる?」


 カトリー、ジゼル、ヘレンと庭に向かったフランが庭を見てそう零す。

 しっかりと覚えているわけでもないが色数が増えているような気がする。


「はい!トムとディランが張り切っているから」

「へぇ、なるほど」


 弟子の作った作品とはいえ、憧れだったらしいガーデン用のハサミを手に入れ、そこにリサが帰って来たのだ。張り切らない理由がない。


 城の庭園と比べることは出来ないが、伯爵という爵位で考えればかなり上等な庭であるとフランは思う。

 詳しくは分からないが、ディオたちと商人として各地を回って少しくらいは見る目は鍛えられている。シドの懇切丁寧な説明ありきではあるが。


 ジゼルはキョロキョロと庭を見ては不思議そうにしている。どうにも自宅の敷地内に庭があることが新鮮で仕方がないようだ。

 ヘレンは花にかけらも興味はなさそうではあったが、妖精の寝床があるかも知れないと注意深く庭を見ていた。


 どちらも純粋な楽しみ方はしていないのだが、元々の目的が妖精について知ることなのでこうなってしまう。

 デイジーがこの場にいれば呆れていたかも知れないが、フランなので多少野放しにされている。


「なんとなく手入れは行き届いてるのはわかるけど、どこが妖精の寝床なのよ」

「生命力溢れる植物……こんなことなら薬学も学ぶべきだったね」


 妖精について学ぶ過程で人間に及ぼす影響を知るために人間の身体については医者と同程度の知識は学ぶが、生命力溢れるものが寝床になるのだと植物については特に知識はないのだ。


 ジゼルとヘレンはフランならわかるのではないかと、フランに視線を向けるがフランは首を横に振った。

 少しくらいは見分けられるかも知れないが、専門的な知識は持っていない。薬の材料になるものなら目利きもまだ出来るのだが。


「ジゼル、ヘレン。研究から離れて」

「そう、だよね」


 フランの言葉に納得したジゼルはカトリーに一言謝ると、カトリーのお気に入りを教えて欲しいと言った。


 妖精についても、妖精に好かれるカトリーについても知りたい。後者は仲良くなって付き合う時間が長くなれば自然と達成出来るはずだと、ジゼルはこの時間をカトリーと仲良くするために使うと決める。

 フランとディオはいい例だ。


「カトリーヌさんのお気に入りはどれですか」

「それなら、あそこからみる景色が好きなんです」


 そう言ってカトリーは庭の中心部あたりにある東屋を指す。

 四方を庭に囲まれている東屋から見る庭は四つに区切られていてそれぞれ四季別に植物が植えられている。


「妖精がいるからなのか、庭師の腕がいいのか」


 卵が先か鶏が先かはわからないとヘレンが呟く。

 ただ、妖精が好みそうだとは思ったらしい。


「両方じゃない。そこにリサさんとカトリーちゃんがいるから」

「そうね」


 フランに返事をしてヘレンはカトリーの顔をジッと見つめて何か言いたそうにしていたが言葉にはしなかった。

 どうせ自分たちがいると妖精はそばに来ることはないのだ。いるかどうかなんて尋ねるだけ無駄なことだ。

 言いたいことをなんとなく感じ取ったカトリーは困った顔をしていた。


 それから、庭を一通り見て回るとタイミングを計っていたかのように使用人が軽食とドリンクを持ってきたので、カトリーたちは東屋で話に花を咲かせながら一休みをしていた。

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