表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バースデー  作者: K
PR
14/27

14

 遊史の肩がひどく揺れた。

 泣いてる?


 遊史は、涙を見せない。

 母親が死んだ際も、一樹の前で、涙は見せなかった。


 そんな遊史が、泣いている。


一樹は、立ち上がり、遊史のそばにしゃがみこんだ。

「遊史?」

声は出さない。

けれども、泣いているのが、うつむいていてもわかる。


一樹は、思わず遊史の肩を抱いた。

遊史は、驚いたように軽く反発したが、逃げた身体を更に抱き込むと、もう、抵抗しなかった。

おとなしく、一樹に肩を抱きかかえられて、身を震わせていた。

「我慢しなくていいよ。俺の前では泣いていいんだ。」

 一樹が言った瞬間、ボタボタと涙が落ちた。




 苦しかったこと、悲しかったこと、我慢していたこと、ここに至るまで、色んなことがあったはずだ。


 一樹が、勝手な事情で、遊史と距離を置いたくせに、勝手な気持ちで、自宅に連れ帰り、食事に誘った。

 一番、仲の良かった一樹から、一方的に、理不尽に避けられて、怒りも哀しみもあったはずだ。距離をおいてからの時間は長い。

一樹との蜜月よりも長い時間がたっていた。

今更、同情されて、嬉しかったとは思えない。

けど…。


 それだけ、疲れていたんだ。


 相手は、理由も告げずに、勝手に離れてしまった元親友だ。

 泊めた朝は、さっさと帰ってしまった。

 当然だ。

 それだけの距離が、俺達にはあった。

 俺があけた。


 だが、鍋の誘いには応じてくれた。


 そこまで、弱っていたんだ。


 わだかまりはあったはずだが、それに、こだわれないほど、遊史が、いっぱいいっぱいだったことがわかる。

 今のままでは、いけないと、自分でも思っていたのだろう。

 けれども、八方塞がりの状態だった。

 つい、多分、そうだ。

 つい、一樹の誘いに乗った。


 そして、人前で、泣いたことのない遊史が、一樹の腕の中で泣いていた。


 

 遊史の優しい笑顔が好きだった。

 その為なら、何だってしたい。

 一樹は、時間を忘れていた。




 やがて、遊史は、ゆっくりした動作で、一樹から、身体を離した。

 どれくらいたったのか、わからなかった。

「悪い。」

 一樹に謝る遊史の声は、まだ、とても小さかった。

 一樹は、胸が痛くなるのを感じながら、明るい声で言った。

「飲もう。今夜は酔いつぶれよう。」

 真っ赤な目をした遊史も、少し笑ってうなづいた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