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遊史の肩がひどく揺れた。
泣いてる?
遊史は、涙を見せない。
母親が死んだ際も、一樹の前で、涙は見せなかった。
そんな遊史が、泣いている。
一樹は、立ち上がり、遊史のそばにしゃがみこんだ。
「遊史?」
声は出さない。
けれども、泣いているのが、うつむいていてもわかる。
一樹は、思わず遊史の肩を抱いた。
遊史は、驚いたように軽く反発したが、逃げた身体を更に抱き込むと、もう、抵抗しなかった。
おとなしく、一樹に肩を抱きかかえられて、身を震わせていた。
「我慢しなくていいよ。俺の前では泣いていいんだ。」
一樹が言った瞬間、ボタボタと涙が落ちた。
苦しかったこと、悲しかったこと、我慢していたこと、ここに至るまで、色んなことがあったはずだ。
一樹が、勝手な事情で、遊史と距離を置いたくせに、勝手な気持ちで、自宅に連れ帰り、食事に誘った。
一番、仲の良かった一樹から、一方的に、理不尽に避けられて、怒りも哀しみもあったはずだ。距離をおいてからの時間は長い。
一樹との蜜月よりも長い時間がたっていた。
今更、同情されて、嬉しかったとは思えない。
けど…。
それだけ、疲れていたんだ。
相手は、理由も告げずに、勝手に離れてしまった元親友だ。
泊めた朝は、さっさと帰ってしまった。
当然だ。
それだけの距離が、俺達にはあった。
俺があけた。
だが、鍋の誘いには応じてくれた。
そこまで、弱っていたんだ。
わだかまりはあったはずだが、それに、こだわれないほど、遊史が、いっぱいいっぱいだったことがわかる。
今のままでは、いけないと、自分でも思っていたのだろう。
けれども、八方塞がりの状態だった。
つい、多分、そうだ。
つい、一樹の誘いに乗った。
そして、人前で、泣いたことのない遊史が、一樹の腕の中で泣いていた。
遊史の優しい笑顔が好きだった。
その為なら、何だってしたい。
一樹は、時間を忘れていた。
やがて、遊史は、ゆっくりした動作で、一樹から、身体を離した。
どれくらいたったのか、わからなかった。
「悪い。」
一樹に謝る遊史の声は、まだ、とても小さかった。
一樹は、胸が痛くなるのを感じながら、明るい声で言った。
「飲もう。今夜は酔いつぶれよう。」
真っ赤な目をした遊史も、少し笑ってうなづいた。




