第69話 夜中に起こった事態
どうも、秋水(狐饂飩)です。
名を変えようかと思いましたが、面倒くさいのでやめときました。
「……と言う訳です」
「まさか……有り得ぬ……訳では無いが……」
途切れ途切れで言葉を発しつつ、髭を弄る。
「……信じられないとは思いますが、これはいずれ皓がこの街に来れば分かることです」
そう言い、雪咲はゆっくりと立ち上がる。そして出入り口の戸に近づき勢いよく開く、すると雪崩込むようにリィナとアメノウズメが部屋に入ってくる。
「……で、盗み聞きしていたんだね?」
「うっ……いや……」
苦笑気味で目を合わせようとしないリィナ、雪咲は額に手を当てため息をつく。アメノウズメにも視線を向けると、テヘッと言いたそうな顔をしていた。
「別に聞かれても困らないんだけどさ、盗み聞きされて広められると困るんだ。聞きたかったなら言ってくれれば聞かせてあげたし、あまり言い触らさないで欲しいんだけど?」
「……わかった」
ボソッとリィナが言い、雪咲は黙ってコクンっと頷く。そして再び外を見てみる、先程と変わりなく辺りは暗く月が登っている。
「夜になったし、宿どうしようかな……」
ため息混じりに独り言を言っていると、ガイルが雪咲の近くまで歩いてくる。
「折角じゃ、家に止まっていくと良かろう。寝室も用意しとるし、問題は無かろう?」
「良いんですか?」
「街を救ってくれたんじゃ、そんな人を無下にはせんよ」
そう言い残し、ガイルは客室を出て二階へ上がっていく。雪咲とアメノウズメが付いていくと、通路の奥の一部屋に入っていく。入ってみると、広くもなく狭くもない、丁度よい部屋だった。一つ気になったのが、ベッドが一つだけだったということだ。
「雪咲殿はこの部屋を使ってくだされ、アメノウズメ殿は隣の部屋を」
「分かりました、ご厚意に甘えさせていただきます」
「分かりました」
ガイルは部屋から出ていき、アメノウズメも隣の部屋へ入っていく。雪咲は誰も居なくなった部屋で一人、ベッドにそっと腰を掛ける。ギシッとベッドが音を立て、ふわっとした敷布団の感触が良い。そのままゴロンと寝転んでみると、まるで柔らかい羽が全身を包んでくれている様に暖かい。
「……石鹸の匂い」
ゴロゴロしていると、布団の匂いが鼻孔を擽る。石鹸独特の良い匂いが、慣れぬ部屋でのストレスを軽減してくれていた。
寝転んでいると、睡魔に襲われてしまいそのまま目を閉じ、意識を手放す。
「……」
気が付くと、雪咲は辺りを見渡す。それは、掛けた憶えのない掛け布団が体の上にあったのだから。それに付いていた部屋の電気も消えており、寝起きの働かない頭を回転させつつ首を傾げる。
〈誰か来たのかな……〉
そう思いつつ布団を出ようとすると、右手に何か柔らかいものを掴んだような感触が。ふとその方へ視線を向けてみると、雪咲の右腕を抱きしめながら小さく寝息を立てて眠っているリィナの姿があった。ベッドの近くの窓から月明かりが差し込み、リィナの寝顔を照らしている。右手はというと、少しはだけているリィナの胸に覆い被さるように触れていた。
「……」
夢かとも思ったのだが、手に伝わる感触がその選択肢を消し去る。これは紛れもなく現実であり、実際に起こっている事態だった。
次話は、夜中ハプニングの続きです。




