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サラリーマンの不死戯なダンジョン  作者: 昼熊
理不尽なゲーム開始

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31/111

十五回目 3

 吹雪をものともせずに歩く炎の男――それが俺だっ!

 『発火』の鍛錬も兼ねて、全身から火を放出しながら雪原を歩いている。『発火』と『熱遮断』を同時に発動させているので、体力と精神力が削られていくのが実感できるが『ど根性』でかなり強化されているので、今のところ問題は無い。

 まあ、一つ欠点を上げるとすれば、黒虎が触れないことぐらいだろう。黒虎は俺から少し離れた位置で怯えているような、驚いているような何とも言えない表情をしている。


 一歩踏み出す度に、足元の雪と体に当たる雪が蒸発していく。この全身炎上状態のメリットは雪の中での動きやすさだ。雪の重さを感じて歩くのも不便だった今までの行程が嘘のように、普通に歩けている。

 火力が弱いので雪に触れたら一瞬で火が消えるかと思っていたのだが、そんなことはなかった。第四ステージではこの能力かなり有効だな。


「ふぅ、火を消すか」


 とはいえ長時間の稼働は負担が大きい。雪の中で敵と戦う時限定にした方がいいかもしれない。

 火が消えると黒虎が俺の傍に戻ってきた。その背をぽんぽんと軽く叩き、共に進んでいく。『熱遮断』の効果をかなり落としているが、純白のロングコートの保温性が優れているので、寒さは殆ど感じない。革靴の足元と手はきついので、そこは能力を強めに発動しているが。

 雪山の麓までは問題なく辿り着いた。自分が着実に成長しているのが手に取るようにわかるのは、やる気へと繋がる。それも、製作者の意図だったらイラッとするだけだが。


 いつもの洞穴で休憩をしながら、俺はあの事を考えていた。

 ここには俺以外にも連れてこられた人がいて、今も同じようにステージへ挑んでいる。

 その人数は不明だ。オッサンだけなのかもしれないし、もっとそれこそ百人単位でゲームに強制参加させられているかもしれない。

 でも、第二ステージのマグマゾーンや、この雪原地帯を何十も用意できるわけがない。となると、第二、第四ステージのような巨大なマップは他のプレイヤーも共通で、今も同じように雪原を歩いている最中のプレイヤーがいるかも。


 黒虎や火の鳥の様な中ボスの立ち位置である敵は各プレイヤーで異なっていて、プレイヤーが死ぬと同時に初期化されている。巨大マップは自然がメインなので巻き戻す必要もなく、多くのプレイヤーが同時に参加しても問題が生じない。

 この考えは意外といい線いってないか。だとしたら、マグマゾーンは無理だが、この雪原なら時間をかけて探し回る価値があるかも知れないな。


「それも、もう少し余裕ができてからか」


 かなり第四ステージが楽になってきたとはいえ、歩き回るには不安がある。第五ステージの全貌を把握してクリアーのめどがついてからでも遅くない。


「何はともあれ、恒例の雪山登山行ってみようか」


 いつもの登山ルートに入り込み足早に進んでいると、同じ場所、同じタイミングでアイスドール10体が現れる。

 待ち構えていた俺たちは右手から火を出し、『火操作』により小さな火の玉を浮かび上がらせる。そして、その火の玉に黒虎が吐き出した『溶解液』の塊をぶつけることにより、巨大な火の玉が生まれた。

 共同作業により生み出された火の玉はアイスドールの群れの中心部に着弾。命中した一体は一瞬で蒸発し、飛び散った燃え盛る溶解液を浴びた周囲のアイスドールも甚大な被害を受けている。

 想像以上の威力だな。今の一撃で相手の過半数が戦闘不能と化した。

 俺は体に火を纏い、雪道をものともせず一気に間合いを詰めて、残りの数体を打ち砕く。黒虎も二体を仕留めて終了となる。


「どうだ、俺たちの協力必殺技は」


 『発火』と『火操作』を覚えてから、この時を待ち望んでいた!

