第91話 不思議な行動
昨晩の深酒が響いたのか。今日は午前八時に目が覚めた。いつもと比べて二時間も遅い起床となった。
辛うじて二日酔いは免れたようだ。上体を起こし、軽く頭を振っても痛みはなかった。吐き気もしない。
ただし思考はぼんやりして即座に活動的にはなれない。座ったままぼんやりした時間を過ごした。
そこへガリガリと音が聞こえる。気だるげに立ち上がって段ボールハウスに近付いた。定番の寝床にハムはいなかった。
頭を横に倒し、ケージの側面を見るとハムがいた。給水器の吸い口を噛むようにして水を飲んでいた。
朝から走り回って喉でも乾いたのだろう。
そう思って引き返す途中で、ん? と頭に疑問が湧いた。
ハムはどこかの家庭から脱走を果たし、外を彷徨っていた。そこで老齢の母親と出会い、我が家に連れて来られた。ケージや給水器は、その時、母親がまとめて買ってきて与えた物だ。
慣れ親しんだ物ではないはずなのだが、ハムは初っ端からケージの中で給水器の水を飲んでいたように思う。
何故、吸い口を前歯で齧ると水が出ることを知っていたのだろうか。前に飼われていた先と、たまたま同じ作りだったのか。そのような偶然があるとは思い難い。
深い思考の迷宮に入りそうになったところで踏み止まる。
考えてみれば冬場にハムスターが外で生きていることが驚異だろう。
そう考えればハムの給水器問題など、どうでもいい話に思えた。
ハムとの出会い自体があり得ないのだから。




