三年新学期 10
すみません!
お詫びのもう一話です。
誤字報告、感想をありがとうございます!
んがっと、変な声が出て起きました。
おはようございます。
窓から見える天気は夕日が真っ赤っかです。
まだバリアの外では動きらしい動きも無く、ちょっとほっとしました。
これで寝過ごしてたらカッコ悪いからね。
暫く妖獣達と戯れて、聖魔法玉をあげたりしてたら、夕日も沈んで三下達が動き出した。
バリアの遮音を解くと、
「おーい、檻を運ぶから手伝えとさ」
「おー」
そんな会話の後、見張りをしてた三人の三下達も行ってしまったので、バリアからこっそり抜け出して様子を見ようとしたら、レッサーパンダが付いてきた。
離れようとしないので、そのまま引っ付けたまま移動。
元聖女の檻のある場所とは反対の壁がいきなり開いてビビりました!
スライド式の扉なんてあったのね?
レールとか車輪が付いてるわけでも無く、力業で開けるタイプなのか、物凄い音してるけど。
何人もの大男がゼイゼイ言いながら開けた扉から、荷馬車が入ってきて、やっぱり力業で檻を荷馬車に積んでいた。
何台かに分けられた荷馬車。
仕切りの布の隙間からこっそり覗いたら、元聖女の檻が荷馬車に積まれる所だった。
チラッと見えた元聖女は、未だにガーガーイビキをかいて寝ている様子から、何かしら眠りの魔法でもかけられているのかもしれない。
魔物の入った馬車が片付き、元聖女の檻が最後だったようで、三下達も大男達も扉を閉めて部屋から出て行った。
さて、それでは行動に移りますかね!
バリアを不透明にして、中にいる妖獣達一匹一匹に、認識阻害のバリアを掛けて、壁に魔法で大穴を開けて、それを地上まで。
倉庫の裏側まではなかなか見回りも来ないのか、鬱蒼とした森が広がっていました。
そこで妖獣達とはお別れ。
ばいばーいと手を振れば、バラバラに逃げていく妖獣達。
一匹一匹俺の顔をベロンとしてくのが挨拶なのか?
さて、俺も認識阻害のバリアを張って、上空から奴等の後を追いかけようとしたら、尻を引っ張られた。
見ればレッサーパンダが俺の尻の布を咥えております。
「もーあんじぇんよ、おうちかえりな?」
「ヤーヤ!」
「だーじょぶーよ、みちゅかんないバリアはったち」
「ヤヤヤ!」
なぜか俺の尻の布を咥えて離さないレッサーパンダ。
「にゃにー?おうちかえんなーの?」
「ヤ!」
「いっしょにきたいーの?」
「ヤ!」
一緒に来たいようです。
なぜか短い前足の爪を出して、盛んに振っている。
え~と、戦う気満々ですか?
まあ本人が行きたいなら連れてっても良いかな?
レッサーパンダもバリア内に入れて、フワンと飛んで上空へ。
途端にレッサーパンダがしがみついて来たけど、苦しくはないのでそのまま建物の正面側へ。
四台の馬車が出発する所だった。
途中の森で木の実や果物を収穫して食べながらゆっくりと追跡。
向こうは森の中の道を行くので、ガッタンガッタン目に見えて揺れてるけど、こちらは上空、何の障害も揺れも無し、快適!
森の木々に邪魔されて、見失わない事だけ気を付ければ良い。
飛んだ直後はビビってしがみついてたレッサーパンダも、安全な事に安心したのか、引っ付いたままだが、周りを見る余裕が出てきた模様。
頻りに、
「ヤ!ヤヤヤ、ヤヤー」
と何かを言っている。
全然分かんないけど。
出発してから一時間くらいたった頃、やっと王都が見えてきた。
お城の位置から考えると、今見えているのは今まで通ったことの無い西の街門の外側っぽい。
街門のすぐ近くまで森が広がっていて、隠れるのには良さそうだ。
奴等も街門に直接入って行くのではなく、街門から死角になる場所に馬車を止めると、焚き火をしながら寛ぎ出した。
今が何時頃か分からないけど、街門は基本夜の九時くらいには閉まるので、それより前に相手も来るだろうと予想。
良い感じの木の股を見付けたので、そこに座って果物を食べる。
マジックバッグがあれば、もっとまともなご飯が食えるのに!
昼間あれだけ長く昼寝をしたのに、夜になると条件反射のように眠くなる幼児の体を叱咤して、奴等が動くのを観察する。
奴等は焚き火を囲み酒盛りしながら無駄に騒いでいる。
ついでに檻の中の魔物も騒いでいる。
とても五月蝿い。
悪事を働いている自覚は無いのだろうか?
呆れながら見ていれば、街門の方から三台の馬車がこっちに来た。
一台は幌の付いた荷馬車、一台は大きめの乗り合い馬車、最後の一台は、装飾は控え目だけど貴族が乗るような箱形の馬車。
前二台の馬車は連なって走り、最後の一台はちょっと距離がある。
夜に馬車を走らせるのは、危険な行為だと前に聞いた事がある。
馬は夜目が利かないので、道の凹凸で脚を怪我する危険性が高いんだとか何とか?
