第47話 ハムが臭う
一階に下りて最初に感じたのは尿の臭いだった。真っ先にハムのところへ向かう。いつものように左奥のカマボコ板を仰向け姿で齧っていた。
その隙を衝いてケージの蓋を取り外す。排泄用に置いた容器の状態を見ると、砂上に黒いゴマのような糞が幾つも落ちていた。尿による作用なのか。砂の団子も目に付いた。
素早く容器を取り出し、中身を捨てて新しい砂に入れ替えた。それだけで臭いが軽減した状態にはならなかった。段ボールハウスに敷き詰められた木屑が臭いの元になっているように思えた。
手間ではあるが、総入れ替えを決めた。まずはハムに齧ることをやめさせる必要がある。
俺は顔を近付けて息を吹き掛けた。ハムはびっくりしたように体勢を戻す。すぐさま後ろ脚で立ち、円らな瞳でこちらを見上げる。
意識させると俺はケージの中の餌の容器を取る真似をした。阻止しようとハムが行動を開始。正面の扉から駆け込み、指に噛み付こうとした。素早く手を引き上げ、開放していた扉を閉めた。
ハムを閉じ込めた状態でケージを文机の端に置いた。不貞寝したところで手帚と塵取り、大きなビニール袋を用意した。
最初にカマボコ板の辺りから木屑を取り除く。右隅はハムの寝床なので相当な量で盛り上がっていた。手帚で一気に崩すと中から相応の糞が見つかった。尿もしているようで段ボールの底に木屑が貼り付いていた。指で引っ掻いて塵取りに入れた。
全ての木屑がなくなった。段ボールの底には尿によって変色した箇所が多く見られる。ケージの真下にも同様のシミがあった。排泄用の容器はハムの砂遊びの場所となっているようだった。
まだ微かに尿の臭いがする。抗菌作用のある紙を敷き詰めると、ほぼ無臭となった。ケージを元の位置に置き、閉めていた左右の扉を開けた。
ハムは真っ白な紙の中に足を踏み入れた。近くにあった紙片を前脚で掴み、甘噛みするような行動を取る。
数分で環境に慣れて走り出した。ケージに戻ってきて給水器に齧り付く。喉が潤うと、また全力の走りを見せた。
元の臭さに戻る日は近いかもしれない。




