第14話 ルビー、魔法の書を得る
「やっぱり王城はゲームと同じままみたいね」
王城に案内されて城門を潜ると中の内装や配置もゲームと同じだった。
それよりも一つ気になる事がある。
中に銅像が飾られているのを見つけたのだが、あれはどうみてもマリン・サファイアさんの銅像だ。
どういう事なんだろう?
もしかしてこの世界にマリン・サファイアさんも来ているのだろうか?
考えすぎかな・・・。
もしいたら嬉しい気持ちでいっぱいだけど、、、。
「どうぞ、こちらです」
スペード騎士団の方々に丁重に案内されるとその部屋はゲームでも何度も訪れる王の間と呼ばれる場所だった。
その王の間の奥に王冠を被った髭を生やした男性が堂々と座っていた。
スペード騎士団の全員が膝をついて頭を下げていた。
「陛下、市民爆破事件の目撃者及び、周囲に危機を知らせて被害を最小限に抑えた功労者を連れて参りました」
「おお~!よくぞ戻った!スペード騎士団団長、ハサベルよ!そしてその者達が目撃者か。名を何と申す?」
陛下と呼ばれる人物から名前を問われたので、すぐに私も頭を下げて対応した。
自分の対応を見て、少し遅れてシャーリーちゃんもお辞儀した。
「はじめまして、陛下。私はルビーと申します。こちらは私の弟子のシャーリーです。二人で各地を旅する冒険者です」
「です!」
「ほ~う、冒険者とは!よくぞこの王都【スペード】へ来たな。私の名はヘンリー・スペード。旅の途中でこんな事件に巻き込まれるとは災難であったであろう?」
「いえ、それよりもこの事件はいつ頃から発生したんでしょうか?」
「うむ・・・数週間前くらいからじゃな。今までこんな事件はなかったというのに、正直国民から不安の声が上がっていて王として、何とかこの事件を解決したいところなのじゃよ!」
私がこの世界に来る前から起きている事件という風にも捉えられる。
この事件はおそらく誰かが【対象爆破】の魔法を遠隔で発動していると考えても良さそう。
【対象爆破】の魔法は習得が難しい訳ではない。
ゲーム内で暗殺スキルという項目があり、それが確かレベル3に到達していれば誰でも発動させることができる魔法ではあったはず。
ただ、対モンスター相手にはそこまで効果がない為、プレイヤーをキルする為のスキルと言ったところではあったのは確かだった。
でもこれがゲームではない異世界の出来事だとしたら脅威度はテロレベルといったところね。
このまま放置していればどれだけの被害がでるかわからない。
「陛下、この事件に自分は心当たりがあります。今回の件・・・私に調査を任せてもらってもいいでしょうか?」
「おおー!冒険者たちよ!やってくれると申すか!?是非頼みたい!」
「ありがとうございます。一つだけお願いがあるのですがよろしいでしょうか?」
「何なりと申してみよ」
「でしたら、魔法の書を頂きたいのです。私とこの子に」
「ふむ・・・」
陛下は黙って考えているご様子だった。
本来であれば冒険者ランクをある程度あげないと魔法の書は入手できない。
なので、ダメ元でさくっ入手できればかなり戦略にも幅が広がると思ってのお願いだった。
「いいだろう!本来ならば正式な手続きが必要だが、今回は緊急の案件じゃ。無事にこの事件が解決できることに期待しておるぞ、ルビー、シャーリーよ」
「はい、お任せくださいませ」
やった!
こんなにあっさりと魔法の書を手に入れることが出来るなんて、ラッキーなのかも!?
