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第九十一話 フェラー辺境伯領 五 いざダンジョンへ! 二

 (いく)つかのダンジョンが目の前に広がる中、ダンジョンで(かせ)ぎを()ている人達が洞窟(どうくつ)(よう)の入り口に吸い込まれて行きます。


「ここがダンジョンですか」

(ひさ)しぶりに見ましたが、ここは今まで見てきたところとはまた違いますね」


 そう言うのは緑がかった色の魔法使い風ローブを着るメアリーといつもと同じように戦士風の軽装(けいそう)をしているロバルトです。


 ここに最上級ダンジョンはありません。

 もう少し離れた所にあります。


 教会の出張所が(いく)つか隣にあり、目の前に洞窟(どうくつ)があるという何とも不自然な構造ですが、教会が回復魔法で(かせ)ぎを()ているということを考えると納得は行きます。

 これはこの領地のみならず他のダンジョンでも言えることで『ダンジョンあるところに教会あり』と言われるほどです。


「では(まい)りましょう」


 その()け声とともに私達は中級ダンジョンへ入りました。


 ★


風弾(ウィンドショット)!」

「ふんっ!!! 」


 ロバルトが前方の剣客骸骨(スケルトンソルジャー)上段から切り倒します。

 しかしロバルトがモンスターに攻撃している間に右手から攻撃してこようとする動く骸骨(スケルトン)がいたのでメアリーが魔法で(つぶ)しました。


 流石にこの程度では(くず)れませんか。

 ダンジョンは外とは(こと)なる挙動(きょどう)をするモンスターもいますので注意が必要なのですが、中級ダンジョンはこの二人には少しレベルが低かったようですね。


「まだまだいけますね」

「いや、慎重に行こう。疲れはしないが、探索(たんさく)(おこた)らずいこう」


 流石ロバルト、経験者ですね。


「そうですね、ゆっくり行きましょうか」


 そう言い私達は進みます。

 現在十階層。

 通常の中級ダンジョンならば中層にあたる位置にいます。


 前に進むとぼこぼことしたから音がしてきました。

 先ほどからアンデット系のモンスターが多く出てきたので、恐らく次もアンデットでしょう。

 それを聞き下に注意を向けるメアリー。


聖刃(ホーリースラッシュ)!!! 」


 その言葉を聞いて「え???」と(わざ)()り出したロバルトを見るメアリー。

 そこでは壁をすり抜けメアリーを襲い()かろうとする霊体(ゴースト)がいました。


 更に()()ちをかけるかのようにぼこぼこと音がいていたところから動く死体(ゾンビ)が出てきます。


火炎連弾(ファイアーバレット)!!! 」


 ゾンビから腐乱臭(ふらんしゅう)が出る前に魔法で浄化です。

 ええ、浄化です。

 目の前で動く死体(ゾンビ)が焼ける臭いを直接かぐことになってしまったメアリーは少々きついかもしれませんが、(ほう)けている方が悪いのですよ。


 臭いがかなりきついのか、後退して鼻をつまむメアリー。

 顔をしかめるのも一瞬でした。

 今度は周囲を警戒し、探索(たんさく)します。


「他には何もいないようですね」

「そうですね、しかしロバルトはどうして分かったのですか? 」


 そうメアリーが言うと、少し気まずそうに頭をポリポリと()きながら答えました。


「ダンジョン内での対アンデットの基本だ。相手は霊体、階層を無視して移動できる可能性を考えながら移動しなくちゃならない……」


 彼らしくない口ぶりに疑問を覚えたのか、少しメアリーがロバルトを観察しています。

 そしてある事にメアリーが気づきます。


「そう言えば霊体は魔法でしかダメージを与えれませんでしたよね? ロバルトはどうして剣撃を与えれたのですか? その剣は魔剣ではないようですが……」


 目ざといですね。

 一般的に霊体、悪霊などと言われるスピリチュアルな存在に対して基本的に物理攻撃は効かず、すり抜けます。

 しかしロバルトは単なる鉄剣で霊体(ゴースト)を倒しました。


 ロバルトの方を見ると気まずそうにこちらを見ています。

 私が言ってもいいのでしょうか?


「そのことは私が説明します」


 クリスタ様が? と不思議そうにメアリーがこちらを見てきます。


「ロバルトは元神官なのですよ」


 その経歴に驚くメアリーと、本当に気まずそうにするロバルト。

 ロバルト、気まずそうにするくらいなら自分で言ってください。


「その昔、まだお父様が健在(けんざい)だった(ころ)、ロバルトは暴れていました」

「え??? 」


 そういう顔になりますよね。


「それこそ酒をのみ女を抱き、やりたい放題の神官だったようです。しかしそれも長く続きません。案の定、教会から追放されました。一時期は傭兵としてやっていたようですが限界が訪れます」


 そう言うと、ロバルトと交代します。


「あの時は自信過剰だった……いや本当に、だ。傭兵の回復役としてダンジョンに(もぐ)っていたわけだがそこでアンデットの大群にやられたんだ。俺はなんとか助かったが他のメンバーは……無理だった……」


 後悔なのか、少し顔を暗くしています。


「そしてアンデットの大群は収まらない。その数を増やしていき……ついにカウフマン公爵領でスタンピードが起こった。そん時にクリスタ様の父上、プロミネンス・カウフマン公爵閣下に出会い、(ひろ)ってもらったってわけだ」


 それを聞き、ロバルトの知らぬ一面を見て衝撃(しょうげき)を受けているのか口を開けた状態で固まっています。

 その時の経験が今に生かされているということなのです。


 さてここで(ほう)けていてもいけません。

 奥からモンスターがやってきます。


火炎槍葬(フレイムランス)


 二人が少し気を()られている間に(おく)から骸骨騎士(スケルトンナイト)死体拳闘士(ファイターゾンビ)が向かってきたので巨大な炎の槍で装備ごと燃やしました。


「ここはダンジョンです。気を引き()めて行きましょう」


 火炎槍葬(フレイムランス)でモンスターが集まってきたことに気が付いたのか、「はっ!」とした顔になり、引き()めました。


 こうして私達はダンジョンを攻略していくのでした。


 ★


「やはり出なかったですね、魔石や魔晶石」

「そう簡単には行きません、それに今回は行ったのは中級ダンジョンだったので」


 そう言いながら、ダンジョンのボスを倒した私達は屋敷に足を向けています。

 この領地はダンジョンも産業の一つに加えられているので、最後のボスを倒してもコアを破壊しないルールとなっています。


 よって私達はコアを破壊せずにそのまま屋敷に向かいました。

 そしてここから数日他の種類の中級ダンジョンや上級ダンジョンを交えながら、今回の目的である魔石や魔晶石を取りに行くため最上級ダンジョンへ向かうのでした。

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