それが三台も。
前二台は、結構な光量の魔道具でも使っているのか、だいぶ明るく前方を照らしながら、速度も速い。
この二台は、何か緊急事態の対処っぽい。
奴等が騒いでいる場所も、スピードを落とさずに通り過ぎて行った。
そしてゆっくりと近付いてきた最後の馬車は、明かりも最小限で、貴族の馬車なら必ず付いている家紋も無く、大きな商会ならだいたいある商会紋も無い。
ザ・お忍び馬車。
これは怪しい。
案の定、奴等の酒盛り現場に馬車を止めゆっくりと降りてきたのは、前にも見た覚えのある冒険者。
確か、キャベンディッシュの部屋で、元王妃のクシュリアを逃がしてた冒険者、だったと思う。
金茶髪碧眼でそこそこ整った顔なのに、なんと言うか、下衆な匂いのプンプンする男。
次に出て来たのは、痩せたローブの男。頭からすっぽりローブで覆っているので、顔は見えない。
ただし骨格や背の高さから男と分かる。
そして最後に出て来たのは、元王妃クシュリア。
以前見た時よりは身綺麗にしているが、顔の半分は布で覆っているし、一度老け込んだ顔は厚化粧では誤魔化せて無い。
これはあれだろうか?クシュリアも、元女神の陣営に組み込まれたって事だろうか?
クシュリアはあからさまに顔をしかめて、無言で奴等を睨んでいるだけで、話をするのは冒険者らしい。
ローブの男は魔物の檻に近付いて、魔物の状態と魔力を調べている様子。
ローブ男の確認が終わったのか、冒険者に頷いた所で、
「で?荷物が半分しか届いてねーよーだが、どういう事だ?」
ドスの利いた冒険者の声に、
「ろくな前金も払わずに、全部の商品を貰えると思ってんのか?」
頭が嘲笑混じりの声で答える。
「全部揃えらんねーなら、金は出せねーなー?」
「構わねーぜ、あんた等以外にも買い手はいるんだ、そっちに売れば俺等は損しねーからな」
「チッ、足元見やがって!殺されてーのか?」
「やってみろよ、Aランク冒険者のスコラウスさんよ?俺等にはまだ仲間がいるし、荷物はまだ俺等が持ってんだけどよ?」
「チッ!分かったよ!残りの前金と、魔物の分は今払ってやるよ!」
「いやいやいやー、妖獣の半金は貰わねーとなー?妖獣を渡した途端攻撃されたらたまんねーからよ!あんた等は俺等の信用がねーからな?」
「先に魔道具を大量に渡したでしょう!」
焦れったいやり取りに口を挟んだのはローブ男。
甲高い声で、叫ぶように話に割り込んだ。
「結局檻ごとあんた等に返すんだから、意味ねーだろ?」
頭の凄んだ声に直ぐ様引っ込んだ。
弱っ!
「あー、分かった分かった!前金の残りと、魔物の分、妖獣の半金を払やー良いんだろ?!」
「ああ、それなら残りの荷物もすぐに持ってくるぜ?」
ニヤニヤする頭に、また舌打ちをして、冒険者がクシュリアを振り向き手を出す。
クシュリアが顔をしかめたまま、冒険者の手に袋を置けば、そのまま冒険者は頭に向かって袋を投げ渡す。
中を確認するのは手下、ちゃんと金額が合っていることが確認出来たのか、頷く手下に頭も頷き、手下に指示して、荷馬車から檻を降ろさせる。
奴等はそのままこの場所で夜を明かすのか、また酒盛りを始めた。
冒険者スコラウスは、それを面白くなさそうに見ただけで、特に何もしない。
動き出したのはローブ男、檻に手を翳すとシュンと吸い込まれるようにローブ男のローブの中に檻が消えた。
マジックバッグ的な物を持ってる様子。
しかし生き物って入れられないはずでは?
疑問には思ったが、次々檻は消えているので、何か条件付きなマジックバッグ的な物なのだろうと思っておく。
最後に元聖女の檻を収納して、用事はすんだとばかりにそそくさと馬車に乗り込んだ。
クシュリアは、金を渡した時点でさっさと馬車に乗った。
「おい、残りの妖獣はいつ届く?」
「んあー?ああ、ああ、明後日には届けるさ、この場所でこの時間で良いんだろう?」
「ああ、遅れるなよ」
「そっちもちゃんと金を用意しとけよ!」
最後に冒険者スコラウスが馬車に乗ったと同時に発車し、来た時よりも速い速度で馬車は去って行った。
当然追うけどね!
街門を越えたのは閉門ギリギリ。
って事は今は夜の九時頃って事ね。
前世とは違って、この世界の夜は暗い。
なので自然と寝る時間も早くなるって事で、街はもう寝に入る時間。
流石にそんな時間に馬車をガラガラ急いで走らせるわけにはいかないので、街に入ったら馬車の速度は落ちた。
ゆっくりと走る馬車を追って、上空を飛ぶ。
電飾の無い世界の空は、昔住んでた山の家と同じくらい星が見える。
知ってる星座は多くないけど、一個も無いのはなんだかとても淋しく感じる。
ちょっと切なくなりながら追跡して着いたのは、比較的裕福な平民が暮らす地区の、路地裏にある大きな倉庫。
高い位置にある窓から中を覗くと、馬車から降りたローブ男が、さっき取引した魔物をマジックバッグ?から出してる所だった。
なぜか全部の魔物が寝てる。
やたらと肩で息をするローブ男。
収納には魔力でも使うのか、ローブ男の魔力がだいぶ乱れている。
最後に出したのは元聖女の檻。
ゼーゼー言いながらローブ男が、何かの液体を寝てる元聖女に飲ませてた。
それがすむと、倉庫の明かりを消して、全員が何処かへ向かって歩きだした。
数分もたたず着いたのは、こぢんまりと目立たない屋敷。
そっと窓から中を覗けば、何人かの使用人とクシュリア、スコラウスがワイン片手に何やら話していて、ローブ男はローブを着たまま離れた場所でチビチビお茶を飲みながら俯いている。
暫く見ていたが特に変化は無く、ローブ男が自室だろう部屋に移り寝たので、俺も帰る事にした。
感想を頂いた時に、超展開と言われて?と思っていたのですが、一話飛ばしていたとは!
申し訳ありませんでした。




