真夏の男女6人物語 その1
またもや季節ネタです♪
突如降って湧いたスキャンダルも一件落着となり、カーリン達にようやく平和な日々が戻った。
「夏といえば、ギラつく太陽!! そして青い海!!」
部屋で拳を握って力説するチェリーに、カーリンが食いついた。
「海!? 行きたい!!」
カーリンは生まれてこの十七年間、海は見たことはあるが遊んだことはない。興味もなかったので今まで海水浴とは無縁な人生を送ってきたが今年は違う。
「日帰りだけど、カーリンも来る?」
「うん!! あっ、でもセドリックと二人で行くんだろ? 邪魔しちゃ悪いな」
カーリンは申し訳なさそうに上目遣いでチェリーを見やった。せっかくの恋人同士の時間を邪魔する無粋はしたくない。
「だったら、教官も呼べばいいじゃない」
「ミュラー少佐も?」
一瞬にして輝いたカーリンの表情が曇った。一緒に行けたら嬉しいが、彼は忙しい身だ。果たして来てくれるだろうか。
「夏といえば、ギラつく太陽!! そして青い海ですよね!?」
訓練を終えて、手洗い場で頭から水をかぶるアレックスの隣でセドリックが力説している。真夏の暑さでぐったりの上官はいささか迷惑顔だ。
そもそも、海ではしゃぐキャラではないとアレックス自身も重々承知している。
「そんなに行きたいなら、チェリーを誘って二人で行って来たらどうだ」
「ミュラー教官も一緒に行きましょうよぉ」
子どもみたいに駄々をこねる部下に冷ややかな否定の一瞥を送った。暑いこの時期には、凍りつく視線は涼しくちょうどいいかも知れない。
「カーリンも行きたいって、新しい水着買ったらしいですよ」
タオルで髪を拭くアレックスの動きが止まったので、これは脈ありと説得を続けた。
「俺が連れて行ってもいいですけど、目を離した隙にカーリンがナンパされても知りませんよ」
「ナンパ?」
アレックスの片眉がぴくりと跳ね上がる。
「あの美貌だもんなあ。ギラギラした男どもが群がってきたら俺の手に負えるかどうか」
まんざら冗談に聞こえず、次第にアレックスの顔は険しさが増していく。
「ミュラー教官が一緒なら安心なんですけどねえ」
「……いつ行くんだ?」
アレックスを説き伏せたセドリックは、心の中で勝利の雄叫びをあげた。もっとも、大半はそのチェリーの入れ知恵だが。
当日、四人で行く予定だったが蓋を開ければ、ランディとビアンカも参加して六人という大所帯となってしまった。
それぞれの車は定員オーバーなのでワンボックスカーをレンタルしたが、これまた手荷物でたちまち窮屈になる。
「いやあ、俺達も便乗しちゃって悪いな」
口にするほど悪く思っていないランディが二列目の席で笑っていた。
「それにしても日帰りとは忙しないわね」と、ビアンカ。
「みんなのスケジュールが合わなかったんです」
チェリーが助手席でジャンケンで負けたセドリックがドライバーとなる。
一番奥の席にはカーリンとアレックスが並んで座っているが、彼はお世辞にも夏向きの笑顔ではなかった。
「わたしとカーリン、水着を買いに行ったのよ。とっても可愛いやつ」
「あら、わたしも新調したわ。どんなのかは着てみてのお・た・の・し・み」
「どうせ派手なビキニだろ? 女の子と張り合うなよ、みっともない」
ランディの余計な一言で、狭い車内はたちまち大騒ぎとなる
「静かに座ってろ!!」と、アレックスに一喝されて二人はしゅんとなった。
「なんか、あいつがいると訓練生の合宿みたいだな」
「堅苦しくて嫌ねえ」
ランディがカーリンの方へ首を廻らして、先ほどの報復とばかりに質問する。
「アレックスって、二人でいるとどんな感じ?」
「へっ?」
「少なくとも、今みたいな風ではないわよね?」
