継承/幸福
感動のフィナーレ!
ある晴れた日曜日の昼下がり。
わたしは広いテラスの椅子に座って本を開く。
待ち人は、まだ来ない……。
???
「なーに書いてるの?!」
部屋のパソコンに向かってなにかを打ち込んでいる彼の背中に飛びかかり、イスごとぎゅうっと抱き締める。そのまま手を伸ばしてマウスを操作すると、はじめから読み始めた。
「ちょ、ちょっと! こんなの書かないでよ! すごく脚色されてるし!」
ブツブツ言いながら読み進める姿を彼は笑いながら見ている。
「って、なにこの終わり方……趣味悪い。だいたいわたしたち喧嘩してもすぐ仲直りするから家出とかにならないし……」
二人はわりとよく喧嘩をするのだが、なぜか10分もしないですぐに仲直りしてしまう。怒鳴りあったかと思えば次の瞬間にはまた仲良くくっついてる。そんな2人はよく不思議がられていた。
「まあそう言うな。バッドエンドの悲恋モノの方が売れるんだ」
「売る気なの?! やだやだ二人の想い出をお金にかえないで!」
「わかったわかった」
「むう? 妙に簡単に引き下がったな?」
わたしは名探偵っぽい口調で彼の様子を伺う。
なぜ彼はこんなものを書いたのだろう?
なぜ結末をこうしたのだろう?
「……怖いの?」
「ん?」
「いつかこういう日がくるんじゃないかって」
「……かもね」
彼の手がカタカタと震えている。その手にわたしの手を重ねる。
「大丈夫。わたしはいなくならないわ」
すこしだけ大人びた口調で言ってみる。
「……うん」
まだ不安と信じたい気持ちとがない混ぜになっているようだったが、わたしは努めて明るく振る舞うことにした。
「はいはい、わかったらこんな駄文は消去消去! 完全に削除しますか? yesっと!」
「あっ、結構書くの苦労したのに……」
「いいの! さっ、お茶にするよ! 準備して!」
なんで自分の部屋から追い出されるんだ……とぼやく彼を追い出すと、パソコンの前に座ってメールを開く。
◆◆◆
ある晴れた日曜日の昼下がり。
僕とわたしは広い庭のテラスに座ってお茶をする。
待ち人はいない。
だって大好きな人は目の前にいるのだから。
僕とわたしは今、とても幸せです。
「送信っと」
「おーい、準備できたぞー?」
「はーい! 今いくー!」
どうか……
どうかこの幸せがいつまでも続きますように……。
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