ふたりの子どもと絵本
ある秋風薫る日曜日。
親友とその婚約者……もとい妻が屋敷に来た。ここの庭は観光地ではないのだが、あいつの妻はここの庭が気に入っているらしい。二人の娘も大分大きくなっていた。前に会ったときは赤ん坊だったのだから当然なのだが。
そんなことを思いながら紅茶を飲んでいると、娘が近づいてきてじぃっとこっちを見上げてくる。
「なんだ?」
「絵本読んで!」
にこにこと笑っている少女の手には絵本どころかなにもない。顔をしかめないようにしながらこの子の父親を見たが「読んでやれよ」という視線が返って来た。仕方なく少女を屋敷の図書室に連れていくことにした。
図書室に連れ込むと少女は、うわぁという感嘆の声を上げながら駆け出していった。その様子を見ながらため息を着くと、窓辺に置かれたソファに腰かけた。しばらくすると少女が一冊の絵本を携えて戻ってきた。
「これ読んで!」
少女が手渡して来た絵本にはサンタクロースの格好をした幼い少女が描かれていた。
“Santa Claus of spoiled”?
「甘えん坊のサンタクロース」か?
どんなサンタクロースだ……。
「お前英語がわかるのか?」
「わかあんない!」
はあ、ため息をついていると少女が膝によじ登ってきた。仕方ないので英語で書かれた絵本を適当に和訳して読んでやった。しばらくすると人の胸を枕にして少女は寝てしまった。
「おい」
声をかけても目覚める気配のない少女にまたため息をついた。ふと眼下の庭に目を向けると、一組の夫婦が寄り添い、談笑しながら花を眺めていた。
あいつら人に子どもを預けていちゃつきやがって……!
イラっと来ていると少女が「んぅ……」と妙に艶かしい声をあげながらすり寄ってきた。寝ぼけて、というか寝ているようだ。そういえば、誰かの体温を感じるのはいつ以来だろうか?
そんなことを考えているとなにもかもどうでもよくなり、体温の高い子どもの頭をゆっくりと撫でていた……。
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