三年新学期 11
誤字報告、感想をありがとうございます!
学園男子寮の、アールスハインの部屋の窓側へ回ると、ベランダにソラとハクとラニアンが並んで出迎えてくれた。
「たらいまー!」
ふよっと飛んで着地すれば、一斉に飛び掛かられた。
「ニャーニャー」
「ムムームムー」
「キャンキャン」
凄く吠えられながら、グリグリ頭を押し付けられる。
心配を掛けてしまったようです。
皆してワチャワチャしてたら、ベランダのガラス扉をバンッと叩き開けて、部屋から出て来たのはシェルとアールスハインでした。
軽く片手をあげて、
「たらいまー」
と挨拶したら、シェルは笑いながら、
「お帰りなさいケータ様」
と言い、アールスハインに無言で皆ごと抱っこされて、頭をグリグリ撫でられました。
そのまま部屋の中に移動すると、就寝時間は過ぎているのに、ユーグラム、ディーグリー、助、テイルスミヤ長官にカイル先生、チチャール先生まで部屋の中に居ました。
各々に、
「お帰りなさい、ケータ様!」
「お帰り~」
「ケータ様、遅かったですね?」
「おーう、お帰り」
「よ、よ、よくぞ無事で!怪我等はしていませんか?」
声を掛けられたんだけど、なんかちょっと緩くない?チチャール先生だけが、ちょっと涙目で心配してくれてるんだけど?
俺が腑に落ちない顔をしていたからか、テイルスミヤ長官が、
「この国にケータ様を本当に害せる者はおりませんよ?ですから、ケータ様がお戻りにならないのは何か事情があると思って皆で待っていたんです。思ったよりも時間が掛かりましたが、何があったのか、お聞かせ願えますか?」
シェルが全員分のお茶を新たに淹れて、皆が聞く体勢になったので、拐われて目が覚めた所から話した。
驚く事に、皆は最初、俺が拐われていた事実に気付いてなかった?!
助だけはその可能性を疑ってたらしいけど、ソラやハク、ラニアンを置いて行った事から、すぐ戻ると思ってたらしい。
なんだろうかこれは、演習に付いていかずに、料理長を呼びつけて、調理室に籠ってたりしたのが原因だろうか?
俺が居なくてもダンジョンで、普通に肉が落ちる事が分かったので、肉の消費に回ったんだけど。
その時だって、ちゃんと事前に連絡してたのに?
昼になっても帰って来ない事で、助の予想が当たってた可能性に気付き、慌てて犯人の痕跡を探したとかなんとか。
アールスハインに付いている影の人にも気付かれずに俺を拐った手口から、その道のプロの仕業かと疑われたが、学園の監視魔道具を見直した所、犯人は学生で、魔道具を使用していた事が判明。
犯人の学生を問い詰めた所、家族に内緒で作った借金をチャラにする代わりに俺を拐う計画に乗ったらしい。
犯人の学生が持っていた使用済み魔道具を見せて貰えば、昏睡魔法と気配消失の魔道具だった。
今はもう機能を果たして、魔力が無くなってるけど、結構な大きさの魔石が使われている事から、犯行時、男子寮全体が昏睡状態にされていた予想。
大掛かりな割に使いきりって所に、魔道具師の腕が知れる。
これは俺が入れられてた檻の魔道具を作った奴と一緒だろう。
癖字も似てるし。
他にも色々話すことはあるんだけど、幼児の体は睡魔に負けました!
話を聞いてるうちに寝落ちしました!
お話はまた明日!
おはようございます。
今日の天気は曇りです。
目の前にはレッサーパンダが大の字でプープーイビキをかきながら寝てて、その腹の上にソラとハクとラニアンが並んで寝ています。
なんだろう、とても平和な光景。
レッサーパンダ、お前の野生は何処へ行った?
起きて日課の発声練習と準備体操をしてたら、
「ンヤ!」
と飛び起きたレッサーパンダ。
腹から転がり落ちるソラとハクとラニアン。
それにちょっと慌てたように一匹ずつ足元に並べ直して、俺を見て威嚇の構えを取り、
「ヤヤヤー、ヤヤ!」
とか言ってる。
「「ブフッ」」
吹き出して、無言で肩を震わせているのは俺では無く、シェルとアールスハイン。
確かにとても面白いけども!
笑われてるのが分かったのか、
「ヤヤー!ヤ!ヤ!ヤ!」
下に広げた両手をブンブン上下させ抗議するレッサーパンダ。
うん、可愛いだけでござる。
そんなレッサーパンダを宥めるようにソラとハクが鼻先と触手でレッサーパンダの腹をつついている。
「ヤヤ?」
「ニャーニャ」
「ムムー、ムー」
何やら会話をして、納得したのかレッサーパンダが威嚇を止めて三匹と戯れ始めた。
クスクス笑ってるシェルに着替えをさせてもらい食堂へ。
この演習が始まってから、ダンジョンに通う学生によって、ダンジョンの肉が食堂に度々寄贈される事で、格段に食堂の食事が旨くなりました!
