退治、一先ず終了
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ウトマリが退治されて、どこかで繋がってたらしい老人がさらに弱体化した。
見てわかるくらい触手の動きが悪くなってるし、体がもう骨と皮だけの骸骨と変わらない容貌になってるし。
攻撃も簡単に通るようになったので、既に虫の息と言っていい状態。
触手を自在に動かす力も残っていない様子。
それを見て王様が、
「捕らえよ!」
と命じると、模様の解析をしていた魔法使い達が、慌てて集まってきて何重にもバリアで囲い込み閉じ込めた。
「倒さね~のか?」
将軍さんの不思議そうな声に、
「この現状をササナスラの王族や貴族、国民に見せてやらねば、我が国の侵略などと言われかねんだろう?」
「ああ。しかしこの国の者はどこに行っちまったんだろうな?人っ子一人見当たんね~な?」
「おそらくですが、魔力の枯渇で倒れているものと思われます」
テイルスミヤ長官が深刻な顔で話に混ざってきた。
「魔力の枯渇?」
「ああ!ありぇ、地図か!」
「ケータ殿?」
声をあげた俺に、皆の注目が集まる。
ので、奥の牢屋の壁を指差す。
未だ弱々しくはあるが、抵抗しようとしてる老人が入れられたバリアを避けて牢屋奥の壁ヘ。
壁一面にはビッシリと模様が書かれ、魔石の埋まってた跡が点々と。
その魔石の埋まってた跡が、ササナスラ王国の街の形と重なる。
大きな街には大きな魔石が、小さな集落には小さな魔石が、そうやって見ると、ササナスラ王国の地図として完成する。
マジックバッグから取り出した地図を広げて見せれば、皆も唸るように納得してた。
「それじゃ~なにか?このササナスラの国民はこの老いぼれに魔力を吸い取られて、魔力枯渇を起こして、全員倒れちまったってことかよ?」
「どの様な強力な魔道具を使ったとしても、あれだけの大量の魔物を操ると言うのは、膨大な魔力が必要になります。おそらく国民から搾り取った魔力を使いきっても足らなかったと思います」
「それでさらに魔力を得る為に、精霊を組み込んでいたのか」
「ええ。精霊ならば空気中にある魔力を自らの意思で吸い込むことも可能ですから」
「いやいや、魔力が枯渇するほどあの老いぼれに魔力を送るっておかしくね~か?てめ~の命まで脅かす程魔力を使うってのも考えにくいしよ?」
「それは実際に確かめてみない事には分かりませんが、何らかの方法で強制的に吸い取られてしまったのかもしれません」
「そうだな。ここで考えていても仕方ない。まずはこの国の現状を確かめる事が先決か」
「魔力が枯渇してんなら、ろくな抵抗もされね~だろ~し、少人数で広範囲を調べるか!その間この老いぼれはどうするよ?」
「奴隷の首輪でもして牢にでも入れておけばいいでしょう。この状態ではろくに抵抗も出来ないでしょうしね。念のため騎士と魔法使いの四人体制で見張りはつけますが」
「ああ、それでいいだろう。一先ず上に戻ろう」
壁を調査してた魔法使いが見付けてた出入口から延々と階段を上って地上に戻る。
その間に皆に次々抱っこされながら治療。
元の謁見の間に戻る頃には全員が無傷になったけど、精神的な疲れは取れないので、今夜はここで休む事に。
本当に命ギリギリまで魔力が枯渇しているなら、半月近くはまともに動けないからね。
外で待機してた騎士に指示だけ出して、本日は終了。
マジックバッグの中に溜め込んでた食料を大放出して全員で食べて、その場で雑魚寝しました!
おはようございます。
天気は晴れ。
誰かの呻き声で起こされました。
時刻は正午ちょっと前くらいかな。
まだ寝てる人も多く居て、誰が呻いたのかは分からないけど、呻き声で起こされた人もちらほら。
起きて改めて思ったんだけど、皆臭いね!昨日はもう鼻が麻痺してて気付かなかったのかもしれないけど、元々空間自体が物凄く臭かった地下から戻って鼻が正常に戻ったら、自分が凄く臭い事を自覚した。
俺とユーグラムと将軍さんは、ここに来るまでは魔改造テントで普通に毎日風呂に入ってたので、まだマシだけど、考えたら、戦場で風呂に入ってる暇は無いよね!濡らした布で体を拭くとか、その辺の川で水浴びくらいは出来ただろうけど、洗浄魔法を使える人も居ただろうけど数は少ないし、三ヶ月近く魔物相手に戦い続けて風呂に入れなかったって考えると、皆さん相当ばっちい状態。
なのでササナスラの国民とか、貴族達とかは後回しにして、取り敢えず風呂を探した。
幸い大浴場も、王族用の風呂もあったので交替で入浴。
皆して腰布状態で魔法で洗濯。
これぞ裸の王様?