返事に困って隣の恋人を見ると、「相手にするな」と睨んでいる。
「そりゃもう、こっちが恥ずかしくなるくらいベタ甘ですよ」
チェリーも参戦して、カーリンはますます混乱して目が泳ぎっ放しである。セドリックもルームミラーで上官の表情を窺っていた。
「え? え?」
「お前等、いい加減にしろ。カーリンを困らせるな」
「だったら、あなたが答えればいいじゃない」
「なぜ俺が答えなければならない!?」
憮然としたアレックスは、頬杖をついて窓の景色に視線をそらす。
「あーあ、こんな融通の利かない男だとカーリンも苦労するな」
「ほんと、つまらないやつ」
ランディとビアンカが代わる代わるため息をつくと、カーリンが叫んだ。
「そんなことないです!! 時々意地悪するけど、頭を撫でてくれるし抱き締めてくれるし……、うぐっ」
アレックスは突然の暴露にぎょっとしてカーリンの口を手で塞いだが、同期カップルはしたり顔でこちらを見ている。
「ふうん。ちゃんと彼氏してるんだ、感心感心」
ニヤニヤしながら、それぞれ前へ向き直る彼等にアレックスは渋い顔だ。
「わたし、何かマズいこと言いました!?」
アレックスの腕を掴んで必死に問うカーリンに、またもや四人の失笑を誘う。
珍道中も終わり、ようやく目的地へ着いた一行の目の前に広がる風景に歓声があがった。
白の砂浜とコバルトブルーの海が織り成すコントラストにカーリンの瞳が輝く。
女性陣が更衣室で水着に着替える間、砂浜に降り立った男性陣が休憩場所を確保した。大型のサンシェードテントを放り投げると、あっという間に空中で広がり簡単ながらも立派な憩いの場所となる。
早速、荷物を中に入れると三人は彼女等の登場を待った。
「ビアンカはともかく、今どきの女の子ってどんな水着なんだろうな?」
ランディは通り過ぎるカラフルな水着を、嬉々した目で追っている。
「また余計なことを言うと、ビアンカに蹴り倒されるぞ」
アレックスに脅されて、ランディが慌てて後ろを振り向くと丁度水着姿の三人が歩いてきた。
チェリーは胸元と腰のフリルが付いたパステルグリーンのビキニで、セドリックが短く口笛を吹いて出迎える。
ビアンカは皆の予想を裏切らず、バラが描かれたゴージャスなビキニだ。迫力あるプロポーションに派手なビキニは、良くも悪くも皆を引かせる。
そしてカーリンはというと、水色のパーカーのチャックをしっかり首元まで上げて完全防備で登場した。なんでも初めての水着デビューで恥ずかしいとのことである。
「よし、俺達も着替えてくるか」
ランディの掛け声で男性三人も更衣室へ向かう。
「男の水着に興味ないけど、肉体美は見ものよ」
「鍛えているからいい体してますよね」
チェリーは、ビアンカの背中にサンオイルを塗りながら頷いた。
「残念ながら、お二人の裸は未だに拝見していません」
「そうなの?」
「特に教官はレアで、見慣れているのはカーリンだけです」
蚊帳の外だったカーリンは目を剥いて反論する。
「恋人なんだから見慣れてもいいじゃないか!!」
ここまで堂々と言い切るものだから、チェリーとビアンカは顔を見合わせた。
「随分、大胆な発言をするようになりましたね」
「そりゃ、アレックスが調教しているもの」
「誰が調教しているって?」
怒りのこもった低い声に、ビアンカ達はギョッとすると、早々に着替えを済ませたアレックスが腰に手を当てて睨んでいる。
「やだ、聞いてたの? 油断も隙もないわ」
「おいおい、よせ。こっちに飛び火するんだから」
頭にサングラスを乗せたランディが顔を顰めた。ただせさえ、じりじりと照りつく太陽を浴びているのに、これ以上熱きバトルは勘弁願いたいものだ。




