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チートを貰ったが、異世界では……。  作者: 月詠 秋水
第2章 リオーネ編
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第14話 交差する思い

ユグドラシルの封印の中へと入ってしまった雪咲、そこで出会ったのは龍神のアーシュだった。


そこで雪咲は、古代封印魔法 ユグドラシルの名を聞く。


アルザース帝国の大図書館で名前だけ知っていたが、実際はとてつもないものだったらしい。


想像魔法でユグドラシルの封印を解く雪咲、一段落したかと思っていたらそこに現れたのはまさかの眞弓だった!


この後の展開はいかに……?!


「ゆ、雪咲くん?!」


眞弓は思い切り雪咲に抱きつく、それを見ていたアーシュはぷくっと頬を膨らませる。当の本人は動揺し、一歩も動くことが出来なかった。


「え……え?」


戸惑いのあまり同じことしか言えなくなっていた、何故先に旅立った眞弓の方がこんなところにいるのか雪咲には分からなかった。


「何でここに……」


何とか気を取り直し此処に来た理由を尋ねる、すると眞弓は無邪気な微笑みを浮かべる。


「何となく散歩してたら、ふら~っとここに着いたの」


要するに、気まぐれ出来たということだ。小さくため息をつくと、背後から視線を感じる。ゆっくりと振り向いてみると、アーシュが今にも飛びかかりそうな勢いでこちらを睨みつけてきていた。


「……」


これはまずいと、雪咲は眞弓を引き剥がす。すると、眞弓はしょぼくれたように俯いてしまう。しかしあのままでは確実にアーシュは襲いかかってきていただろう、そうなればここらへん一体は焦土と化すかも知れない。それだけは避けたい事態であった。


「ごめん……だけど、いきなりは……」


「ううん……こっちこそごめんね……」


さっきまで少し上がり気味だった眞弓のテンションは、急激に下がっていくのを感じる。


「所で、何で雪咲くんがここに……?」


「それは……」


皓だけに打ち明けた盗賊になる話、それを言うかどうかで迷っていた。正直言っても良いのだが、その後どう反応するかが分からない。事と次第によってはこの後身動きを取り辛くなってしまう可能性もある、それだけはどうしても避けたかった。雪咲は本音では眞弓や冬望に嫌われた所で元の世界に戻れないのだから痛くも痒くもない、だが皓は唯一の男友達というだけあってあの2人よりも思い入れがある。だから皓にだけは、絶対に見限られたくないと思っていた。


どうするか決めあぐねていると、アーシュは思い切り雪咲の左腕に抱きついてくる。


「雪咲は私を呪縛から解き放ってくれた、だから私は雪咲のもの……」


その言葉に、眞弓は何とも言えぬような顔をする。泣きたいのやら笑いたいのやら、複雑な表情だった。拳を固く握りしめ、全身は震えている。


「わ、私のほうが雪咲くんとの付き合いは長いんだからね!」


「関係ない、これから親密になっていければ……」


「関係ある!だって……私は雪咲くんが……」


「……見れば分かる、けど負けない……」


「……っ!」


それ以上何も言えなくなった眞弓は、その場から走って去ってしまう。アーシュは悔しくて逃げたと思っていたらしいが、瞳から溢れ出た雫を雪咲は見逃さなかった。


「全く……」



…………



「はぁ……はぁ……」


全力で走り息を切らした眞弓、少し休もうと森の入り口の近くの木にもたれかかる。視線だけで森の中を見るが、何もないのを知り空の方へ視線を移す。目を閉じると次々と溢れる熱い液体、瞳から頬へと流れ落ち……地面へと溢れる。


「雪咲くんの……馬鹿……」


独り言のように呟くと、すぐ近くの草むらからひょっこりと雪咲が出てくる。それに眞弓は一瞬驚くが、またすぐにふいっとそっぽを向く。


「……ごめん」


雪咲は申し訳なさそうに言葉を発するが、眞弓はそれに一切返答しなかった。それを言いたかっただけなのか、言い終えると森の中へ戻ろうと歩いていってしまう。


「……」


本当は呼び止めたいのに、さっきあんな冷たい態度をとってしまった眞弓は声をかけることすら出来なかった。本当はもっと話したい、色んな事を話したいのに……言葉が出てこない、眞弓は心臓を握りつぶされたような何とも言えない感覚に襲われる。


遠ざかる雪咲の背中を見送っていると、突然歩く足を止めちらっと振り返る。そしていつも通りの優しい笑みを浮かべ……


”死ぬなよ……”


声は聞こえなかったが、そう言っているように感じた。そして雪咲は、本当に森の奥へと消えてしまった。


「っ……」


眞弓はその場にしゃがみ込み、膝を抱え涙を流す。さっきあんなに酷いことをしてしまったのに、優しい言葉をかけてくれた雪咲に眞弓は嬉しさの気持ちでいっぱいだった。


「雪咲くんも……死なないで……」


泣きじゃくりながら、独り言の様に呟く。例えこの言葉が聞こえていなくとも、祈りが風に乗って雪咲に届くと信じて……。




「……」


「良いの、あのままで……?」


雪咲とアーシュは、少し離れた木陰から眞弓を見守っていた。アーシュの問に、雪咲は何も答えず小さく頷くだけだった。


「2人共素直じゃない……人間は気持ちを口にしないと、伝わらない……」


そんなのは分かっている、しかし雪咲は横に首を振る。


「伝わらないほうがいい思いも有るんだ……俺が眞弓の告白に答えたら、魔王討伐はどうする……?この気持が足を引っ張り、死なせてしまったら……俺は……」


冷静に言っているように見えるが、内心凄く動揺している。握った拳は震え、眉間にシワを寄せ、ギリッと言わんばかりに歯を食いしばっている。本当は雪咲だってきちんと眞弓の思いに応えたい、だけど起こった事態が事態なだけに無闇に答えるわけには行かなくなってしまった。


「じゃあ……雪咲は眞弓を守るために……?」


「……どうだかな、そう思ってるのは俺だけかも知れないけど……」


雪咲は小さく息を吐き、森の奥へと歩いていってしまう。


「……不器用」


聞こえない程度に呟くアーシュ、そして雪咲と共に森の奥へと姿を消すのだった。

ちょっとありきたりな話になってしまいました。


雪咲と眞弓のすれ違っているようで全く噛み合わない思い、今後どうなってしまうのか……?!


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