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河童と牛鬼と濡れ女

しばらく走っていると、先生が車を停めるよう指示をした。

「ここからはこの川を渡って終わりだから徒歩で行く。3人固まってて。」

「分かりました。」

そう言って先生の言う通りにする。

そしてまたしばらく歩いていると、前回の山姫同様、女の人が困ったように立っていた。

しかし山姫とは違って赤子をおぶっていて、顔はごく普通だ。

「こんどこそ困っている人なのでは?助けた方がいいと思うんですけど…。」

そう言う僕に向かって渡辺さんは、「あの赤子、動いてるけど息してないよ。」と鋭く指摘した。

言われてみればそんなような気もする。

「これは小林には危ないから渡辺が行って。」

やはり人間ではないらしい。

「おっけい。」

軽く渡辺さんが返事をして、まっすぐ女の人に向かって歩いていった。

「ちなみに何があっても喋んないで。」

先生がそう付け加える頃には、渡辺さんが声をかけていた。


「あの、大丈夫ですか?困っているならお助けしますよ。」

改めてみると演技がものすごく上手い。

「では、赤子を少し背負っていてくれませんか?」

一見普通のお願いに聞こえる。

「分かりました。」

そう言って渡辺さんは赤子を背負った。

「重くないですか?絶対に落とさないでくださいね。」

そう言うと、女の人は少し不気味な表情になった。

しかし、渡辺さんは顔色ひとつ変えずに「全然大丈夫ですよ。」と返事をした。

それが気に入らなかったのか、女の人は「これでも?」といって指を鳴らした。

すると赤子は石になって、川から頭が牛で胴体が蜘蛛の化け物が這い上がって来た。

思わず大丈夫かと言いそうになったが、喋るなと言われていることを思い出してぐっとこらえた。

襲われそうになっている渡辺さんに向かって先生は、前回僕を助けた形代を女の人と化け物めがけて投げた。

すると石はなくなり、女の人と化け物は塵になって消えた。


「ありがとね。」

渡辺さんはそう言いながら肩をはらった。

「にしてもおかしい…。」

呆気にとられている僕をよそに、先生は悩んでいた。

「どうしたんですか?」

やっとでた僕の言葉を聞いて、先生は歩きながら説明しだした。


「簡単に言うと、予想が外れた。

私は出てくるとしたら河童くらいだと思ってたんだけど、それよりもっと危ない牛鬼と濡れ女が出てきちゃった。

牛鬼は頭が牛で体が蜘蛛のやつ。濡れ女は赤子を背負ってたやつ。

牛鬼と濡れ女は、さっき見てたみたいに協力して人を襲う。最悪死ぬ。」

この説明を聞いて、また背筋が凍った。

そんな僕をおいて渡辺さんは、付け加えて説明した。

「本来この川に牛鬼と濡れ女は居ないはずなんだよね。

なんでかっていうと、河童がいるから。

この村では河童がでるっていう話結構有名なんだよね。

それなのに河童じゃなくて牛鬼と濡れ女がでてきちゃったから先生は悩んでるの。

だってここに河童が居ないってことは違う場所にでたってことでしょ?

死ぬほどではないとしても、充分危険。」

それを聞いてまたまた背筋が凍った。

そしてやっとことの重大さを理解した。

重い沈黙のまま歩いていると、赤いパイプが見えてきた。

集合場所だ。

予想外のこともあってか、時間は丁度12時になっていた。

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