コレが有名パテシエが造った品かぁ、いざ!実食です!
俺は早速、フォークでケーキを切り分け口へと。
あ、各皿の転移門は外してっからね。
おれのケーキは、転移門付けてます。
いつまでも冷たいし、俺なら時止め状態の品へ干渉するのは容易い。
時が止まってるから変に形崩れせず、スンナリと切れるんだよ。
口に入れたらさぁ、一言で言うと、パラダイス!
楽園やね。
あ、コレが、口福っうヤツやね。
ベト付いた甘さや、クドイ甘さではない。
スンナリ素直なサラリとした甘さ。
だが、シッカリとした甘味の存在感がね。
その甘味がサポートし、フルーツの味が際立つ。
そんな味をスポンジとクリームが包み込み、口を、口内を満たして行く。
ああ。
マンガやアニメで、美味い物食って、大きなリアクションするじゃん。
この場合だと、「なんじゃ、こりゃぁ、ウメェ」とかね。
うん、無理。
人ってさぁ、本当に美味い物を食べると無口になるんだよ。
いや、違うか。
喋ることも、動くことも、すべて忘れるんだ。
だってさぁ。
口の中の味に、意識を全て集中させるから、他のことへ意識を逸らせられないんだよ。
美味いよー、美味いよぉっ!
あー幸せだなぁ。
カッン!
ん?
あ、無い!
俺のケーキ様、どこ行っただっ!
ん?
「藤吾、これ藤吾。
返事せぬか。
無視するでないわっ!」
え?
ヒルデガルデさん、オコ?
「あれ?
なんで怒ってるんです?」
「さっきから呼び掛けおるに、ソナタが無視するからじゃ。
まさか聞こえおらなんだ、とかではあるまいに」
いや、睨んで言わんでもさ。
「そうだったんですね、ごめんなさい。
正直、気付きませんでした」ったらな、唖然とされたよ。
「いやぁ、あまりの美味さにですね、他のことが全く入って来なかったんですよ」って、ハハハっと笑ったらさ。
「なんじゃ、それは?
コレ実は、ヤバい物でも入っておるのかえ?」
恐る恐るな。
「ええ、そうですね」
「なんじゃと!
そんな物を食わそうとしたのかえ!?」
ビックリ仰天ってね。
俺は深刻そうにさ。
「そうなんですよ。
旨味とか甘味とかがヤバくてですね。
ヤバいですから、代わりに食べましょうか?」
いくらでもイケルぜっ!
「アホかぁ!
我が食すわえっ!
それよりも藤吾。
ソナタが持っておる珍妙な物は何じゃ?
それで菓子を食っておったようじゃが?」
あ、この世界には、フォークがないんだね。
なら麺類もないのかな。
フォークってさぁ、パスタを食べるために作られたそうだよ。
初めは庶民の食べ物だったパスタを、貴族が食いたいってね。
庶民は手掴みで、パスタを食ってたらしいんだ。
けど、流石に主人へ手掴みで食えとはね。
悩んだ料理人が、農具のフォークから閃きを得てな、小型のフォークを造らせたんだってさ。
最初は先が鋭く尖って、結構危険な品だったらしい。
つまり、パスタなどの麺類みたいに、スプーンや串で掬えない品が無いってことだな。
「コレはフォークって言う、カトラリーですよ。
コレ一つで、ケーキなら切ったり、刺して持てますからね」
「なるほどのぅ。
珍妙な品じゃが、便利そうじゃわぇ。
ソナタの世界の道具かのぅ?」
「そうですね。
まぁ、コレは僕が魔術で創ったんですけどね」
そう告げると、呆れたようにみられたよ。
「もはや藤吾は、金属を創造し、金属製品を創り出すことも可能なのじゃな。
やはり流吾じゃのぅ」
「そんなことより、食べないんですか?
要らないなら、貰いますけど?」ったら、全員が慌てて隠す。
いや、取らないからね?
その後は、皆がケーキをね。
あー、俺も、ああなってたのかね?
黙々とケーキを切り分けては口へと。
途端に、へにゃ、っう笑いが。
うん、目が地走ってません?
使用人が茶を側へ置くが、誰も反応しません。
うん、まるでケーキを食べるマシンのようだ。
イヤなマシーンだな、をいっ!




