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花火を打ち上げて。  作者: 黒花
第5章 燃える赤い花
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第78話 同士たち

 駐屯地に着いたのは十四時前だった。


 遅めの昼食を取ることになり、敷地内に併設された食堂へと向かう。料理を受け取り、何処に座ろうかとキョロキョロとしていたら、第三騎士団の騎士さん達に声を掛けられ、同じテーブルへと座った。



「タクミさんでしたよね?前から時々王宮で見かけていて、いつか話してみたいと思っていたんですよ」


「本当ですか?ありがとうございます。タクミ・ヒムラです。二十三歳なんですけど、皆さんは幾つくらいですか?」


「俺二十二」「俺同い年だな」「俺二十二」


「やっぱり同世代だったんですね。俺の事はタクミって呼んでください。敬語もいらないので」


「よしっ、タクミも敬語なしだ!」


「今回はよろしく」


 テーブルに笑い声が上がる。初対面の人たちとの任務は不安だったけれど、彼らの声掛けのおかげでその不安も少しだけ取れた気がする。



「皆、今回の調査に選ばれたって事は全員火魔法持ち?」


「そう、ここにいるのは火魔法3持ちの奴らさ」


「この国は火魔法持ち自体が少ないから、結構俺たちでも珍しいって言われてきたんだよ」


「なのに…今年に入って直ぐに、異世界から来た男がまさかの団長と同じ火魔法特化!あの時は相当話題になったよな」


「え、そうなの」


 俺が話題になった?

 先日の祭りの中で聞いた俺の噂を思い出し、少し気分が重くなる。


「なったな。魔法の上達は早いわ、早々に魔物に致命傷与えるわ、副長と二人だけで討伐するわで、騎士団の中は大盛り上がりだった」


「なのに待望の入団試験に彼の姿はなし!皆揃って落胆!ってね」


「ごめん、自分にはどうも合わなくて」


 どうやら結構早い時点で俺の存在は騎士団の人たちに知られていたらしい。まあ、学園ではガルベラと一緒にいるから当然なのかもしれない。


「いいさ、自分が本当にやりたい事をしていけば。この国はそれが認められている国だから」


「…本当いい国だよね、この国」


 国のトップがいい人たちだと、周りの人たちもいい人たちばかりになるのだろう。そう思い料理を口に運んだ。



 食事が終わると皆で集まり、明日の予定や花の情報共有の時間となった。


「今回、見つかった新種の花は赤い花だ。


 一昨日、巡回をしていた調査団が発見した。深森に入って直ぐの川沿いに群生があったという。


 また先月からこの近辺で魔物の死体が大量に見つかった。何かこの新種の花と関係があるのかもしれない。心して調査するように」


 団長の口から魔物の死体、と聞いて背中がゾクリとする。


 深森に住む魔物ってどういう外見?どういうサイズ?あとで騎士さんたちに聞いてみよう。



 ランタナ王子と団長からの説明を聞いた皆は、それぞれの部屋へと戻っていく。


 そんな中、俺は一人残って机に広げられた地図を頭に叩き込んだ。土地勘が無いからだ。

 いくら皆で動くとはいえ、万が一逸れてしまったら一人で戻ってこなければならなくなるのだから、ちゃんと覚えた方がいいだろう。


 何度か復唱をしつつ、メモもとっていく。これだけあれば大丈夫かと思いながらも確認のため再びじっと地図と睨めっこしていると、視界の端に深緑のスカートが見えた。


 ふわりと花の香りがする。


「緊張してる?」


「もちろん緊張してる。初めての事だらけなんだ。


 日本にいた頃は、日常で森まで行く事なんて殆ど無かったし、こうして馬に乗って遠くまで来たのも初めて。

 皆の足手纏いにだけはならないようにしなきゃな、って思う」


 顔を上げると彼女と目が合う。


「…今回ね、拓巳くんが調査に参加するって分かって、複雑な気持ちだったの」


「どうして」


「出会った頃、魔法の事で凄く悩んでいたでしょう?


