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52.馬服子の名望

 藺相如が趙括の前に来ると、趙括は急いで一拝した。藺相如は彼を起こして、微笑みながら、

 「外は風が強いので、早く私と部屋に入ってください。」


 藺相如と趙括は屋敷に入り、藺相如の家臣と戈はその後ろを歩いた。戈は時に眉をひそめ、時に笑い出した。


 家臣と藺相如は不気味に思って、

 「あなたの家臣に何かあったのですか?」


 趙括は困ったように首を横に振り、

 「私は彼と道である老人に出会ったことがあって、その老人が荀子だと教えたら、こんな風になったのです。」


 藺相如はヒゲを撫でながら、

 「私もその件を聞きましたよ。あなたが荀子を助けたとか。」


 趙括はぎょっとして、

 「荀子が教えたのですか?これは取るに足らない小さな事です。」


 「些細なことからしか、人の品格が分かるのです。あなたはの道理を知らないのですか?」


 「勉強になりました。」


 二人は部屋に入り、腰を下ろして座った。


 「藺公の助けには非常に感謝しています。藺公がいなければ、私の策はきっと失敗したでしょう。」


 藺相如は少し不快な顔をして、

 「国を救う事はあなただけのことではありません。私たちは年を取ったが、趙国を思う気持ちはあなたにも劣りません!」


 趙括は笑って、

 「まさか....こんなに多くの人が来てくれるとは思いませんでした。」


 藺相如も笑って、

 「あなたが王宮に入れなかった時から私はすでに上君が考えていることが分かりました。故に私は楽毅将軍を訪ねた。楽毅将軍の頭がはっきりするときは少ないが、あなたに何かあったと聞いたら、彼はもう一度目を覚まし、

 “騎劫が趙括を襲おうとしている!”など叫んで、私と王宮に来たのです。」


 「ハハハ....田公は?私にはどうしても彼が来たことが分かりません。」


 「私が楽毅将軍と彼を訪ねたときに彼は本来、王宮に来る気はなかった。しかし、楽毅将軍は彼を見て、

 “趙国の趙括は斉国の田単と似ている。”と言ったら、田単もついてきたのです。彼が口を開くことはなかったが、彼が来た以上はすでに自分の立場を上君に伝えているのです。」


 藺相如はまた笑って、

 「荀子と龐公は道でバッタリであったのです。荀子は本来龐公に会いに来たのだが、あなたの事を聞いて、一緒についてきたのです。」


 荀子のことを考えると、趙括はとても落ち着くことができなかった。荀子!!前世でも彼の著作を何度も読んだことがあり、孔子、老子と同様に仰がなければならない存在である。受験勉強の古文でも見たことがある。


 よく無知で愚かな人がいる。文明の巨人の肩の上に立ちながら、頭を下げ、軽蔑するように巨人に向かって唾を吐いて、

 “封建で愚かな巨人め!”と罵る。

 自分の知識で傲慢になって:昔の人は飛行機を作れるのか?宇宙が分かるのか?と恥知らずに言う。


 こうして見れば、もしかしたら過去の人は失敗したかもしれない。少なくとも、謙虚と尊敬の道理を後世に残すことはまだまだ少ない。


 趙括は深く息を吸って、予想はあったが、

 「龐公とは何者ですか?」


 「彼は龐煖(ほうけん)と呼び、趙国の老臣である。上君から臣下で、彼を尊敬しない者はいない。」


 「老臣?藺公と同じですか?」


 「私とは違います。彼は武霊王の臣下で、私があなたの年齢の時に、彼はすでに私の年齢だった。」


 趙括は目を丸くした。武霊王の大臣??オーマイガー!この龐公はいったい何歳なのだろうか?龐煖、廉頗....趙国の人は寿命が長いのか?


 趙括は慌てて立ち上がり、

 「今から龐公を訪ねてきます。」


 「彼はすでに邯鄲を出て、東武城に向かっている。」


 「はあ....このような老人まで....」


 藺相如は笑って、

 「それについては心配いりません。彼の体は恐らく廉頗将軍のように元気です。」


 龐煖は武霊王の死後、楚国に学問を求める旅をした。彼の体を心配する馬服君や董叔などはすでに老死した。藺相如は自分でさえ、彼より先に死ぬだろうと思った。


 二人はまたしばらく話し合った後に、藺相如は趙括の次の予定を聞いた。


 趙括は真剣な顔になり、

 「趙国は畑が欠けているわけではありません。耕作する人が欠けているのです。私は貴族の門客は非常に多いと聞きます。もし貴族たちを動員できれば、きっと役に立ちます。」


 藺相如は首を横に振り、

 「あなたの考えが成功するかはともかく、今は十月です。耕作できる時期ではないです。」


 趙括も首を横に振り、

 「貴族たちを動員するのは難しいし、確かに耕作に適した時期ではありません。しかし、らっきょう、ネギ、ニラはこんな時期でも成長できます。もし百姓たちを救うために、貴族の庭などに植えたら、良いことではありませんか?聞くところによると、すでに多くの人が木の皮を食べていると聞きます。」


