第三十六話 カウフマン公爵家の日常
三つの魔法が重なり合い緊迫した状態でドルケン公爵が一人気絶しているとう惨状。
宰相グラハムは頭を痛めながらもドルケンを牢屋へ入れるように指示を出した。
その後にルドルフの方へ向き進言する。
「陛下、今の状態では彼が何の罪で裁かれるのか他の貴族に分からないと愚考いたします」
グラハムはそう進言し説明をするよう暗に伝える。
「う、うむ。そうだな」
時間が経ったせいか、少し頭が冷えた三人はお互いに顔を合わし、ルドルフの言葉を待つ。
「ドルケン公爵が犯した罪は様々だ。違法奴隷売買、他国への我が国の情報提供、騎士王国の外務省との関係……。中でも当時の外務卿を自身の判断で動かし勝手にカウフマン卿を派遣するように条約を結んだのは明らかな越権行為だ。見過ごすわけにはいかない」
どれ一つとっても家を取り潰されるレベルの犯罪ですね。
「どの罪状で裁かれるのか、という問いに関してはあまりに多すぎる為答えられないということだ。異論はないか? 」
貴族達は顔を青くして首を縦に振った。
もしかしたらドルケン公爵に近かったために自身も裁かれるかもと思っている者もいるかもしれませんね。
「異論がないようなのでこれにて、カウフマン卿との謁見を終了する! 」
こうして私達は日常へと戻るのでした。
★
「右よし、左よし……存在隠蔽、静寂、消臭」
こそこそと私は静かに屋敷の机から立ち、離れます。
(今の時間帯はまだエドワードが来ないはず、今なら! )
扉をゆっくりと開け、外に出ます。
そーっと抜け足で外に出て庭へ行き、予め作っていたギミックを解き庭から屋敷の外へ出ました。
「ふぅ! ここまでくれば大丈夫でしょう。幻影」
すると私の髪は銀色に瞳は蒼へと変わりました。
「ふふふ、今日は招致した露店が営業を始める日です。絶対に行かなければ! 」
独り言を言いながら目的地へと向かいます。
目的地へ着くと、そこは行列ができていました。
な、なんということでしょうか……。
一番乗りのはずが……。
仕方ありません、並びましょう。
そう思い列の最後に並ぶ。
匂いに誘われてか貴族の子息らしき人物が割り込もうとするのが見えた。
その後ろには護衛の騎士らしき人物が二人いる。
「おい! 貴様、場所を譲れ! 」
護衛の騎士達は彼の愚行を止めようとせず、我関せずのような態度をとっています。
場所を譲れと言われた子連れの女性は怯えながら列を譲ろうとしています。
これはいけません。
このような方がいるから貴族は嫌がられるのです。
彼の行動に憤慨しながら私は近づきました。
「ん? 誰だ、お前? 」
「ちょっと貴方、ちゃんと列に並ばなければなりませんよ? 」
そう言うと周りの人達が騒ぎ出しました。
「じょ、嬢ちゃん! やめておけ! 」
「相手は貴族様だぞ! 」
そう口にする男性達は私の前に出て「すぐに逃げるんだ! 」と言いました。
なんと勇敢な方でしょう。
しかし心配は無用です。
「お前、よく見ると美人だな! 分かった僕の愛人にしてやろう! 光栄に思うがいい! 」
「貴方のような品のない方はこちらからお断りです」
「な、なんだと!!! 僕に向かってその口の利き方! 許さない! お前達! 」
護衛の騎士達に指示を出しましたが、彼らはやる気のない感じで苦言を呈しました。
「坊ちゃん……。ここはカウフマン卿の領土ですよ。下手に騒ぎを起こしたらどうなるか、分かりますよね」
「そうです、王都の旧レスター伯爵邸を見たでしょう? もしこの事が御屋形様……。ひいてはカウフマン卿の耳に入ったらどうなるか分かりますよね。なのでおやめになってください」
「そんなの僕には関係ないのだ! 大体何がカウフマン卿だ! ただの行き遅れババアじゃねぇか! 」
プチン!