 なのに今回、火魔法持ちだからという理由で強制参加になって…勝手な事をしてしまったと思ったの」


 静かに地図を眺めながらぽつりと話をするロゼ。そうか、出会った頃からよく話していた俺の魔法のこと。彼女は俺を心配していてくれてたんだ。



「確かに悩んでいたね。今でもこの魔法をどう活かしていこうか明確にはなっていないよ。

 でも、ここに来てから半年過ごして、思った事がある。俺はこの国が好き、この国の人が好き。この国に来れて良かった。

 この国の為に俺にも何か出来るなら、協力したい、そう思う。


 ロゼのお父さんお母さんが命を賭けて守ったこの国を、俺なりに助けられたら、と思うよ。

 今回の参加はちゃんと俺の意志で参加してるから、大丈夫」


「拓巳くん…ありがとう」



 しばらくロゼリスと話をして、そして今日寝泊まりする部屋へと戻った。扉を開けると「おかえりー!タクミ!」と中から声が掛かる。


 そう、今日泊まるのは大部屋で、昼食を一緒にした第三騎士団の騎士さん達と一緒の四人部屋だ。


 流石は同世代。

 雰囲気が馴染みやすくて、皆でワイワイ話す感じは大学時代の仲間を思い出した。そこで俺は彼らに聞きたかったことを質問する。



「なあ、魔物ってどんなものがいるんだ?」


「深森のか?そうだな、大きさや種類はそれぞれだからな。小型中型が多いが、偶に大型のものも出る」


「魔物ってどんな魔法とか使ってくるの?火?」


「それも俺たちと同じ。単体で魔法を使うのもいれば、複合魔法の型もいるな」


「まあ、小型中型の魔物は持ってる魔力がそもそも少ないから、使ってきても魔法は一回くらいだよ。簡単に倒せるさ」


「そうなのか…大型が出ない事を祈るのみだね」


「ははは、そうだな!」



 皆と話をしたり、明日の準備をしたりして、それからここまで俺を乗せてくれた馬の手入れをして。



 あっという間に夕飯の時間になった。


今度はランタナ王子から声を掛けられたので、そちらのテーブルへと向かう。

 王子に団長、そして二人の副長と俺、そしてロゼリスだ。


「今夜は休めそうかい?」


「はい、騎士さん達とも早々に打ち解けて、過度な緊張は解けた気がします」

「それは良かった」


「そういえばマスター、先日のお祭りでゼリーの売れ行き絶好調だったそうですね」


「ああ、自慢したい程の物凄い人気だ。この調子で人気が続くなら、喫茶店とは別に専門店を開こうと思っていてね」


「え、おじさん、新しくお店開くの?」


「ええ、ロゼ様。祭の時の屋台に出したのはほんの一部で、他にも沢山の種類を用意しているんですよ。

 今度また、お店に来てくださいな。一押しのものをお出ししますので」


 先程の皆の前に立って説明していた時とは打って変わって、完全に喫茶店モードのマスター。


「…騎士団本部にもたまには顔を見せてくださいね」


 グロリオさんは呆れ顔だ。



 俺の前には第一騎士団副長のカランさんが座っている。


 王宮を出てくる前に挨拶したきりだったから、話したいと思っていたんだよね。


「カランさんは若いのに副長をされていて優秀なんですね。何魔法を使われるんですか?」


 隊服から私服に着替えてしまった今、彼の胸には徽章が付いていない。話題のためにも聞いた方がいいと思って尋ねてみる。


 すると隣から大爆笑が聞こえた。


「マスター、俺何か変なこと言いました?」


「はははっ!タクミ、彼はお隣の王子の倍は生きている孫持ちのお祖父さんだ!久しぶりにその反応を見た!ははは!…可笑しい!」


 目の前の彼に視線を戻す。黄緑色の髪と瞳の彼は、どう見ても俺より歳下の、それこそガル達と同い年くらいに見えるのに。


「へ?王子の倍?!ま、孫がいるんですか?!す、すみませんでした」


「いいんです、タクミ殿。私もこのような外見ですから」



 声も若い。けれど、話し方は物凄く落ち着いてる。


「私は土1光2闇2ですよ。


 光魔法と闇魔法を共に持つ持ち主は、外見があまり歳を取らない不思議な体質があるんです。


 …もう国民は皆周知の事だと思っていたので、久しぶりの反応がなんだか嬉しいです」



  ひぇ…ここにきてまた新たなファンタジー設定に出会した。光と闇を一緒に持つ…って事は、トレチアさんも今後外見は大きく変わらないのだろうか。


 彼の顔をマジマジと見てしまう。光魔法と闇魔法を持つ彼が副長となると、やはり気になるのはその上に立つ団長さんだろう。


「副長のカランさんでその珍しさってことは、第一騎士団の団長さんは何魔法の方でどんな方なんですか?」



 しんっと会話が途切れる。あれ?俺また変な事言った?


 向かいのカランさんは首を傾げている。

 隣のランタナ王子は眉を顰めていて。

 その隣のグロリオさんは真顔で俺を見ていて。


 向かいのマスターは驚き顔。

 ロゼは首をこちらにしっかり向けて眉を顰めてる。


「拓巳くん、王宮学園の学園長が第一騎士団の団長さんだよ?闇の特化型」


「…学園長?」


「タクミ、もしかして知らずに学生生活送っていたのか」


 記憶を辿るも該当する顔が浮かばない。


「いや、学校集会とかでもいつも不在で、…もう全く顔も名前も覚えてない。学園内で会ったことあるのかな」


 思い返してみても、この半年でそういう場面に出会した事は無いはずだけど…。



「おかしいな。確かタクミの魔力鑑定は彼に依頼したはずなんだが」


 ランタナ王子が眉を顰めながら口を開いた。


「鑑定?…もしかしてあの研究員っぽいおじさんですか?!あの人が、団長で学園長?!」


「あーそうそう、研究員であっているな。あいつは魔法学研究所の研究員と掛け持ちしてる奴だから」


 マスターがうんうん、と頷いた。


「えー…学園長…」



 思い出そう。はじめてあったのは城の中。そして入学して直ぐの、あの魔力の流し方と鑑定をしてくれた白衣のおっちゃん。早々に俺がその場を去ったから、あの時は殆ど話をしていなくて。


 その後もたまーに学園内ですれ違うと「上達したかい?」なんて声掛けてくれたおっちゃん。いつも白衣だから勝手にどこかの研究所の人なのかと思ってた。


 いや、研究員なのは間違って無かったんだけど。



「異世界人の鑑定だから、彼に依頼したんだよ」


「……この国の掛け持ち制度、やっぱり変ですよ…」



 がくりと項垂れた俺の言葉を聞いて、マスターがまた爆笑していた。

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