第七十六話 ウッド子爵領 一 名も無き村での戦い 二
私達は村長さんの家の二階の寝室で打ち合わせをしていました。
「クリスタ様、引き受けたのはいいですが、どうするのですか? 」
アレックスがそう言ってきました。
彼が言いたいのは恐らくこの後本来ならそのまま領都へ向かう予定だったのを気にしているのでしょう。
しかし思い出してください、アレックス。
本来の日程をかなり先行して進んでいるのですよ。
「大丈夫ですよ。それにここで引いてはこの村のみならず他の村や街で魔法王国への不信感が出かねません。言い方は悪いですが、この村には広告になってくれればと思います」
そう言い、アレックスの方を向き、指示を出します。
「書類上は村からの緊急依頼ということにしておきましょう。それに加え……メアリー医療物資の中に傷薬のような物は御座いますか? 」
「はい、塗り薬がございます」
僥倖です。
「ならばそれを使って村人の手当をしましょう。生傷も見られました、早めに手当てをしておいた方がいいでしょう。アレックスとメアリーはそれぞれ使ったものや明日の事について書類に残しておくように」
承知しました、とメアリーが返事をするとロバルトが口を開き、聞いてきまいた。
「あ~それで、今回の件どうおもいます? 」
難しいですね。
顎に手をやり考えながら答えます。
「……何らかの原因により森の生態系が崩れたと考えるのが最もでしょう。もしかしたら小鬼邪妖精の間でも村同士の争いがあり、他方が勝ったために一時的に小鬼邪妖精の出現頻度が少なくなった、など」
そして頭を働かせ、続きを言います。
「もしかしたら小鬼邪妖精王が出現しているかもしれませんね」
「「「小鬼邪妖精王ですか?!!! 」」」
「まぁ憶測ですが。しかし小鬼邪妖精王のような統率者が出てきたのならば小鬼邪妖精の上位種が現れたことに理由が付きます。しかし一つ不可解なことがあるのです」
それはなんですか? とメアリーが聞いてきました。
更に追い打ちをかけてくるのですか?! と少し恐ろし気に聞いてきますが、単なる素朴な疑問なのでそこまで怯えないでください。
「小鬼邪妖精の魔法使いや小鬼邪妖精の剣士はどこから武器を調達しているのでしょうか? 」
「「「あっ!!! 」」」
そうなのです。
小鬼邪妖精の魔法使いならば魔杖、小鬼邪妖精の剣士ならば剣をどこから調達しているのか、ということなのです。
「これがダンジョンならば納得はいくのですが、ここはダンジョンではありません。一体どこから……」
「……他の村を潰して手に入れた、とかでしょうか……」
そう震えながらアレックスが言います。
考えたくはありませんが、有り得る話ではあります。
「死んだ傭兵から奪ったというのも考えられるな……」
もし傭兵が派遣されていたのならば考えられるでしょう。
「作った、ということは御座いませんか? 」
人ならばできるでしょうが、この地の条件では難しいかもですね、メアリー。
特に鉄の鉱山が近くにあるわけでもなく、剣や魔杖を作るための道具も必要になってきます。
王がいるのならばその影響で『職人』のような突然変異種が現れても不思議ではありませんが素材がないと無理でしょう。
「一番可能性が高いのは他の村から奪ってきたというものですね、明日村長さんに話を聞いて状況を確認しましょう」
そう言い私達は寝るのでした。
★
翌日。
私達は泊まっていた村長さん宅の外で話をしています。
先日とは異なり今日はそれぞれが戦闘服。
私は赤い魔法使いのローブでメアリーは青色の魔法使いのローブです。ロバルトは騎士というよりかは傭兵の戦士のような姿をし、アレックスはこの中でただ一人文官服でした。
今日村を出るとでも思っていたのでしょう。
私達の姿に驚く村長さんに他の村との交流について聞いてみました。
「他の村との交流ですか? 」
「ええ、最近どうでしょうか? 」
少し言いずらそうにしながらも答えてくれました。
「最近はめっきりでございます。以前は村の若者、年寄関係なく定期的に交流がございましたが、村を空けるわけにもいかなくなったので交流はなくなりました」
そうですか、といい他の三人と顔を合わせました。
(これはもしかすると、もしかするかもですね)
( ( (ええ) ) )
「因みになのですが、交流のあった村には剣や魔杖のような物はありましたか? 防衛のための……」
それを聞いて私が言いたいことが分かったのでしょう。
「ありましたが……。ま、まさか……」
「ええ、その可能性が出てきました」
近隣の村が滅んでいる可能性があるという可能性が。
少し取り乱した村長さんでしたが、一旦落ち着き話を再開します。
「まだ確定しておりません。因みにモンスター被害が起こった場合は今までどのように対処していたのですか? 」
「基本的に村や、もし手に余るようならば近隣の村と共に対処していました」
今にも泣きそうな顔で答えてくれています。
一旦区切った方がいいのでしょうが、続けるしかありません。
「失礼ですが、これまで領主様や国の機関に連絡は? 」
「……村や村の繋がりだけでどうにかなっていたので、これまでやってきませんでした……」
なるほど、モンスターもそうですが村の運営自体にも問題があったかもしれませんね。
「同様の被害がこれからあった場合は、領主様や国の機関に誰か連絡係を出すといいでしょう」
さて、事態はあまりよろしくないですね。
早めに行動したに越したことはありません。
「今回は私達が対処しましょう。メアリー、アレックスと共に怪我人の手当を! ロバルトは私と共に森へ入りますよ」
「「「はっ!!! 」」」
「あ、ありがたいのですが……。お払いできる物がなく……」
申し訳なさそうな顔で、今回のことを辞退しようとしていますが大丈夫です。
「今回は私達が勝手に行うことなので大丈夫ですよ。次回以降はきちんと報告をしてくださいね」
「おお~ありがたやぁ~」
と、村長さんが座り崇めだしてしまいました。
朝から村長さんと私が話しているのを見たのか『何事か』と村人が集まってきます。
丁度いいです、そのままアレックス達には治療に当たってもらいましょう。
「では、ロバルト。行きましょう」
「はっ!!! 」




