41 悩むダニーと気楽な王子
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連絡なしでやってきたディオは、近くまで寄ったから顔を出したと言うことだった。
今日は城で催しがあるようで帰るつもりはないらしく、時間があるのならせっかく近くまで来たのだからとダニエルに会いに来たようだ。
「いいんですか、エルザ様に顔を見せなくて」
「う〜ん、ベル兄がね」
いとこの自分よりも家族に会いに行った方がいいのではないかとダニエルは思うのだが、ディオは困ったように笑う。
家に帰ってもいいのだが、ディオがいるとジークベルトが浮つきすぎて周囲に迷惑がかかることもあり、両親やもう一人の兄アルフレッドには悪いが顔を出さないつもりでいるらしい。
「まぁそれは否定出来ないですね」
ジークベルトのディオへの溺愛ぶりといったら笑うしかない程で、度々、両親や使用人たちを困らせている。
でもジークベルトが分かりやすく目立つだけで、きっと他の人たちもディオが帰れば浮ついているのだと思う。些細なミスが多くなったりもするから。
ただ、きちんと周りには隠し通せてるだけ、感情を隠すのはなんと言うか大人のマナーみたいな。そこに王家としての立場が入る。
ダニエルはそう思ってはいるが声には出さない。ディオが会いに来てくれた喜びは照れて素直に出せていないが滲み出ているけれど。
ディオがそれを知ったらなかなか帰ってこなくなって滅多に会えなくなってしまう気がするから。
「そういうこと」
「そういうことですか」
呑気に言うディオに小さくダニエルが笑ったので、ディオが理解できず首を傾げてシドたちに分かるかと目線で問う。
なんとなくわかる気がしたが、シドは首を横に振った。ダニエルが言わないことを教える必要はないと。
旅先で買って来たお茶をトリスが淹れて、ダニエルとディオの元に運び、甘い果物のような香りが漂う。
ディオが口をつけた後でダニエルも自分のお茶を飲み始めた。
「今回はどこにいって来たんですか」
「んー、国境沿いの港にね。あの辺りは珍しいものいっぱいあるから」
「それでこのお茶ですか」
コクリと頷いたディオは、エルザが好きそうでしょとダニエルに尋ねて、ダニエルは少しだけ迷って同意をする。
「見つけたからついでにね。アル兄と父様の誕生日プレゼントを探しに行ってたんだ」
「もうすぐですからね」
二週間後あたりにアルフレッドの、それから五日後に陛下の誕生日があり、誕生日が近いことから二人まとめて盛大に祝う。
去年は、旅先で買ったプレゼントを城に送って家には帰らなかったのだが、元気な姿を見せてくれるのが一番のプレゼントだと久しぶりに家に帰ったときお礼の言葉ととも言われてしまった。
すぐに寝てしまうことも含めかなり心配なのだろう。
「明後日渡しに行くつもり、ベル兄が乱入して壊れたら困るし」
「壊れやすいものなら、ジーク様がいない方がいいですからね」
ダニエルの声に棘が混じる。
かつて自分が作ったものをディオに見せに行った幼少期、ディオに飛びついたジークベルトのせいで壊された記憶が蘇る。
ディオもそれがわかったのか苦笑いをして、そこに会話の邪魔にならないように大人しくしていたトリスが口を開く。
「今思い出しましたがダニエル様、カトリーの誕生日はどうされるおつもりですか?」
「えっと、それはどういう……」
急なトリスの言葉にダニエルが聞き返すと、トリスは淡々とダニエルに伝える。
トリスはしばらくカトリーと一緒にいたからその時に知ったのだろう。
「来月の二十日はカトリーの誕生日です」
「そうなんだ。商会としてうちからも贈ろっかな」
ディオは呑気に言う。
お得意様だったのはベアトリーチェとシーダではあるが、きっとリサとカトリーはお得意様になるだろう。
それにダニエルのことや、妖精に好かれやすい家だから仲良くしておきたいという打算もある。
「定番なら王都で選んだ方がいいな」
「間違いのない店が多いからね」
ディオ自身、あまり人に贈り物をすることがないため、誕生日プレゼントといっても何がいいのかさっぱりで難しい顔をする。
まして、女の子となると余計に何が喜ばれるのか分からない。
「ひとまず見て回ってしかないか」
「そうですね」
「同性のトリスと、年の近いアルドの意見を参考に決めよう」
ディオが言ってシドもそうだなと納得する。
定番のものを贈るにしても、トリスはカトリーの好みを多少なりともわかるだろうし、子供の感覚としてならアルドの意見も参考にはなるだろう。ただし、貴族の子供と庶民(孤児)ではズレもあるかもしれないが。
「ディオ兄さ――いえ、シドさん。今日の予定は?」
「これから宿探しだ」
そこにダニエルがディオを呼びかけてやめて、シドに今日の予定を訪ねる。
シドがこれから宿をとるところだと言うと、ダニエルはうちに泊まっていってくれという。
「それなら、うちに泊まっていってください。僕もトリスさんの意見を聞きたいので」
婚約者となった相手に誕生日プレゼントを贈るのは、ダニエルとしても知ってしまった以上贈るつもりではあるのだが、同じ贈るのなら喜ばれるものがいい。
家の使用人に参考意見を求めてもいいのだが、それはそれでなんだか気恥ずかしいのでディオたちにこのまま力になってもらえると助かるのだ。
「迷惑にな――」
「なりませんし、させません!」
シドが迷惑になるからと断ろうとして、ダニエルがシドのセリフにかぶせて引き止める。
トリスのセンスが少し壊滅的でもカトリーの好みをこの中で一番わかっているのはトリスで、女の子、女性相手に喜ばれそうなものならフランがよく分かるだろうし、金額的なものはシドがよく理解しているだろう。
相談に乗ってもらうのにベストな人たちが揃っているのだ。逃すわけにはいかない。
それでもなお断ろうとするシドをディオが止める。
「ダニーがそういってるし、いいんじゃないかな。城にさえ連絡しなければどこにいても同じでしょ。シドたちだって休めるし」
「それはそうだが……」
「そうしてください」
「決まりだね」
ディオとダニエルに押し切られ、シドはため息をつきつつそれを了承し、アルドがシドの背中を優しく叩いた。




