第六十九話 招集と準備、そして出発 一
「では、これから旅の説明をします」
お昼頃、会議室に随伴人を招集しました。
目の前にはカウフマン公爵領治安部隊第三番隊隊長メアリー・ローズ女士爵、五番隊隊長のロバルト・ドーズ士爵そして文官のアレックス・テリーが揃っています。
メアリーは高い背丈に似合う長い綺麗な金髪に豊満な胸の魔法使いです。
何故我が家の女性は胸が大きいのでしょうか?
不思議です。
ロバルトは昔から我が家に仕えている騎士の一人です。
メアリーよりも頭一つ分以上背が高く、筋肉質な体をしています。しかし年齢はもうすでに五十を超え、頭には茶色い髪に白髪が見え隠れしています。
眼鏡をかけたアレックスは珍しく平民出身の文官です。
髪は黒に近い茶色をしており、瞳は金色、肌は白色でマーリン魔法学園を出た逸材で文武両道です。
だから彼に文官としてついてきてもらうことにしました。
「今回は王城からの命により元小国家連合に赴任した新領主の視察へ向かいます。その為に皆さんに集まっていただきました」
そういい三人を見渡します。
三者三様の反応をしていますね。
メアリーは意気込み、ロバルトは何か感潜り、アレックスはこちらの意図を読もうとしています。
「まず、私が王城を吹き飛ばしたことにより荒事になる可能性があります。よって自衛が出来る者を選びました」
そう言うとロバルトがすかさず質問をしてきます。
「これはちと、少なすぎると思うのですが? 」
最もな意見です。
「分かっております。この王城より随行人は三人とのことでしたので貴方方を選びました。またエバンス子爵夫妻やエドワードを動かすわけにもいかないので」
すると、少し考えるような感じでロバルトは下がりました。
まだ何か疑っているようですね。
随行人が三人というのは本当なのですよ?
「しかし、この人数で視察となるとかなり大変と思われますが? 」
そう言うのはアレックスです。
確かにそうなのですが、今回の場合はそれだけでないので大丈夫です。
「王城からの命令書には確かに『視察』とありますが、本来の目的は新領主に釘を刺すことです。よって規定通りの視察—―街の具合や領主の財政状況のみに軽く触れれば大丈夫です」
「しかしそれだと報告書をどうすれば……」
真面目君ですね。
普段ならそれでいいのですが、今回は柔軟に行かないといけません。
「触れた部分だけで大丈夫です。また、不審なことがあれば柔軟に対応していきます」
「……なるほど、脅しに行くということか……」
ロバルトが気が付いたようです。
それを聞いて、メアリーは最初から気付いていましたと言わんばかりの顔をしています。
「派遣されたところも公国側でダンジョンも多い。そこで脱税やら公国と変な取引をする可能性がある。そこにクリスタ様が釘を刺しに行く、ということですな」
そういうことです。
「なら、ダンジョンの一つや二つ攻略した方が良いのでしょうか? 」
ナイスです!!! メアリー!!!
「そうですね、それもいいと思います。要はその地で武力を発揮して、新領主が犯罪に加担するようなことを防げばいいのですから」
「エバンス文官長になんと報告書を提出すればいいのやら……」
アレックスは頭を抱えていますが、大丈夫です。
このメンバーなら一日一つくらいはダンジョンを攻略できます。
「これから旅の準備にかかります。出発は明日、各人準備をしてください」
「「「はっ!!! 」」」
そういいメアリーとアレックスが会議室から出ていきました。
「どうしたのですか? ロバルト」
「……クリスタ様、今回は何を企んでいるのですか? 」
な!!! まだ疑っていたのですか?!
何という疑い深さ!
これが年の功というものなのでしょうか?!
「い、いえ。何も企んでいませんよ? 」
「ダンジョンの話に食いつきがよすぎたのが運の尽きですな」
はははと笑いながら言いました。
ロバルトの顔を見て思いました。
これは確信をもって言っています。
言い訳は通じなさそうですね、これはお手上げです。
「他の皆には内緒ですよ? 」
そういい私は今回の視察の別の目的を話すのでした。
「まず、先ほど言ったことは全て本当です。そのうえで、欲しい物がありまして」
「欲しい物ですかい? 」
そういわれると、顔が赤くなります。
いざ口に出して言うと恥ずかしいです。
「高純度の魔石に鉄、ミスリルとトレントの素材でしょうか」
「??? そのくらいなら取り寄せたらいいんじゃないですか? 」
「それではだめなのです! 私が作るのですから……ハッ!!! 」
なんと巧妙な誘導尋問!
くっ!!! 流石ですね!
「……なるほど、思い人ですか。クリスタ様にもついにこの時が……」
な、な、な、何を言っているのですか!
わ、私に恋人ととと?!
いませんよ! 恋人とか!
「違います! この前の戦闘でマルクスが昔あげた腕輪を壊してしまったから新しいものを作って……!!! 」
「ははは、分かりました、分かりましたとも。少しくらいは手伝いましょう」
顔が熱いです。
しかし本当にわかっているのでしょうか?
不安ですが、手伝ってくれるのならばそれに越したことはありません。
期待しましょう。
★
「視察、ですかい? 」
巨大な食料庫の中を料理長と歩きながら、数か月ほど屋敷を開けることを告げます。
そしてそれに必要な保存食を選んでいる最中です。
様々な食材が綺麗に並べられていますね。
ここを管理しているのは料理長の奥さんです。
夫婦でこの家で働いていますが、カウフマン公爵家ではこのように夫婦で務める人はかなりの数います。
何でも、奥さんからすれば浮気をさせないためだとか。
仲がいいのか、信用されていないのか。
悲しくなるのは雇っている側の私だけでしょうか。
「にしても何をもっていくんですかい? ここにないものなら取り寄せますが」
「いえ、大丈夫ですよ」
そういいながら事前にチェックしていた物を見つけます。
ありました、ありました。
私は置いてある食料の更に奥へ行き、手に取ります。
「ドライフルーツにハム、ジャム……」
「ハムやジャムはともかく、ドライフルーツとかは口に合わないんじゃないですか? 」
私を舐めてもらっては困ります。
振り向き、後ろにいる料理長に言いました。
「これでもつい最近まで旅をしていたのですよ? このくらい大丈夫です」
そういい、後は保存期間の長い物を中心に集め明日出発時に持っていけるようにするのでした。