 頭で思い描いていた以上に上手くいったので、俺としては大満足だ。黒虎も同じ想いらしく、鼻を鳴らして自慢げだ。

 これで雪山攻略も随分と楽になる。相手に効果が覿面の飛び道具を得たのだから。

 それからは破竹の勢いで雪山を制覇し、山頂の扉前に到着した。そして、第四ステージをあっさりクリアーして、休憩所へと入っていく。


「順調、順調」


 こういったところがゲームと同じだよな。一度クリアーしたステージは油断をしない限り、死ぬことは無い。能力が上がれば上がるほど、難易度が下がる。


「そして、死んで戻ることによりメリットがある」


 褒美の一覧を見て、苦笑してしまう。何度も死ぬことを前提とした褒美の数々。死ぬことへの忌避感が薄れるように仕向けていると思ってしまうのは、考えすぎだろうか。

 どこまで意図して作られているのか。全てが相手の思うツボだとしたら癪だな。

 だとしても、褒美を選ばなければどうしようもない……選ぶか。


 一つ、第四ステージ突破クエスト達成による経験値。

 一つ、四つの防具から好きな防具を進呈。(武器や背負い袋と同じく巻き戻っても手元に戻る)

 一つ、黒虎を人化させる。もしくは、黒虎に自分の所有している特殊能力を一つだけ覚えさせることができる。


 えっ、防具の項目が消えてないぞ。ロングコートを選んだのに防具がまだ選べるのか。よく見ると、五つの防具が四つの防具に変わっているな。今回は特殊能力を選ぶ時のように防具を全て得ることも可能なのか。死に戻ればの話だが。

 また悩みが増えた。これって防具の褒美だけは次のステージに持ち越されるかもしれないな。確実性は無いけれど。

 でもまあ、ここで選ぶのは決まっている、お馴染みの経験値だ。身体能力が上がればあらゆる場面で応用が利く。

 いつもの力が漲る感じを存分に味わってから、ステータスの確認をしておこう。


 山岸 網綱 レベル20

 体力  58+900

 精神力 63+900

 筋力  60+30

 頑強  61+30

 器用  52+30

 素早さ 49+30

 

 特殊能力 『ど根性』9『熱遮断』4→5『石技』5『気配察知』5『暗視』5『棍技(我流)』5『体幹』5→6『咆哮』4→5『野生』5『危機察知』1『火操作』2→3『発火』2→3

 ライフポイント 90/105

 持ち物 特製石棍(不壊) バックパック(サバイバル用品一式) 純白のロングコート(不壊)


 ステータスを改めて見てみると……体力精神力の上りが尋常じゃないな。『ど根性』の効果なのはわかっているが、数値だけで判断するなら心臓がダイヤモンド製だとしてもおかしくない。

 他のステータスも『体幹』を合わせたら、初めの値の9倍ぐらいだ。完全に人間止めているぞ、これ。

 特殊能力は上りが悪くなってきている。『ど根性』は9に上げてから微動だにしていない。そうなると逆に10レベルに到達した時の期待感が増すな。

 他のも順調なのだが上がらなくなった能力は今のままで充分使えるので、必要性を感じないから停滞しているのかもしれない。あとレベルが低いと上がりやすいのか。『火操作』『発火』が良い例だ。レベル5ぐらいから厳しくなるみたいだ。


 でだ、新たに増えているのが『危機察知』なのだが、これいつの間に覚えたのだろう。前回、ここまで来た時には無かった能力。可能性として一番考えられるのは……あのオッサンのステージか。あそこで自然に覚えられる特殊能力っぽい。

 となると、製作者としては予想外の展開か。これが最終的な切り札に育つと嬉しいけど、能力的に微妙っぽい。でも、能力が増えたことは純粋に喜んでおこう。

 あとは黒虎も確認しておかないとな。


 黒虎  レベル17→22

 体力  540

 精神力 340

 筋力  116

 頑強  110

 器用  75

 素早さ 118

 

 特殊能力 『熱耐性』8→9『気配察知』6→7『暗視』5『咆哮』4→5『溶解液』4→5『野生』6→7

 ライフポイント ∞


 黒虎にレベルで勝ったと思ったら、越えられているじゃないですか、やだー。

 くっ、やはり敵を倒して経験値が入るというシステムが羨ましいぞ。火の鳥とか経験値、いいんだろうな。黒虎だけ効率のいいレベル上げが可能とは。

 特殊能力の上りも俺よりいいぞ。同じように戦っているのに『野生』がぐんぐん伸びている。やはり、俺も裸で挑むしか……いや、冷静になれ。それでレベルが上がっても、その能力を何処で生かせと。


 黒虎が仲間になってくれたおかげで、このゲームの難易度がかなり下がっている気がする。敵を倒して経験値稼ぎというゲーム定番のレベル上げが、ここでは通用しないと思っていたが黒虎に適用されるのであれば、やるべきか。

 レベル上げさえすれば、どんな敵にでも勝てるというのが常識。何か罠が仕組まれていない限り、黒虎を強化させることはメリットしかない。


「黒虎、次からはもう少し積極的に敵を倒してみようか」


「ぐあーぅ」


 俺も『体幹』『棍技』を鍛える必要もある。第五ステージは能力の底上げとマップの探索といこう。

 休息と栄養補給を終え、俺と黒虎は二度目の第五ステージに挑む。


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