俺でも完食出来るクオリティー!
まあ、一番大量に肉を寄贈したのがアールスハイン達の班なので、当然なんだけどね!
演習後半は、騎士科の生徒達と徒党を組んで肉を狩り捲っていたからね!
当然、肉を持ち帰る用の魔道具も開発、大量生産したさ!
肉を持ち帰る用なら、時間停止まで付ける必要は無く、冷蔵冷凍の魔道具で足りたからね!
なのでより多くの肉を確保出来たので、ダンジョンに行ってない生徒にまで出せるようになった。
お陰で柔らかい肉への関心が高まり、肉の加工方法がだいぶ広まってきた!よしよし!
食事が済んだら昨日の話の続き。
アールスハインの部屋でも良かったんだけど、あんまり一生徒の部屋に教師が集まるのも良くないので、会議室を借りる事に。
シェルがお茶を配り会議の始まり。
部屋の隅で戯れる動物達にユーグラムの意識が半分以上持ってかれてるけど。
「あー、色々聞いたがこりゃー俺達の手には余るな」
「勿論父上には報告の手紙を出しましたし、騎士団の協力も要請しています。今日更に詳しい情報を聞いて報告をする予定です」
「まあそうだよな、ただ学園内で起きた事はこっちで対処しなきゃなんねーからな」
「それに一回使いきりとしても、強力な魔道具の存在は脅威ですね」
「そ、そうですよね!一回きりとは言え、男子寮を丸ごと昏睡させる魔道具なんて!」
今までいまいち話についてこれなかったチチャール先生が、魔道具の話になった途端混じってきた。
しかも壊れてるとは言え、使用された魔道具を嬉しそうに持っている。
「なんでそれをお前が持ってんだー?」
「ちょっ、いひゃいれすー」
カイル先生に両頬を摘まれてチチャール先生が抗議の声をあげるが、魔道具だけはけして離さない。
流石魔道具狂。
「ちゃんと学園長の許可は頂いてます!」
カイル先生から逃れたチチャール先生が、ほっぺたを赤くさせながら唇を尖らせて言う姿は、ここにいるどの学生よりも幼く見えるんですけど、先生だよね?
「ああ、その魔道具なら私も見せてもらいましたが、稚拙な魔法陣を魔石の魔力で無理矢理発動したために、誤作動で暴走したようですね。今は完全に壊れて、ケータ様クラスでないと修復は無理でしょうね」
「えええ!完全に壊れてるのに、修復出来るんですか?」
「ケータ様なら可能でしょうが、そんな半端な物を修復してもらうより、新しく作ってもらう方が遥かに早いでしょうね!しかも高性能で!」
テイルスミヤ長官が自慢気に言うから、チチャール先生がキラッキラした目で見てくるんですけど?
「ケータちゅくんないよ?よーないち」
「…………確かに、相手を昏睡させる魔道具など、使い道が悪事しか思い付きませんね」
フム、と考え込んでしまったテイルスミヤ長官に、カイル先生がチョップを食らわして、
「おいこら、話がずれ捲ってるぞ!強力な魔道具をどうするかって話だろうが!」
「あ、ああ失礼、そうでした。…………ですが、魔道具を完全に使えなくしてしまうと、生活に支障をきたしてしまうので、あくまで強力な魔道具を限定する、と考えますと…………」
「なんかねーのか?俺には魔道具の事なんざさっぱりだぞ?」
「そうでしょうね。ですが一概に強力な魔道具を規制する、って訳には行かないんですよ」
「あ?何でだよ、一定以上の出力の魔道具を規制とか出来ねーの?」
「学園にも強力な魔道具と言うのは使われているんですよ。例えば結界の魔道具等もそうですし、図書館等にも使われてますし」
「んじゃーどーすんだよ?」
「それが思い付かないから困っているんですよ!」
「お前頭かってーもんな!」
「じゃあふにゃふにゃな貴方が何か知恵を出せば良いでしょう!」
「俺に魔道具の話が分かるわけねーだろ!んでも、学園に外から持ち込まれるのを防ぎてーなら、荷物検査でもすりゃいーだろ?」
「来週から、剣術大会と魔法大会があるのに?その一般客まで荷物検査ですか?時間と手間が掛かり過ぎて現実的ではありませんね」
「んー、がきゅえんのー、けっかいに、いってーいじょーのましぇきたんち、ちゅける?(んー、学園の、結界に、一定以上の魔石探知、付ける?」
「………………それは可能なんですか?」
「けっかいの、まーどーぐみないとわかんないけろー、たびゅん?(結界の、魔道具見ないと分かんないけど、多分?」
「学園長の許可を頂いて来ます!」
テイルスミヤ長官が部屋から出て行ってしまった。
それを見送っていた俺を、ガッと捕獲して鼻の触れる距離で、
「既存の魔道具にまで改良を加える事が可能なのですか?!それは知識を学べば他の者でも可能ですか?新しい魔道具を作る発想は何処から来るのですか?………………」
目を血走らせ鼻息荒く、矢継ぎ早に質問されているが、目が逝っちゃってて怖いです!
