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花火を打ち上げて。  作者: 黒花
第2章 夜空に高く昇る
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第28話 未知の魔法石

 からりと晴れた青空から太陽の光が照らす。


 長く続いた雨は数日前を境に降るのをやめ、街中に咲いていた春の花々は緑へと変わり、そして新たな季節の花々が色を着けていた。


 少し前までは夜になれば部屋を暖かくしたり、外に出る際は服を重ねなければ寒く感じる日もあったのだが。ここ数日の間で一気に気温は上がっていった。



 夏が始まったようだ。


 日本の煮えるような強烈な暑さ程ではないものの、少し動くと汗が出る。


 そのくらいには暑い。



「さて、今日は皆の結果をまとめることにしよう」



 ガルベラが皆の前に立って指揮を取りはじめる。


 来週、ついに建国記念日を控えた今日は、魔法石作りの結果をメンバーで共有し合う日になっていた。


 いつものように教室の机をガタガタと動かし合わせて並べると、椅子を囲うように置いて皆で座る。


 メンバーが各々自分の鞄などを漁り、それぞれが手元に包みを用意する。


 ガルベラがナタムへ視線を向け。


 ナタムは袋の口を開き、じゃらりと音を立てながら三色の石を机に置いた。



「じゃあまず僕の結果ね。


 ナタム、水魔法3土魔法1火魔法1の基本複合型です。


 土魔法と火魔法のみの魔法石は、小さいのが一つずつで、色はそれぞれ黄色と赤色でした。


 複合魔法の石の大きさは計三種類で、術の内容は関係なく、色は全て青色です」



「そうか、やはり作り主の魔法の型によって、術魔法の石の色は違うんだな」



 ガルベラが、やや身を乗り出しながらナタムの石を観察している。

 俺も椅子に座りながらもナタムの石を見る。



 色の違う石が机に並んで、なんともザ・魔法石って感じがして格好いい。


 ナタムの魔法石を見て、他のメンバーも自分たちの作成した魔法石を置きはじめる。


 そして自己の魔法石の特徴を話していく。



 皆、ナタムと同じように基本魔法を二~三種類扱える複合型だった為、説明が終わる頃には机の上が三色の石で埋め尽くされていった。



「なるほどねぇ。ここまでの結果を聞く限り、僕たち基本複合型の魔法石は、皆こんな感じみたいだね。


 そうとなれば気になるのは二人の結果だよ。

 はい、そうしたら次はタクミの番」



 ナタムに促され皆を見ると、興味津々の眼が一斉にこちらに向けられていて、俺は少し構えてしまった。


 もの凄い期待をされている気がして、こういうのはちょっとだけ苦手な空気だ。

 一旦深呼吸をして気持ちを落ち着かせると、俺は魔法石を入れてきた袋を開けた。



 一つずつ取り出しながら皆に見せていく。


 まだ何も言っていないけど、皆がそれぞれ「凄いな」とか「大きいな」とか言い始めた。



「俺の結果です。


 タクミ・ヒムラ、火魔法5の特化型です。


 魔法石の大きさは全部で五つで、術魔法の石も色は赤い色なんだけれど、この一番大きい石だけ、一部に青い色が入っていました」



 先ほどまで身を乗り出していたガルベラは、椅子に座ったまま静かに俺の話を聞いていて。


 その代わりにガルベラ以外の全員が身を乗り出して、俺の石を観察し始めた。


 もちろん、その対象は青い色の混じった大きな石である。


「……なんで、これだけ色が違うんだろう」


「タクミさんって水魔法は使えないですよね?」


「うん。俺は火魔法しか使えないよ」



 そう、魔法石を作っている中で、一番大きなサイズの石だけ、色が混ざっている物ができたのだ。


 それはロゼリスにあげた魔法石と同じものだった。



 一同がしん、と静まったタイミングでガルベラが立ち上がり、袋から魔法石を机に並べ始める。



 小さなサイズの石から順に並べるガルベラ。


 手元の石は黄色の石だ。



「私のもタクミと同じ法則だったから、先に見てほしい。


 ……ガルベラ・グランディーン、土魔法5の特化型だ。


 魔法石の大きさは全部で五つ、色は全て黄色。


 だが土魔法5の術で作った時だけは、石の中に金色のものが混じっている」



 彼が最後に取り出した魔法石。それを透かすように持つと、日の光が当たって石の中がキラキラと金色に輝くのが見えた。



「魔法石、っていうより天然鉱石みたい」

「王子様の魔法石って感じがあるよね」


 皆が口々に感想を言い出した。


 黄色に金色。それは琥珀のような色合いだ。だが俺にはこの魔法石、旅行先でよく売っていたべっこう飴に見える。絶対に言わないけど。



「正真正銘、本物の王子だからな……って話を戻すぞ。


 私とタクミが特化型であることから、各魔法5の魔法石のみ別の色が混じる可能性が考えられるな」



「「へぇ……」」



 皆が各々の反応を見せる中、俺は彼の魔法について考えていた。彼はこの色の混じった魔法石が土魔法5の術の石だと言っていた。


 だが俺はその土魔法5の術について見たことも聞いたことも無かった。


「ねえ、ちなみにガルベラが使えるこの5の魔法って何?」



 以前、魔物退治の時に見た彼の土魔法。あれが3〜4くらいの威力だと言っていたから、5レベルがどんなものになるのか気になる。


「ああ。まだ実践で数回しか使っていないが……土地の回復魔法と言えばいいか。


 干ばつなどで痩せた土を回復させたり、劣化した建造物を新しくしたり、植物を急成長させるために土の成分を動かしたり出来るものだ。



 ……そうか。その時は確か術の範囲内が僅かに明るくなるのだが、もしかしてそれがこの石の金の部分を示すのか?」



 彼の中の最上級レベルの土魔法が発動するという魔法石。


 しかもその術は土地の再生という優れた術で。


 それが金混じりの石というのは、なんだか納得がいく気がする。



 俺が彼の魔法石を見つめる隣で、彼は俺の魔法石を見つめている。


「タクミ。私からもいいか?


