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私の朝は日の出と共に始まる。
朝起きたら5歳児の腰ほどある大きな樽を背負って、山の中にある湧き水がある場所に水を汲みに行くのが私の仕事だ。5歳児にはかなり大変な重労働だ。
朝の薄暗い中、山の中を片道2時間かけて歩く。元々、この山には人が踏み込むことがないため、道はなく、草が膝の高さまで生えていて歩きにくくて仕方がない。足を滑らせて転んだ場合は擦り傷だらけになる。運が悪ければ木の枝が体に刺さるかもしれない。
前に、雨が降ったから水汲みを拒否したことがある。それを聞いた母さんがこれがお前の仕事なんだ、と怒鳴り散らして強烈な平手打ちをされた。あまりの威力に倒れ込んだ。このゴリラが、と心の中で罵倒してこの屈辱に耐えた。それからは、雨が降っても水汲みに行くようになった。いつかこのゴリラに必ず報復することを心に誓って。
考え事をしていると湧き水がある場所に着いたため、背負っていた樽を下ろし水を汲んだ。そして、水に映った自分を見てため息を吐いた。
水に映った自分は、顔や髪が泥やホコリなどで汚れて薄汚い。腕や足を見てもガリガリで骨が浮き出ている。お世辞にもかわいいとは言えない容姿だ。前世では経験したことがないみすぼらしさ。
自分の惨めさに涙が出てくるの、を水で顔を洗うことで堪える。そして、もう一度水に映った自分を見てため息を吐いた。
今世の自分は、目はぱっちり二重で、鼻は小さいが高さがあり、唇は寒さから青いが形は良い。さらに、髪は水で汚れを落とすと小汚ない赤茶色から目を引く赤毛になる。三食食事をとり、まともな生活をしていれば、可愛らしい少女になるだろう。素材は良いのに生かせないこの環境が辛い。人並みの生活がしたい。
そろそろ帰ろうかと思い、立ち上がって水が入った樽を背負い、樽の水を溢さないように慎重に家に帰った。
――そして、家に帰った私は、この環境から抜け出すことができる名案に出逢うことになる。