第26話 大海の主討伐!
次回は、アルステン王国に上陸した所から始まります!
立ち上っていた黒き煙は一体何なのか、アルステン王国に一体何が起きているのか……!?
ユリナはボロボロになった船内で雪咲を探そうと来た道を引き返そうとした、だがアーシュはとある違和感を感じた。それは、姿形は見えないのにまるで雪咲がすぐ側に居るような安心感があったからだ。
「一体どこに……」
雨が痛いほどに打ち付ける中、必死に空を見上げていると……人影が浮いているような幻覚に襲われる。いや、それは恐らく幻覚ではなく実際にそこに誰かが居るのかも知れない……人影を見た時アーシュは確信した。そしてその人影はゆっくりと手を上げ、そして素早く振り下ろす。
何をしているのかと思っていた瞬間、その者が着ていたと思われし服のボタンが弾け飛ぶ。まるでマントを羽織っているかのように大きな布は風に揺れ、その者が纏っている魔力は重苦しく時空が歪んで見えるほどに濃密だった、
「あれは……」
薄暗くて良くは見えないが、ぼんやりと雪咲だということが分かる。だがまるで人が変わったかのような表情で遠くを見つめている、同じ方向に視線を向けてみるとそこにはまるで龍のような魔物がうねうねと蠢いていた。それを見た瞬間、猛烈な嫌悪感に襲われる。
「っ……」
アーシュは表情を歪め、そっと物陰に隠れる。ユリナも何かを察したのか、アーシュの隣に来る。
「雪咲……」
「……大丈夫かな」
2人の心配は、豪雨の音に掻き消されて雪咲本人には届かない。
ここなら被害は余り出ないはず……
魔力を若干開放し、遥か上空にて魔物を迎え撃とうとする雪咲。魔力開放の影響でローブのボタンは全て弾け飛び、丈が長い分風に揺られひらひらと若干鬱陶しく思える。だがそんな事を気にしている余裕は無く、魔物はこちらに向かいすごい速さで向かってきていることが分かる。
「させるかよ!」
魔力を込めながら両手を前に突き出すと、少し分厚い魔力で出来た壁みたいなのが張られる。魔物がそれに体当たりをした瞬間、同じ力で弾き返されたかのように魔物は吹き飛ぶ。
皓との約束は、人相手には魔法を余り使わない……だったしな、問題ないだろう。
心の中で自己完結し、更に魔力を高めていく。その影響で雷は更に激しくなり、風は鎌鼬かと思うほどに痛く吹き付ける。だが一瞬で終わらせる為、魔物に狙いを定める。両手を突き出したまま掌に魔力を集め、やがて大きなエネルギーの塊になる。
一度やってみたかったんだ……
気が付くと頬が緩んでいたが、気にせずエネルギーの塊をどんどん大きくしていく。それに焦ったのか、魔物は急速接近してくる。口の端から紫色の液体が少し溢れている所を見ると、溶解液をぶち撒ける準備をしているみたいだ。エネルギーを集めつつ観察していると、いつの間にか魔物はすぐそこにまで迫ってきていて背後から雪咲を思い切り鷲掴みしてくる。常人なら肋骨の半数以上はへし折れそうな圧力だが、魔力を通したローブのおかげか一切のダメージは無かった。
「これでお仕舞いだ……!」
集め大きくなったエネルギーの塊を魔物の方に向ける、そこから発射されたのは三日月形のような薄っぺらいものだった。だが数は多く、魔物を覆う程の量だった。
少しの間静かな時間が過ぎる……それもほんの一時、次の瞬間には魔物は鋭利な刃物にスッパリと切り裂かれたかのようにバラバラになり、船の甲板の上に落っこちる。雪咲は魔力を足元に集め、ゆっくりと甲板へと舞い降りる。
蛇と龍の中間辺りだった大きな魔物は、すっかり変わり果てただの肉塊へと変わってしまった。相変わらずのチートぶりに、内心苦笑気味だった。船に損傷は無いかと思い振り向いた矢先、すぐ傍の足元がポッカリと大穴になっていた。
「……」
中に居た団員や船員達は無事かなと思いつつ、船だけの時間を一日前に戻し損壊を”無かった事にする”。これも想像魔法の一つで、現実世界の方で言う所の”時戻し”だ。一応こっちの世界でもあると雪咲は知っていたのだが、代償が無く魔力だけを消費する想像魔法の方が瞬時に発動できると思い使ったのだ。
だが想像魔法でも時間を操作するには膨大な魔力が必要になり、雪咲は疲労の色を浮かべながら空を見上げる。さっきまで黒雲が立ち込めていた空には青空に、真っ白な雲がプカプカと浮かんでいた。まるで先の大嵐状態が嘘みたいに消え去り、雲の隙間から差し込む陽の光が眩しく思えた。
「雪咲……!!」
「……雪咲!」
雪咲は声の主の方に視線を向けてみる、そこには既に泣きかけたユリナと泣きそうな状態のアーシュが走ってこちらへと向かってきていた。そして2人の方へ体を向けた瞬間、飛びつかれ押し倒される。
「痛っ……?!」
船の床に頭を打ち付ける雪咲、そして倒れた雪咲を抱きしめながら声を抑え泣きじゃくる2人。
「大丈夫……?ゲガは……無い……?」
「痛い所があったら……すぐに言って……!」
……泣くのか心配するのか、どっちかにして欲しいな……
内心苦笑しつつも優しく泣きじゃくる2人の頭を撫でる、2人は落ち着くまで少し時間を要した。
その後はてんやわんやで、どうやら加勢に来た船員達が武器を手に甲板まで飛び出すと辺りには魔物なんて何処にも居ない。さっきまで荒れていた状態が元に戻っており、頭の中が混乱していたらしい。少しの間魔物を探し回っていたが、雪咲の近くに落ちている肉片の山を見るなり大喜び。その騒ぎに気になった盗賊団員も甲板へと集結し、雪咲が魔物を倒したという事だけが広まりまるで宴状態になる。
雪咲は泣き止みかけているアーシュとユリナを必死に宥めつつも態勢を起こし、丁度近くに居たグランに魔物の肉の回収を異次元袋を渡しながら頼む。文句は言いつつもちゃんとやってくれている所を見ると、少し微笑ましく思えてくる。数分後にグランが回収を終え、異次元袋を雪咲に返す。それをありがとうと言いながら受け取り、懐へと仕舞う。
そんなこんなやっていると船長が突然声を上げる、内容はもうすぐアルステン王国港町側へと到着するとの事。しかし様子がおかしく、町の奥の方で黒い煙が空目掛けてモクモクと立ち上っているのが遠目からでもはっきりと分かる。
「これは……少し急ぐぞ!!嫌な予感がしてならねぇ……」
船員達は駆け足で操舵室へと戻り、面舵一杯と叫びながら港町を全速力で目指す。大きな不安を抱えながらも、雪咲達はアルステン王国へと上陸するのだった……。
夜眠れなくなり入眠剤を飲むことにしている秋水です、それを飲んで書いたせいかかなり怪しい感じになってしまっているかと思います。
後日改めておかしいところは修正致します。




