第36話 スロットに再挑戦
ラクスティーケは例によって前かがみになり、スロットマシンを顕現させる。
俺も例によって露出度の高い服からこぼれ落ちそうになっているたわわな果実をガン見した。これをもみもみするまでは死ぬ訳にはいかない、と内心で勝手に決意する。
眼の前に現れたスロットが回り出す。
前回同様、一番目と二番目のリールは問題なく『7』で止めた。
問題は3つ目のリールだ。
最後のリールが減速し、「毒矢」「ポーション」――そして「スライム」と表示される。
「よし、『7』こい!」
だが、スロットはそこで停止したまま動かなかった。
「ああっ、今度は早すぎた!」
「あら、残念。惜しかったね~。だけど先着11名さまには豪華粗品をプレゼント中だぞ。良かったね!」
「えっ、また貰えるんですか?」
「うむ。1番目と4番目が同じ者だというのは割りと珍しいな」
ラクスティーケがそう言った瞬間、2つ目の『叡智のグラス』が床に現れた。
「ハズレ券を10枚揃えた者が、あれから2人いたのですね」
「北米と南アジアでな。この惑星のヒューマノイドはなかなか見どころがある」
なにげに情報量が多い。
北米ってことはアメリカかカナダで、南アジアってことはインド近辺……。てか「この惑星」って言ったよね?
つまり、ダンジョンは地球上に複数存在していて、ラクスティーケは「この惑星」以外でも同じようなことを何度かしてきた、ということか。
「2つの『叡智のグラス』を『叡智のヘッドギアPRО』と交換することもできるぞ。こちらのほうが高性能だ」
「具体的にどう違うのでしょうか?」
「主な違いは直接脳に五感情報を送るということと、各種機能が統合されて1つのアシスタント人格になっているということだな。詳しくは直接訊け」
『叡智のヘッドギアPRО』はシンプルなヘッドギアだった。頭をすっぽりと覆うタイプだ。外には黒い革が張られており、内側には電極のような物がたくさん埋め込まれている。
<はじめまして『ソフィア』です>
かぶると同時に声が聞こえてくる。いや、実際には音声として聞いているのではない。ミリセカンド単位の一瞬で人が喋る声を聞いたのと同じような感覚が起こるのだ。
<聞き取り速度は『知力』に依存します。現在の速度は原稿用紙1枚あたり0.26秒です>
こちらの疑問を先回りしてヘッドギアの中の人が答える。ちょっとハスキーな感じがする理知的な印象の声だ。
<お好みによりアシスタントの名前、性別、年齢を変更することができます。変更しますか?>
「デフォルトでいいです」
<初期設定ではユーザー様のことを『マスター』とお呼びすることになっています。変更しますか?>
「じゃ、『お屋形さま』で」
<分かりました。今後は『お屋形さま』とお呼びします>
「明日は瀬田に旗を立てよ!」
<……お屋形さま?>
よし。これで「信玄公ごっこ」ができる。
いや、待て。今のセリフは信玄公が亡くなる直前に放ったセリフだったな……。もしかしてフラグ立った?
<それでは『叡智のグラス』との機能比較ダイジェストをお伝えします>
何事もなかったかのようにソフィアはそう言うと、凄まじい勢いで情報を流し込んでくる。自分でも驚くほどの速度で情報を処理しているが、1分ほど続くと流石に知恵熱が出てきた。
「なかなか良い物だろう。どうする?」
ラクスティーケは例によってアヤさんをモフっていたが、俺がこのアイテムの概要を理解できたタイミングを見計らって声を掛けてきた。
「あ、こっちのほうがいいです」
そう答えると、ラクステーケは鷹揚に頷いて『叡智のグラス』2つを回収し「では励め」と言い残して虚空に消え去った。女っ気が全くないこのダンジョンで彼女は唯一無二の萌え要素なので、もう少し話がしたかった。
何しろこんな像が建てられるほど偉い天使だからたぶん忙しいのだろう。
これは素晴らしい物だ。オートマッピング機能やアイテム管理機能などの新機能がてんこ盛りだし、将来的にはファームウェア・アップデートで機能が追加されるという。更にアプリのような形で拡張機能も購入可能になるそうだ。
防具としてもそこそこ優秀であり、魔物の革素材などを使って更に防御力を向上したり、兜のような見た目にするためのオプションパーツの装着も可能。
言ってみればこれはコア・デバイスであり、拡張機能やオプションパーツを足していくことで好みにカスタマイズできるのだ。
例えるならばキットレンズ付きの一眼レフカメラのようなものだろう。高性能の望遠レンズに付け替えたり、ストロボを付けたり、バッテリーグリップを付けたりしてカスタマイズできるのと似ている。