 私は土魔法5の魔法が使えるから、それをもとに魔法石を作ったのだが……いつの間にタクミも最上級魔法が使えるようになったんだ?」


「へっ?」



 俺が最上級魔法を使えるようになったって?


「いやいや、まだ一度も使えたことないよ? そもそも術も知らないし。


 本当に最近やっと火魔法4がたまに出来るかな〜ってくらいになったばかり。


 だって俺、今ガルベラがちゃんと説明してくれたから、これの魔法石が俺の火魔法5の石だってことに気付いたくらいだし」


「なるほど。自分の最上級魔法が、どんなものか分からない、と」


 ガルベラは何かを考えはじめ、横ではナタムが「それはそれで大きな発見じゃない?」とメモをとっていた。



 どういう事だ? 整理しよう。


 最上級魔法の術を知らない俺。

 だが目の前には最上級魔法の術の石がある。


 そうか。つまり俺は、まだこの目で見ぬ己の術魔法を、先に魔法石だけ作ってしまったようだった。



 早とちりもだいぶいい所である。


 頭の中には自ずと石を渡した彼女の顔が浮かんだ。



「……やっぱり自分の魔法なのに、見たことも使ったことない魔法石って、危険かな」


 隣ではナタムがペンを持つ手を止めて、宙を見つめている。



「えーなんで? 別に自分で使おうとしなければ問題ないじゃん……


 ……ってもしかしてタクミ、魔法石どこかに失くしたりしたの?!」


「いや、……その、他人にあげちゃった」


「はぁ?」



 嘘をつくわけにもいかなくなって、正直に申告すればナタムが信じられない、という目で見てくる。



 うう、反省します。ごめんなさい。

 流石にやはり得体の知れないものを人にあげるのは良くなかったか。



「……あー、まあ大丈夫じゃないか? 多分」


「多分ってまたガル様の得意な勘? 本当に大丈夫なの?」


 すかさずガルベラがフォローしてくれる。すみません、本当、俺一人勝手な事をしてしまいました……。



「そう、得意の勘さ。気にするな。


 それでタクミは作る時にそれまでとは違う、何か特別な事はしたか?」


「うーん特に……」



 彼に促され魔法石を作った時の事を細かく思い出す。


 確か。あの石は、彼女の事を想いながら作ったら出来たのだ。



「願い事、をしながら作った」

「願い?」



 そう、願いだ。


「俺、自分が火魔法を扱うことに、まだ慣れない部分があるんだ。


 それで、その攻撃魔法だけじゃなくて……持ち主の、俺の魔法石を使う人の事を守るような効果をください……ってお願いしながら作ったらこうなった。


 ガルベラはどう思う?」


 もしも最上級魔法の術が。そういう誰かの事を想いながら発動する類のものだとしたら。

 辻褄が合うような気がするのだ。



「少し言葉が違うだけかもしれないが。

 願い、というよりは私は祈りだな。

 私もこの魔法を使う時は、祈りながら使う。



 もしかすると、各魔法の5の魔法石は、作り手の想いが色として表れるのかもしれないな。


 タクミ、どうやら己の術の心配をしていたようだが、その感じだとその術は守備魔法のような術なのではないか?」



「守備の魔法……」



 それって結局どういう魔法? 分からず顔を向けるとガルベラは魔法石を眺めながら笑っていた。



 その笑顔の中には、単なる発見への喜びだけではなく、更なる魔法石の可能性への期待が含まれている気がする。


 彼はこの国の王子だ、国の発展や利益になるものを、こうして探すのも王子としての務めの一つなのかもしれない。



 隣からねえねえ、と声が聞こえた。


「タクミはさぁ、実際に自分の石を使って術が発動できた?」


「この一番大きい石以外はね」


「私も最上級魔法の石だけは発動ができなかった。

 効果が大きすぎるからか、単に発動したところで意味を成さないからなのか、城で試した限りでは使えなかった」



 そうなのだ。念のため、自分で作った魔法石の術が正しく発動するか試してみたのだけど。何をしても火魔法4までの術しか発動出来なかったのだ。



「そうかぁ。いつどこでも発動できるって訳じゃなさそうだね。


 強い術の魔法石ほど、本気で使わないと駄目な時以外は術が発動しなかったりして」


「魔法石の発動条件については今後の課題だな」



 皆の意見が飛び交う。

 そんな中、俺は再び彼女の事を考える。



 術の効果の分からない、未知の魔法石を彼女に渡してしまったと気付いた時にはどうしようかと少し心配した。


 が、同時に多分大丈夫な気もした。


 火魔法の魔法石など彼女が使う可能性は限りなく低いだろうし、そもそもあれは御守りとして作ったものだから。


 恐らくきっと、万が一発動したとしても、その想いに準ずる術魔法だと思いたい。



 会話が一通り終わったタイミングで、ガルベラが「そうだ」と袋の中を再び漁る。


 まだ何かあるのだろうか、と皆が視線を移すと。



「全能型のトレチアに作ってもらった、彼女の石だ」


 机にコロンと置かれた魔法石。


 バッチと同じ、五色のマーブル模様のビー玉だ。



 それが目に入るとその瞬間、この日一番の皆の歓声が教室中へと響き渡った。


 俺とガルベラは目が合った途端に笑い合う。


 魔法石の見栄えにも、上には上がいるということを。

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