第65話 空を覆う不穏な影
どうも、秋水です。
今回の話では、リィナとの距離が……!
自分の中では、かなり好きな部類かと……。
「さて、俺達はこれで……」
雪咲はスッと立ち上がり、アメノウズメも立ち上がる。そして部屋を出ようとすると、ガイルに呼び止められる。
「君たちは、これからどうするおつもりで……?」
「んー……暫くは観光で滞在するかと思いますが、どうか宜しくおねがいします」
ペコリと頭を下げ、襖にそっと手をかける。その瞬間、後ろからリィナが服の裾をクイクイっと引っ張ってくる。それが気になり、視線をリィナに向けてみる。すると、ちょっと恥ずかしそうに頬を赤らめながら雪咲を見つめていた。
「……どうしたんですか?」
「えっと……その……あの……」
「……?」
雪咲は容量の得ない途切れ途切れの言葉に、首を傾げる。
「……私のせいで迷惑かけちゃったし……その……お詫びと言っては何だけど、街を案内するくらいなら……」
「……ふふ」
必死に言葉を口にしているリィナの横で、密かに笑みを浮かべているアメノウズメ。そのまま雪咲の肩に手を置き、そっと言葉をかける。
「この子、どうやら貴方と一緒に街を回りたいみたいですよ。私は一人でも大丈夫ですので、一緒に行ってきてあげてください」
「……っ!」
アメノウズメの言葉が聞こえていたのか、リィナの顔がみるみると赤くなっていく。それを見て察したのか、雪咲は優しく微笑み頷く。
「分かった……リィナさん、宜しくお願いします」
「は……はい!」
リィナは元気よく返事をし、雪咲の手を握ってそのまま外に出る。周りに居た他の皆は何かを察していたのか、その場でポカンっと呆けていた。引きずられるように連れて行かれた雪咲だが、嫌そうな顔は一切していなかった。
街に出てみると、先程まで静まっていた街中は賑やかさを取り戻していた。多種多様なエルフが居り、ダークエルフやハイエルフ等様々だ。だが、街の皆は雪咲を見るなりそそくさと視線を逸らす。だがリィナはそんな少し気まずい雰囲気の中でも雪咲に積極的に接してくれ、本当に楽しそうに振る舞ってくれていた。
「街の真ん中にある石の作り物、あれは噴水と言うものです。あそこから水が噴き出し、街全体に水を送り込んでいるんです」
「へぇ……あれは何ですか?」
雪咲が指差したのは、木の上に聳え立つ不思議な魔力の込められた石像。見た目は龍なのだが、何か不思議な感じがした。
「あれは数千万年前、世界を統べたと言われていた龍神様を讃える為に作られた石像だと言われています。けど現在は、この街を外的魔法・物理衝撃から守るための結界の核になっているの」
「……結界の核か」
「はい、いかなる攻撃も霧散させる結界です。これは禁術の一つとされているので詳しく教えるわけにはいきませんが、石像が核となってからは一度も破られたことはありませんよ」
「じゃあ街を探すのに手間取ったのは……」
「はい、結界が関係していると思われます」
〈……不可視の守りか〉
雪咲は顎にそっと手を当て、ぶつぶつと考え事をしていた。だがそれも束の間、先程まで地を照らしていた陽の光が雲に隠れ辺りは薄暗くなってしまう。街の人達の不安の声の中、小さく地揺れが起こる。
「きゃっ……!」
リィナは驚いて何かに捕まろうとし、雪咲の腕に触れそのまま抱きしめてしまう。雪咲は地揺れに慣れている為動揺はしなかったが、抱きつかれたことによって別の意味で動揺してしまう。
「ご……ごめんなさい」
「だ、大丈夫……」
2人は頬を赤らめ離れるが、続く地揺れに恐怖し再度雪咲に抱きつくリィナ。ふと空を見上げる雪咲、その眼には信じられないものが飛び込んできた。先程まで雲ひとつ無かった空を覆う分厚い雲、街の真上に飛んでいる巨大な影。よく見てみると、龍に見えた。
「あれは……」
「……っ!」
巨大な影は、街のすぐ近くに落下するように落ちていく。雪咲は嫌な予感が胸を駆け巡り、その場へ行こうとする。だが服を引っ張られ、前に進めなくなる。振り向いてみると、リィナが今にも泣きそうな眼で見つめていた。
「……」
雪咲が何を言っても、服の裾を掴む手の力は緩まなかった。
次話では、不穏な影の正体が……!
そして、明かされる石像の秘密!