洗っても洗っても黒い水が!こんな臭い物を着続けていたことにうんざりする。
洗濯班と調理班に分かれて、ワイワイとそれぞれの作業をこなす。
途中ディーグリーが手配してくれた大量の物資が届いて、綺麗になった服を着て夕飯にありつけたのは外が暗くなる頃。
着替えた騎士達は外の騎士達と交替して、まだ風呂の順番を待ってる人も多いけど、俺達はまったりした空気に。
アールスハイン達と王様達の偉い順番で、幌馬車とテントに泊まって、ゆっくりと休息。
朝起きたら見覚えのある暗部の人達が居た。
王様は遠距離通信魔道具でリュグナトフに居る宰相さんと会話中。
朝御飯を作ってくれた騎士にお礼を言って朝御飯を食べて会議。
幾つかの街に騎士を派遣して、街の様子や住人の様子を確かめる。
お城の人達の事も確認して、魔力が少なくて生き残ってた王族は全員拘束。
ササナスラ王国を今後どうするかの話し合い。
一方的に攻撃を受けて、それを制圧したリュグナトフ国は、この国の主権を主張することに。
ただその前に、国民から魔力を強制的に吸い取る装置?の仕組みの解明と、ササナスラ国王の現状を多くの人達に見せる事が重要。
ただそれをどうやって見せるか、が問題。
お城に居て生き残ってた王族の人達は、怪我などはしていないので、牢屋にぶちこんで、従者や下働き達は各部屋にまとめて放置。
テイルスミヤ長官が言うことには、魔力枯渇は下手に魔力を与えると、魔力酔いと言うのを起こして命が危うくなるかもしれないそうです。
十日も飲まず食わずで大丈夫?とも思ったけど、仮死状態なので大丈夫だそうです。
異世界の不思議症状だね?
騎士達は武器を取り上げて、武器庫に厳重な鍵をかけた上で、屋根のある鍛練場に放置。
街の様子を見に行った騎士達の報告では、テイルスミヤ長官の予想通り、魔力枯渇で皆さん仮死状態で倒れてるそうです。
街のそこここに立て看板を設置して、ササナスラ王国の理不尽な侵略を撃退した事で、リュグナトフ国が王都を、ササナスラ王国を制圧した事をお知らせ。
リュグナトフ国とは違って、識字率の低いササナスラ王国なので、看板毎に騎士が一人配置され、説明することになってる。
一週間も過ぎると、魔力の少ない人達が目覚め始め、大混乱した上で、立て看板の所に配置された騎士に説明されて納得して家に帰り、家族が目覚めるのを待ちながら生活を始める。
そんな光景が下町の方から見られて、徐々に街も賑やかになっていく。
お城に勤める人達は、平民でも比較的魔力が多い人達なので、下男下女と呼ばれる下働きの人達も十日目くらいにやっと目を覚ました。
そして驚く程すんなりとリュグナトフ国の支配を受け入れ、通常業務に戻っていった。
まあ、偉い人達が変わったからって、仕事が減るわけでも辞めさせられるわけでもないので、下働きの人達にはあまり関心がないらしい。
半月過ぎるとメイドや侍従達も起き出して、こちらは多少混乱してたけど、自分達の命を吸い取る勢いで支配されてた事実を知って、やっぱりリュグナトフ国を受け入れた。
二十日過ぎれば貴族達が、一ヶ月過ぎれば高位貴族や王族も目を覚ます。
その目覚める一ヶ月の間に、城内の掌握を済ませ、国の内情を調べ、ササナスラ王国は、驚く程不正の少ない国であることが分かった。
独裁政権と言うか、洗脳と言っても過言ではない支配を受けてたので、不正を行う意識、意欲も潰されてたよう。
ただ今後は、支配のなくなった人達を自力で掌握しなくてはならないので、それはそれで大変そうではあるけどね。
命を守る為に、積極的にクーラーのご使用を!ってよく聞くんですが、外の気温とクーラーのきいた室内の気温差で具合が悪くなることがしばしば。
それなら汗だくでもクーラー無しの方が体調が良いような気がしないでもない今日この頃。
皆様も体調には十分にお気を付け下さい。