その音と共に私の魔力が自然と噴き出ました。
魔力に呼応するかのように風が巻き起こります。
ひっ! と貴族子息が後退り、護衛達が守るように前に出ます。
「誰が……ババアですって? 」
かけていた幻影も自然に解け、その姿が現れる。
貴族子息はその姿を見て顔を真っ青にし、一言呟いた。
「ク、クリスタ・カウフマン女公爵……」
その瞬間「申し訳ありませんでした!!! 」と土下座をする貴族子息。
しかしもう遅いです。
「後程あなたのお父様へご連絡いたしますので、覚悟しておいてくださいネ」
ひぃぃぃぃ、と猛ダッシュで逃げ帰って行きました。
「ぼ、坊ちゃん! 」と言い護衛の騎士達も追い駆けて行ってしまいましたね。
「じ、女公爵閣下とは知らず申し訳ありません」
そう言うのは先ほどまで私を庇ってくれてた男性でした。
「いえ、大丈夫ですよ。私もこのお店に食事に来た身ですので。それに彼の貴族子息のような者達は私も快く思っていないのでお気になさらず」
そう言い私は列の最後に並びました。
その様子をみて皆さん驚いた様子でこちらを見ています。
いえ、普通に並びますよ?
「いました! 女公爵閣下を発見しました! 」
な! 追手がもうすでに!
「今日こそは逃がすな! 執事長に怒鳴られるぞ! 」
「いけません! お肉はまた後です! 皆さんそれではご機嫌よう! 」
そう言い残し私は猛ダッシュで逃げました。
★
ここは騎士王国王城。
そこには魔法王国国王ルドルフ三世と騎士王国国王が対面で座っていた。
温暖な気候のはずの騎士王国の王城は最早極寒の地。
天井からは氷柱が垂れ下がり今にも落ちそうであった。
魔法王国側には国王ともう一人いた。
彼女は外務省所属現外務卿兼外交武官長セシリー・フォード女伯爵である。
あの騒動の後、外務省は大きく改革された。
徹底的にドルケン公爵の影響を除くために出た方法は恐らく諸外国にとって最悪の人事だっただろう。
まず新しく新設された外交武官庁という役職の長にセシリーが付いた。
これはいざと言う時に外国で武力を使える者の事を言う。
次に外務卿としてその外交武官長であるセシリーが抜擢されたのだ。
役職の兼任は稀なことではないが、外から見る分には最悪な組み合わせだろう。
それに伴い女子爵では地位が足りないということで女伯爵へと昇格した。
鬼に金棒とはまさにこの事である。
そしてその初仕事として騎士王国へ来たわけなのだが……
「さて、貴国がもたらした情報は虚偽であったのだが? 」
「それに関しては……ずるずる……我々もあずかり知らない所。勇者殿の報告を……ずるずる……そのまま報告したまでだ」
その言葉にセシリーが反応した。
「私は言ったな? 「勇者がもたらした情報が嘘だった場合、どうなるかわかってるよな? 」と」
「……っく! しかし確かめる手はずが無いじゃないか! ダンジョンは攻略され消え、勇者パーティーは現在活動中! 」
はぁ、とため息をつきながら「為政者として勇者であっても相手の言葉の裏を取るべきだろう」と思っていると「バタン! 」と扉を乱雑に開ける音がした。
「た、大変でございます! 」
「今は魔法王国との会議中! 何たる無礼! 場をわきまえろ! 」
「ま、魔法王国の方もいらっしゃるのですね! 大変でございます! 魔王が! 」
「「「何?! 魔王!!! 」」」
その言葉に耳を貸さずにいられなくなった総員であった。
「魔王が『神速』の傭兵団に討伐されました!!! 」
「「「……は??? 」」」
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