第84話 切なる想い、そして不穏な影
どうも、秋水です。
盆も過ぎ去ってしまい、気温が下がり過ごしやすい季節になりました。
そのせいで体調を崩してしまったりともありましたが、何とか無事に書き上げることが出来ました。
「俺は……誰とも付き合うことは出来ない」
その瞬間、辺りの空気は凍りついた気がした。その場から誰も一歩も動けず、呆然と立ち尽くしていた。
「ごめんな」
小さく呟き、服の裾を掴む手を優しく解きながらその場を立ち去ろうと1歩足を踏み出した雪咲。しかし、真弓だけは雪咲の服の裾を握って離さなかった。
「どうして?」
その声は震えていて、今にも消え入りそうだった。握っている手も震えていて、崩れ落ちてしまうのではと思えていた。それでも雪咲は振り返らず、そのまま言葉を口にする。
「最初に言った筈だよ、その気持は魔王討伐が終わるまで胸に秘めときなって」
「でも!」
「それに理由を話してもいいけど、それを聞いても何事もなかったかのように振る舞える?」
「それは」
それを最後に、真弓は口を閉ざしてしまう。雪咲はそれ以降何も言わず、真弓の手を解き森の奥へ歩いて行ってしまう。それには誰も何も言うことは出来ず、立ち尽くしたままになる。
暗い森の中、一人フラフラと彷徨う雪咲。ふと空を見上げて見ると、真っ黒な夜空の中に微かに光る星々、時々落ちる流れ星は宛ら頬を伝い落ちる涙の雫の様だった。気付いた時には、自身の頬にもポツリと伝い落ちていた。
「あれ?おかしいな。何で泣いてるんだろう」
ハッと俯き、両手で顔を覆い隠すように涙を拭う。刹那、背後に誰か人が居るような感覚に襲われる。涙を吹くことを忘れ、バッと振り返ってみるとそこに居たのは息を切らした皓だった。
「お前、何であんな言い方した?真弓達泣いてたぞ、あんなに想ってくれていたのにどうして?」
皓は怒鳴ることなく、ただ静かに聞いてきた。だが怒っていない訳ではなく、静かに怒気を孕んでいた。
「俺だってあんな言い方したくなかったさ、あんな顔見たくなかったさ。けど、他にどうすればよかったんだよ!」
「もっと優しく断ればよかったんじゃないのか?」
「優しく断れば、未練なく俺を忘れてくれるのか?違うだろ、全てをバッサリと切り捨てるにはこうするしかないだろう!」
雪咲の叫びの中には、様々な感情が込められていた。怒り、悲しみ、悩み、苦痛、その他にも数え切れぬくらい。
「だからって」
皓が何かを言いかけた時だった、何か只ならぬ雰囲気が2人を包み込んだ。まるで底なし沼のように、沈み込むような感覚。重くて、深くて、ゾワッと全身に鳥肌が広がる。
「これは」
「何だろ」
とても息苦しい空気の中、ゆっくりと2人は後ろを振り返る。そこには、ただ暗闇が広がっているだけだと思っていた。だがそこに居たのは、一人のフードを被った男が立っていた。
今回は、少しだけ書き方を変えてみました。
次話では、遂に最終章へ突入致します!