「ではこちらが魔法の書です」
スペード騎士団団長のハサベルさんが、2冊の魔法の書を手渡してきた。
1冊はシャーリーちゃんに手渡した。
「師匠、これが魔法の書?」
「ええ、これがあればシャーリーちゃんにも魔法を教えてあげることが出来る筈よ」
「ほんと!?わーーい!」
大はしゃぎしているシャーリーちゃん。
「それでは陛下、私達は事件の調査を開始しますので失礼します」
「失礼します!」
シャーリーちゃんも深々とお辞儀をして私達は王の間を後にした。
♢
「さて、事件に巻き込まれて途中になっちゃってたけど、まずは宿探しね」
先程正門前で実は、衛兵さんから地図を貰ってみたところ、この王都【スペード】には50を超える宿がある。
色々見て回りたいところだけど、シャーリーちゃんを見てみるとかなり疲れた表情をしていた。
今日はなるべく近場ですぐに休んだ方が良さそうね。
「シャーリーちゃん、あそこの宿にしよっか!」
「師匠ー、本当にここでいいの?」
見た目でいえば確かに豪華とは言えない外観ではあったが、一番近いし何より1人あたり銅貨4枚で泊まれるのでお得はお得である。
「大丈夫、さっ!入りましょ!」
中へ入ると、受付の男性がこちらへ挨拶してきた。
「いらっしゃい!お二人さんで?」
「はい、1泊でお願いできますか?」
「勿論大丈夫ですぜ!食事はどうするんだい?」
「ん~・・・」
少し悩んでいると宿主がにっこりと壁に貼ってあるポスターを見てと教えてくれた。
「実は昨日から王都【スペード】の西区画の方でお祭りが始まってるよ。そっちなら色々屋台もあるし何より嬢ちゃん達はそっちの方が面白いんじゃねーか?」
「なるほど・・・シャーリーちゃん、お祭りやってるみたいだけどどう」
「いく!!」
私が言い終える前に即答してきた。
余程お祭りを見てみたいのね~。
「じゃあ、食事無しで。1人銅貨4枚で大丈夫ですか?」
「あいよ!確かに!じゃあこの12号室を使ってくれ。1階の右奥の部屋だ」
「ありがとうございます!」
宿主から鍵を預かって中に入ってみると、かなり広めで2つベッドもちゃんとある。
古いながらもしっかりと手入れされており、おひさまの香りがお布団からして、自然と安らぎを感じることができる。
更には、お風呂も設置されておりかなりゆっくり休むことが出来そうな素敵なお部屋だった。
「わあ~うちのお部屋よりも広いー!わーい!」
「こら、シャーリーちゃん!あんまり騒いじゃ駄目だよ。他にも泊まってる人がいるかもしれないんだから」
♢
それから数分後、流石に疲れていたのかシャーリーちゃんはあっという間に眠りについた。
窓から外の景色を見てみると、既に夕暮れで段々と薄暗くなってきていた。
少しだけ休憩したら、シャーリーちゃんを起こしてお祭りに向かうとしますか・・・。
このお祭りに行く理由はただ楽しむというだけではない。
おそらく今回の事件で狙うとしたら人が多いところを狙ってくる可能性があると考え、調査に出ようという理由もある。
それにたくさんの人が集まるのなら、聞き込みも出来るから情報を集めるにはうってつけという訳なのだ。
「あとはこれだよね・・・」
魔法の書を開いてみると、いつか訊いたあの天の声のようなものが私の頭に響いてきた。
【魔法の書を使用しますか?】
「はい」
私が返事をするとすぐに魔法の書は光輝き砂のように目の前から消えていく。
それと同時に私の身体が薄っすらと光って静かに消えていく。
まるで私が魔法の書を吸収したような感覚だ。
「よし、まずは・・・」
指先に炎を灯すイメージをする。
するとほんのり火が指先に灯った。
「できた!あとは、部屋に備え付けのランタンに」
部屋の各所に置かれていたランタンにその火を少しづつわけて灯していく。
かなり明るくなったし、おしゃれなお部屋感が更に増した感じよね。
初歩的な火属性魔法だけど、これで魔法が発動可能になっていることは確認できた。
あとは自分のゲームと同じレベルの魔法が発動できるかどうかだけね。
「よし!頑張っていかなくちゃ!!」
この世界で生きていけるように地道に今は行動していこう!
元の世界に戻れるかどうかはわからないけど、大丈夫!前向きに考えていこう!
それから私は色々な初歩的魔法が発動できるか確かめていくのであった。