圧に押されて答えられずにいると、チチャール先生の頭をガッと掴みグワッと引き離してくれたのはカイル先生。
弾みで俺から手を離して落ちる俺をキャッチしたのもカイル先生。
「落ち着け、そんで質問し過ぎ!そんな一度に答えられるもんでもねーだろ」
「はうっ、すみません、興奮が抑えられず。子供に対して無体なことをしました」
さっきとは一転シューンとするチチャール先生。
その姿は主人に叱られた小型犬のよう。
隣にラニアンを並べてみたい。
そんな風にワタワタしてたらテイルスミヤ長官が帰ってきて、許可は下りたけど、魔道具の所に行けるのは教師と俺だけって事だった。
学園の魔道具はとても古く貴重なもので、仮令王族でも学生には見せられないルールなんだそうです。
古いから見せられないのか、貴重だから見せられないのか、両方なのか。
なのでアールスハイン達を置いて、ソラ達も置いて、先生達と俺で移動。
なぜかスキップするチチャール先生、学生より危険じゃない?
テイルスミヤ長官に抱っこされながら眺めていれば、ゴスッと拳を頭に落としたカイル先生が、
「はしゃぐな!騒ぐな!余計な口を挟むな!それが守れないなら連れていかない。分かったな?」
と、脅しつけるようなひっっくーい声でチチャール先生に言い聞かせている。
チチャール先生は、ガクンガクン頷いて、今度は忍び足で進みだした。
とても愉快な先生である。
着いたのは学園の地下にある立ち入り禁止エリア。
重厚で頑丈そうな扉の鍵を開け、中に入るとひんやりした空気。
広さはサッカーコート二面分くらい、かなり広い場所に九ヶ所、等間隔に巨大な魔石を有した魔法陣がある。
近寄ってよくみると、結界、外敵排除、魔力暴走抑止、危険行為抑止、高出力武器抑制、外敵侵入警報、余剰魔力吸収、呪術軽減、的な事が各々一つの魔石に一つの魔法陣として書かれていた。
これは内側に効くものと、外敵に備える物を真ん中にある一際巨大な魔石に集約させて発動する、この部屋全体が一つの魔道具になっていた。
チチャール先生が、キラッキラした目で各々の魔法陣を見て、キャッキャしてる。
ただしその内一つの魔法陣は、機能していないようだ。
魔石は生きているので、魔法陣の方に原因が?と思って見てみると、所々ハゲていて、線が途切れている部分を発見。
原因は分かったが、何の魔法陣なのかは線が薄くなりすぎてて分からなかった。
これを上手く利用できれば、魔道具の悪用が防止出来そう、と皆に報告しようとしたら、目の前には何時来たのか、気配もなく至近距離に学園長がいて驚いて、
「ひょっ!」
とか変な声が出た。
そんな俺には構わず、
「どうです、改良は出来そうですか?」
とか淡々と聞いて来るので、
「でちるとおもー、まーどーぐあくよーぼーちでいい?(出来ると思う、魔道具悪用防止でいい?)」
と聞いてみた。
「おお、出来るのですね!それは素晴らしい!それでお願いします」
笑顔で言うので、早速取り掛かります。
まずは魔石の魔力を切って、魔石を退かした後に魔法陣を書くんだけど、魔石は普通の鉱石なんかよりも重いので、巨大魔石はカイル先生に退かしてもらう。
巨大な魔石は重いので、ヨロヨロしながら運んでくれた。周りで見てる人が凄くオロオロしてたけど。
魔石に合わせて巨大な円を書いて、その中に三角も幾つか書く。
書き込む文字は、魔道具悪用転用防止、三角の中には、一定出力以上の外部魔道具持ち込み禁止。
ちょっと長くなって面倒だったけど、なんとか収まったので、魔石を戻してもらって焼き付け。
巨大魔石なだけに、魔力を相当持ってかれるけど、問題なく完成!
一旦切ってた回路も無事開通してるし問題はなさそう!
「でちたー!」
報告すれば、
「………………ふ、普通は、この大きさの魔石を魔法陣に使う場合、三人以上の赤魔力保持者が、更に魔力を調整する魔道具を使って焼き付けを行うの、ですが………………」
学園長がワナワナしておりまする。
まあ良いじゃん!問題なく完成したしね!
フンフン鼻歌を歌いながらついついスキップして、部屋から出ようとしたら、ガッと捕獲されました!
グルンと持ち直されて見たのは、興奮し過ぎて真っ赤な顔でブルブル震え、口をパクパクするばかりのチチャール先生。
怖いね!
すぐにカイル先生がチョップして引き離してくれたので、なぜか学園長の抱っこで無事部屋から出られたよ!
その後アールスハイン達と合流して、ちょっと話して、後は騎士団に丸投げして、結果報告待ち。
午後は、剣術大会に向けて訓練してました。




