第六十八話 王城からの手紙
「マルクスの屋敷に、ですか? 」
「あらあら、大胆ね」
「ですから、そういう関係ではありません! 」
強く否定しますが、正直うれしくはあります。
エリー姉さんがクスクスと笑っていますが、違いますからね!
「全く、もう……。コホン、しかし侯爵家当主直々のお誘いを断るわけにはいけませんね」
「……この前、散々高位貴族のお誘いを断ったのに? 」
「そ、それはそれです! 『行きます』と返事をしましょう」
いいわよ、と言いながらエリー姉さんがどこからか返信用の手紙を出してきました。
それを受け取り、書きます。
「日程はどうしましょうか? 」
「クリスタちゃんが良い日でいいんじゃない? 手紙からはそんなに焦っているような感じでもないし……」
困りましたね。
「それに行くなら何か贈り物でも持って行ったらどう? 」
「贈り物、ですか? 」
少し呆れた顔でこちらを見ますが、わかっていますとも。
相手が普通の貴族なら手見上げに何か持っていきますよ、流石の私でも。
「マルクスに贈り物ですか、少し癪ですがいいでしょう。持っていきましょう! 」
「全くクリスタちゃんも素直じゃないわね……」
む、と感じながらも贈る物と日にちを考えます。
贈り物、贈り物……。
そう言えばこの前のイーサムとの戦いで一回きりの防壁の腕輪を壊していましたね。
「……腕輪にしましょう」
「指輪じゃなくって? 」
「違います! 腕輪です! う・で・わ!!! 」
そう言えばあれは手作りでしたね。
では今回も手製と行きましょう!
クリスタは材料をどうするか考えながら周りを見渡します。
多くの書類に本棚にぎっしり詰まった本……。
「……作るなら、この際最高品質なものを……」
「え? お手製なの? 」
「前に着けていた手製の腕輪の代わりを作るのです。ならば今回も手製というのが筋というものでしょう」
「……てっきり買うものかと……。これで『気にならない』というのは流石に無理があるわよ……」
……まぁいいでしょう。
それはともかく素材です。
魔石は必須ですね。これに加え基材をどうするか、です。鉄をトレントを燃やした木炭とミスリルに混ぜ、窪みに魔石を埋め込み……。
どうやって手に入れましょうか……。
そう考えているとノックがしました。
入室を許可すると、そこにはエドワードが入ってきました。
「クリスタ様、王城から手紙でございます」
「王城から? 」
疑問に思いながら、手紙を受け取り読みました。
「え~っと? 元小国家連合各地の視察命令書? 」
更に詳しく読むと、派遣した新領主が不正をしていないかチェックしてきてくれと書いていますね。
随行人は三人までとも書いています。
これです!!!
★
命令書を受け取った私は、まずエリー姉さんに視察命令書のことを話します。
「どうやら、王城はかなり人手不足の様です。領主である私にこのような命令書を送ってくるので」
「確かにそうね。普通なら王城の人材を使うでしょう。だけど恐らく、これは違う意味もありそうよ? 」
何やら、少し眉間に皺を寄せ考えています。
「クリスタちゃんのように武力を持った貴族が必要じゃないの? フォード卿は王城の守護をしているし、陛下は王都を離れれない、となるとこの国で最も武力を抱えているのはクリスタちゃんだから……」
それがどうしたのでしょうか?
「要は『変なことをしたら、前にあった王城のように粉々になるぞ』という威圧を込める意味もあるんじゃない? 」
わ、私は強襲する竜か何かですか?!
「いや、竜の方がまだかわいいでしょうね……」
そう言いながら派遣先の新領主に憐れみの目を向けるエリー姉さん。
私はそんなに獰猛ではありません!
「別の考え方もあるわよ? 」
まだあるのですか?
「ルドルフ陛下が裁きたい相手を領主に添えたとか。新天地では有頂天になりやすいから、そこにクリスタちゃんを送って犯罪をしているところを捕まえて欲しいのかもしれないわね」
結局の所、陛下の御心は分からないけどね、と付け加えました。
「何にしろ、新しく配置した貴族に武力的圧力をかけるのが目的ね。幸いこの領地はクリスタちゃんがいなくても回るというのがこの前証明されてしまったもの……」
それを言われると、悔しいですが言い返せません。
自分で証明してしまったのですから。
「それで、随行人はどうするの? 」
「そうですね……エリー姉さんとハリー兄さん、エドワードを連れて行くわけには行けませんし……。治安部隊を借りましょう」
「治安部隊を? 」
「ええ、少しは外の空気を吸ってもらおうかと」
頭を回転させ、誰が最適か考えます。
そうですね、出来るなら事務仕事が出来る者がいいです。
私の仕事量を減らす必要がありますし。
「……治安部隊三番隊隊長『メアリー・ローズ』女士爵、五番隊隊長『ロバルト・ドーズ』士爵を連れて行きます。メアリーは事務処理もできたと記憶していますので文官も兼任してもらいましょう。後は……文官として『アレックス・テリー』を連れて行きます」
「アレックスを? 」
「ええ、もしもの時は自身で身を守らなければならないかもしれません。文武両道な彼なら大丈夫でしょう」
「……まぁクリスタちゃんがそういうならいいけど」
このくらいでしょうか。
それに派遣先を確認すると、ここより遠方公国付近の小国が書かれています。
長旅に耐えられる者がいいでしょう。
それに加え、公国付近にはまだダンジョンがひしめいているようです。
もしかしたらそこに腕輪の素材があるかもしれません。
「エリー姉さん、地図を出していただけませんでしょうか? 」
「いいわよ……。はい」
地図を見ながらどのくらいの旅になるのか考えます。
「最速で公国付近まで行くのに、馬車で一週間はかかりそうですね」
「一週間は早過ぎよ。十日くらいは考えないと」
では往復で二十日。
各街で仕事をすることも考えると一か月。
「二か月後にマルクスの屋敷へお邪魔しましょう」
「あら? かなり幅をとっているわね」
「……ええ」
言えません。
素材集めの為ダンジョンに潜りたいなど言えません!
「……一か月で帰ってくるとして、王城に報告やその他事務処理を考えるとそのくらいが妥当かと」
疑わしい目で見てきますが納得したようです。
「分かったわ、それで行きましょう」
と、言い引き下がってくれました。
「一旦彼らを集めましょう! 」




