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謎の女と謎のボディーガード

 それからリンとは頻繁に連絡を取り合った。

 ビックリして顎が外れそうな超常現象を見せつけられ、落ち着けという方が無理である。声の主は何者なのか。はたまた宇宙からのメッセージか。そしてリンの能力とは一体……。

 疑問が山ほどある。リンに聞いても分からないと思う。この問題のカギを握るのは声の主であろう。


「その後、何か進展あった?」

「あれから何も連絡がありません」

「あれで終わったとは思えないんだよねぇ~」

「私もそう思います」

「なんかさ、どうしてもリンに会いたそうな……そんな感じだったから」

「私もそう感じました」

「気になって夜も眠れないよ」

「そういう時は精神統一ですよ」


 さすが宮司の娘。逆境を冷静に対処するその姿勢は見習うべき所である。


「じゃあ、何かあったら連絡して」

「はい。分かりました」


 バイバイと手を振って鳥居を出た。



 最近は不思議な事がよく起こる。作った事もない翻訳機を完成させ、目を疑う超常現象も見た。本当に現実なのか信じがたい出来事だらけだ。お陰で夜も眠れず悶々としている。リンは心を無にして瞑想修行しているらしい。俺にはそんな高貴な行動は無理である。

 俺流の気分転換は……。


「久しぶりにメイドカフェへ行くか!」


 俺が足げに通う「プリプリ萌えにゃん」というカフェ。ここで食べるオムライスとクリームソーダは格別である。推しのラムちゃんとまったりおしゃべり。もはや心のオアシスと言っても過言ではない。

 そうと決まればウカウカしていられない。脳内で交響曲を奏でながら神社の裏手にある長い階段を駆け下りた。


 階段を降りると目の前に大通りが広がる。大通りを渡り、目の前にあるコンビニの角を曲がって裏路地に入ると雑居ビルが立ち並ぶ。その中の一角にウサギのキャラクターが描かれたピンクの大きな看板がある。そこが俺のオアシスである。


「ラムちゃん元気かな」 


 心ときめく看板を見上げ、オムライスを「あ~ん」としてもらえる至福のひと時に各部位が目覚めた時、カップルらしき人に声をかけられた。


「すみません。この辺に万田明神ってありますか?」


 男女共に見た目からして日本人ではなさそうである。外国から日本を訪れた観光客だろう。この辺りは海外でも有名で、サブカルの名所としてガイドブックにも載っている。メイン通りには大きなキャリーケースを抱えた海外版オタクたちが聖地巡礼でウロウロしている。

「日本はいい所だ」「人が親切だ」それを世界に広める為には、ここは日本人代表として案内するのが良かろう。


「よかったら案内しましょうか?」

「本当ですか。助かります」


 2人を引き連れ、来た道を舞い戻った。



 それにしても外人は骨格が違う。男性は背が高く大胸筋がモッコリしている屈強なボディー。まるでプロレスラーみたいだ。仮に戦ったとしても俺みたいなひ弱なガタイじゃ一発アウトである。

 女性も綺麗な人だ。日本人の小さくて可愛い体系とは違い、おっぱいはボヨ~ンとしてるし、お尻もプリっとしてスタイル抜群である。髪型は茶髪のセミロング。年齢はちょっと上でおばさんっぽいが、なかなかどうして魅力はある。

 この豊満なボディーを、このマッチョが独り占め。夜はさぞかし激しい展開が……。


 い、いかん。妄想が止まらん!


 ただ、何だろう。後ろから殺気のようなモノを感じるのだが。




「この階段の先にあります」


 再び長い階段をゼイゼイ言いながら上った。


「ハァハァ。こ、ここです」

「ありがとう」

「い、いえ。どういたしまして」


 2人を案内して戻ろうとすると、


「ちょっと待って」


 女性に呼び止められた。


「何でしょうか?」

「ここに女の子はいる?」

「女の子ですか? たくさん居ますが」

「普通の子じゃなくて特別な子」

「特別? 名前は?」

「名前は知らないけど……」


 ここは無病息災、商売繁盛、ついでに恋愛成就と何でもありの神社だけに若い子が大勢お参りに来ている。巫女さんとして働いている子も沢山いる。だが、特別な子となると、たぶんリンの事だと思われる。


「特別かどうかは知りませんが、リンって子ならいますが」

「リンさん?」

「はい」

「知り合い?」

「まあ、仲がいいですね」

「会わせてくれる?」

「いきなりは難しいかもしれません。なにせ仕事中ですから」

「割と重要な事なの。早めにして下さる?」

「……」


 俺は鳥居をくぐってリンを探した。


 道を尋ねた時までは普通だったのに、到着した途端にタメ口の威圧的な態度は何故だ。俺はこれでも忙しい身分なのだ。ラムちゃんと至福のひと時が待っている。そんな中をわざわざ案内してやったんだから感謝してもいいだろう。もしかして日本人をナメてるのか。日本に来たからには、もう少し謙虚さってモノを学べよ!


 鳥居の向こうから、さっきより殺気が満ち溢れていた。



 頼まれればイヤと言えない性格である。高圧的な態度を取られても言う事を聞いてしまう自分が情けない。ブツクサ言いながら境内をウロウロ探し回った。

 ちょうどタイミングよく社務所からリンが出てきた。


「あっ、リン。ちょっと来て」

「何ですか?」

「いいから!」


 リンは足早に駆けつけた。


「あのさ、リンに会いたいって人が来てるんだけど」

「会いたい人?」

「そう」

「どんな人ですか?」

「高圧的なおばさん」


 そう言って鳥居を指さした。

 2人は軽く会釈をしてこちらへ向かってきた。そして俺の顔をギロッと睨みつけた後、リンに話しかけた。


「あなたがリンさん?」

「はい。そうです」

「私はディーナと言います」

「ディーナさん……ですか」

「この間、お話させていただいた者です」

「あっ!」


 この間の声の主。それが彼女であった。


 リンは声質で気付いたようだが俺は半信半疑だった。音声では悲しくも優しい雰囲気を感じた。いま目の前にいるおばさんは、どうもそれとは別人の気がする。

 もしかして適当な事を言ってたぶらかすかもしれない。この屈強な男と共にリンを手籠めに……。


「たぶらかしたりしませんし、手籠めにもしません!」

「がっ……」

「それと、私はおばさんじゃありません!」

「ゲッ!」


 こ、心を読まれた!?


「それとあなた。さっきからいやらしい事ばかり……」

「ディーナさん」


 隣にいた屈強な男が彼女の肩をポンと叩いた。


「まあいいわ。ところでリンさん、どこか落ち着いた所で話せますか?」

「話ですか?」

「これは重要な案件なので人に聞かれたくないのです」

「……分かりました。では、こちらへどうぞ」


 リンはそう言って、社務所にある自室へ2人を案内した。


「ここでしたら関係者以外立ち入り禁止ですので誰も来ないと思います」

「ありがとう」


 部屋へ入った女性は大きく息を吐き、ゆっくりした口調で話し始めた。


「驚かないで聞いてください。実は私は地球人ではないのです」

「え?」

「私は第3銀河から派遣された宇宙防衛軍のディーナです」

「……」


 今日ってエイプリルフールだっけ?



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