第92話 戦いの後
激闘を繰り広げていた雪咲とクレア、しかし雪咲の暴走により一時中断となってしまう。
クレアはとっさの判断で雪咲を別の場所へとゲートで飛ばすが、雪咲から出てきた黒い靄。その正体は先代魔王・ジルニトラだった。
彼女曰く、雪咲の暴走の原因は本人の気持ちが不安定だったからだという。そして、それだけを言い残して消えてしまったのである。
複雑な思いを胸に、クレアは雪咲を飛ばした場所へとゲートで戻る。
雪咲が目を覚ますとそこは薄暗い部屋の中、辺りに人の気配は無く必死に記憶を遡ってみる。
「えっと……確かクレアに変な闇のゲートみたいなのに放り込まれた所まではうっすらと覚えているんだけど、ここどこなんだろう」
乱れた髪を手櫛で整えながらもキョロキョロと辺りを見回してみる、雪咲が座っている場所はベッドの上だと分かる。余り手入れはされていないようだが、少しだけ埃っぽいが綺麗に片付いていた。寧ろ机と椅子とベッドしか部屋の中に家具が無い、とても簡素な部屋だ。それと同時に雪咲の頭の中で、現実世界での苦き思い出が脳裏を駆け巡った。
(そうだ、ずっと住んでいた家を離れる時もこんな感じだったっけな……)
しんみりとしつつもベッドから下り窓の外を見てみる、そこに広がっていたのは果てしなく黒い世界。草も生えてはおらず、あまつさえ太陽すら無い。そもそも空という概念すら無く、地平線の彼方は闇で覆われていた。
「何だここは……」
まるで死後の世界かと思えるような光景に、一人唖然としていた。すると突然、背後に魔力を感知する。振り返ってみるとそこには、クレアがゲートから出てきた。
「何だ、もう起きていたのか」
「魔王……クレア」
ピリピリと肌を刺すような魔力を身に感じつつも、平静を保たんと警戒心を最大へ引き上げる。その様子を見て少しため息をつくクレア、雪咲は少し疑問を感じたのか警戒を少しだけ緩める。
「何故……俺を助けた?」
「助けたつもりはないのだがな……強いて言えば気紛れだな」
「……」
その言葉を聞き、更に雪咲の疑問は深まっていく。
「クレアは……何故世界を手中に収めんとする?」
「それが我魔王の役目だからだ」
「何故人間と敵対する?やろうと思えば共存だって……」
「甘いな」
雪咲の質問に嘲笑うかの様に鼻で笑うクレア、その反応を見て少しむっとする雪咲。
「我らが努力しようが、今まで積み重なってきた怨恨は途絶えはせぬ。それこそ人間と魔族を同時に絶滅させ、新たな生命に共存させるように仕向けるしか無い」
「そんな……」
「大体我自身も争い続けることは、余り気が進まぬ。だが我がいくら魔族を静止したところで、人間側からちょっかいは必ず来る。負の連鎖という物は一度嵌ったら二度と抜け出せぬのだ」
「……じゃあクレアは、仕方なく魔王をやっていたと?」
「ふん……」
その言葉を聞き腕を組みそっぽを向くクレア、雪咲はそれを見て疑問が確信へと変わる。だが……。
(どうするか……ここでクレアを倒してしまうのは、何か間違っている気が。かと言って倒した報告をしなければ、人間サイドは納得しないだろう)
顎に手を当て考え込むも、何も良き案が思い浮かんでこない。そのまま無言の時が過ぎ、雪咲にとってはとても気まずい状況となっていた。するとふと脳裏にあることが思い浮かぶ、クレアと戦っていた時暴走した自分から何かが出てくるのを。あの時は黒い靄しか見えなかったが、それが解決策へのヒントになった。
「そうか!」
雪咲は閃いたと手をぽんっと叩く、クレアは不思議そうな表情で首を傾げた。
どうもお久しぶりです、秋水です。
皆々様、新年明けましておめでとうございます!今年もよろしくお願いいたします!(遅い)
最近仕事が不安定になりすぎて更新速度が遅くなっておりますが(元から不安定更新)、このお話を終わらせるまでは疾走するつもりはないので気長にお待ちいただけたら幸いにございまする!