 「貴族の口から栗米をほんの少しもらって、これらの野菜を加えたら、必ず多くの人を救うことができます。」


 「私はこれで食料問題が解決すると思っていませんが、平原君が戻ってくるまでに、この方法しか思いつきません。」


 「うん...」

 藺相如はうなずいて、

 「具体的にどうするつもりですか?」


 趙括は、

 「私は邯鄲城内の邯鄲造という少年を知っています。彼が多くの友達がいると聞いたので、彼に助けてもらうつもりです。」


 趙括が去る前に、藺相如は老いた家臣に服を取ってもらって、趙括にあげた。


 「外は風が強い。あなたがこのまま薄着を着ていては、病気になります。」


 趙括は礼を言って、服を着て去った。


 藺相如は庭に立って、周囲を見渡した。家臣は不思議に思い、

 「何をなさっているのですか?」


 「野菜を植える場所を探しています。」


...........


 邯鄲造(かんたんぞう)の父は邯鄲令の趙里(ちょうり)である。邯鄲造はまだ若いゆえに、父と別居していない。趙括が邯鄲令の屋敷につくときは、趙里が自ら迎えに来たのである。趙里は優しそうな人で、自ら迎えに来た。


 趙国において、趙括の名望はますます高くなり、貴族や官吏どころか、田舎の百姓たちですら彼を知らない者は少ない。趙里は嬉しそうにして宴会を開こうとしたが、趙括は慌てて彼を止めて、邯鄲造を訪ねに来たと言った。


 趙里は困惑そうにしたが、人を遣わして邯鄲造を呼んだ。


 邯鄲造は馬服子が訪ねに来たと聞いて、自分の耳を疑ったが、すぐに走ってきた。邯鄲造が走ってきたのを見た趙里は少し気まずそうにして、息子を一目睨んだ。それで邯鄲造はようやく落ち着いて、趙括に一拝した。皆は室内に座り、趙里の家臣たちはこっそりと中をのぞいた。


 趙里と邯鄲造は熱い視線を趙括に向けた。趙里も若者たちに空間を与えようともせずに、隣に座って、趙括をじっと見つめた。


 「実は、あなたに助けてもらいたいのです。」


 それを聞いた邯鄲造は嬉しそうにして、

 「造たちを戦場に連れていってくれるのですか?ずっと待ってました!」


 「いえ、そうではなく、私が平原君から食料を借りたことは知っていますか?」


 邯鄲造はまた目を輝かせて、

 「分かりました!!今すぐに家臣に命令して、倉庫にある半分の食料を差し上げます。」


 趙里はそれを聞いて、激怒して邯鄲造の頭をたたいて、

 「半分だと?!全部だ!すぐに私が各地に貯蔵している全部の食料を馬服子に送るのだ!」


 趙括はびっくりして、慌てて、

 「私は食料を借りに来たのではありません。この前は長平に十分の食料がなかったため、平原君に助けてもらったのです。しかし、今度は趙国の百姓たちの事です。今年の収穫は悪く、その上に何度も徴収されて、庶民たちの家にはすでに食料がなく、多くの人が餓死しています。」


 「私は趙国の人たちは仁義の君子だと聞きます。もし貴族たちが野菜を植えて、少し栗米を百姓たちに分け与えたら、必ず多くの人の命を救うことができます。私は邯鄲造の友達が多いと聞きましたので、彼に助けを求めに来ました。」


 邯鄲造が口を開く前に、趙里が笑い出して、

 「馬服子は仁義の人です。このようなことであれば、人を遣わして一言言ってくれるだけでよかったものの。あなた様の徳のために、上君から庶民まで、あなた様を尊敬しない者はいません。あなたを愛さない者はいません。」


 「私はあなた様に誓いましょう。趙国ではあなた様を助けたくない者はおりませんので、ご安心ください。」


 趙里が自信満々に言っているのを見た趙括は驚いた。


 いつから私の名前がこんなに効くようになったのだ??


 趙括はまだ知らない。


 趙国の貴族や官吏たちは趙括の友達になることを渇望している。今の趙括はまるで昔の平原君のように、彼をほんの少しでも助けることができたら、自慢できるのであった。そんな機会を見逃すわけもない。

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