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この兄をどうにかしてください!!  作者: 杮かきこ
第3章  『この祭りをどうにかしてください!!』
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第14幕  3

「あああああっ!!」

 『カコ』の中。アーラの叫び声だけが木霊する。

 ワルド、シェーヌ、フィールを初めて加えた『ブルゾス』退治の課外講義。

 そこはアーラの独壇場だった。



「あいつは今日1日で、『カコ』の全部の『ブルゾス』を1人で浄化するつもりか?」

 スフェラはすでに呆れている。

 『カコ』では1年中薄雲が垂れこめ、日光が地上に降り注ぐことはほとんどない。

 が、この日はどんよりとした曇天。

 雨が降らないだけで、稲光が雲間を走る中、無数の雷が降り注いだ。

「何っ?」

 シェーヌは怯えながら落雷を見ている。

「アーラは燃えてんなぁっ!!」

 そんなシェーヌの脇を、ぴょんとジャンプし、上空に飛び上がるワルドの姿があった。

 稲妻はワルドを避ける。

「おう。絶景だぜぇっ!!」

 ワルドの能力『ペタオ(飛ぶ)』とは、両足のくるぶしから後ろに向かってそれぞれ1対の小さい翼が生え、それが力となってワルドを宙高く押し上げる。

 そこから急降下で『ディアボロス』を真上から剣を振り下ろし、叩き切っていた。

「うぉっ!!」

 フィールの能力は『ズィナミ(力)』。

 近くの木の根元から、フィールはすざまじい怪力で引き抜いては、それを力任せに横なぐりに振り回す。

 たまらず『ディアボロス』は吹っ飛ばされている。

「…もうぅっ!!」

 シューヌの能力は『エフィアルティス(悪夢)』。

 飛ばされてきた『ディアボロス』の先に、シェーヌの発生させた漆黒の渦が待ち受けている。

 そしてそのまま、渦は『ディアボロス』を飲み込み、消滅した。

「こぇー。あれこそ最強の能力『悪夢』だな」

 着地と同時にワルドの吐いた言葉はしっかりとシェーヌの耳に届いており、思いっきりグーでワルドを殴り倒していた。

 


「どれも『第3級 (トゥリトス)』の力か。このタイミングでなぁ」

 何故かスフェラの表情は暗い。



 そしてアーラの快進撃は続いている。

「アーラっ!!もういいっ!!もうヤメてっ!!」

 快進撃――それは異常な力の使い方だった。

 ミゲの叫びも届かないのか、アーラは全力で『ブルゾス』を倒していく。

「一体どうしたんだ、あいつはっ!!」

 ヴノが叫んだ。

「……」

 クレイはただアーラの様子を見つめているだけだ。

 動いたのは――ジンだった。



 巨大な落雷の先。轟音が轟いた。

 落雷の音だけではない。盛大な爆発が起こる。

「な…なんだ?」

 アーラは息も荒く、何が起こったのかと見つめ。

 その真横からジンがアーラ目掛けて早足で歩いてきた。

「ジンっ、どうして邪魔…」

 パンっという乾いた音が辺りに響く。

 ジンがアーラの右頬を叩いた音だった。

「…に、兄さんっ!!」

 ミゲが駆け寄った。

「1人で荒れるのは構わん。でもミゲを泣かせてまで続けることじゃない」

 ジンに言われて初めてミゲに視線を移すと、ミゲは薄紅色の瞳を潤ませ、アーラを見つめていた。

「アーラ……」

 ミゲがアーラの胸に抱きついた。

「……ごめん」



 アーラとミゲの仲が急接近したのは3日前。

 2人の間が急に狭まり、対応も恋人の仕草へと変化した。

 その頃からか。アーラの表情が暗く、沈んだものに変わったのは――。

 初めはカメリアへの謝罪の気持ちだろうと誰もが感じていたが、それがなんとなく違うのではないかということを周囲が感じ始めたのは、アーラは自分に対してひどく嫌悪する言動が増えたこと。

 明らかに普段のアーラとは違った。

 そして今日の出来事は決定的だった。

 


 ジンはミゲから奪うようにアーラの手を引っ張り、足早に歩き出した。

「な…なんだよっ!!」

「プリムラさんの所へいけ。俺もついて行ってやる」

 ジンの言葉に、アーラの頬が一気に紅潮する。

「余計なお世話だっ、自分で行くっ!!」

 無理やりジンから手を引き離す。

「……私も行く」

「…うん」

 ミゲの申し出に、アーラは小さく頷いた。

「クラッペさん。こいつが逃げないよう見張っていてもらえないですか?」

 ジンは厳しい口調で近くにいたクラッペに告げた。

「そうね。それは補佐役からとしてもお願いするわ。今のアーラは尋常じゃない。

 これ以上の『ブルゾス』浄化活動はしばらく中止しましょう」

「……」

 アーラはクラッペの顔をまともに見ることなく、その視線を逸らせた。

「アーラ……」

「…大丈夫。なんでもない」

 ミゲだけには優しく接する。傍から見るアーラは――何かに追い詰められていた。


 


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