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19話 カラカラだぁ

「まっ、待ってミーシャ!はぁはぁ・・・もう・・・ダメだこれ以上は!!・・・はぁはぁ!も・・・もうカラカラだよ!!」


「まだダメだよっ?もう少しイッてもらわないと困るんだから!ほら!動いて!?あとちょっとだから頑張ろうね(ゝω∂)」


 足が上がらない。乳酸溜まりまくりで棒のようだ・・・!縄張りの境界付近が一番危ないとかでそこを一気に越えたいのだが、なにぶんの獣道でまあ~険しいこと険しいこと!段差の一つ一つが現代人の俺には優しくないのだ。


「いや、ちょっと、ノド・・・はぁはあ・・・カラカラなんすよ・・・せめて水を・・・!」


 山に入ってから、多分二時間位歩いただけで竹筒の中の水はスッカラカンになってしまった。豊かな山だ、清水くらいその辺に涌いているだろうと勝手に高をくくっていたのがマズかった。目の前の低木にノドを潤せそうな瑞々しい実がなっているが


「食べられるかって??私らはヘーキだけどヒトはど~かなぁ?試してみたら?( ̄△ ̄)」


 だ、そうだ。止めておこう。下痢にでもなってこれ以上水分を持っていかれるはマズい。


「ハアハア・・・歯の裏舐めるのも小石口に含むのも梅干しイメージするのもぜーんぶダメだ~。も~ダメだぁ~!このままじゃ干し肉になっちゃうよ俺~⤵⤵」


「あ”~もう、ウッサいなあ!危ないけどそこの丘越えた向こう側に縄張りの境にしてる川が流れてるからそこまでもうちょい頑張って( ̄0 ̄)」


「分かった~。ハァハァ・・・頑張るよ」


「だいたいケンチだよ?「自分で歩く~」って言ったのさ~。私に乗ってけば早いのに( ̄△ ̄)ブツブツ・・・」


「ゴメンて・・・だってさ、たとえミーシャが熊さんだったとしてもやっぱりカワイイ女の子に股がるのは男としてど~かなぁ~って」


「カワ・・・(〃ω〃)え?いや、まあ、うん、私は別にケンチなら・・・ゴニョゴニョ・・・背中掻いてもらうの好きだし・・・ゴニョゴニョ・・・だって私ケンチの・・・」


「お~~!!川だ~!!川だよミーシャ!!いや~、いい景色だあっ!やっぱりかわはいいね!!」


「カワはいい・・・あ~そうね!川だね(*`Д´*)」


 丘を登りきると谷間を流れる清流が見えた。俺はさっきまで脚が重かったのも忘れ一目散に川へ駆けよった。


「あ~水!みずぅ!!ゴクゴク・・・ぷはぁ!生き返った~!水がこんなにも美味いなんて!!

 なんつーか 気品に満ちた水っつーか たとえると アルプスのハープを弾くお姫様が飲むような味っつーか スゲーさわやかなんだよ・・・3日間砂漠をうろついて 初めて飲む水っつーかよぉーっ!」


 名ゼリフを言ってみるがシラケ顔で俺を見つめてくるので恥ずかしくなり、目を逸らし辺りを見回す。

 大きな岩の間を流れる川は所々で落ち込みを作り、高低差の在るところでは上質なシルクカーテンのような滝を魅せている。そこから切り立つ岩壁を撫でるような大きな淵がゆったりと右へカーブしながら眼下のチャラ瀬へと続いていった。


「良い子でちゅねえ~頑張りましたねぇケンチくん。お水はおいちいですかあ~( ̄△ ̄)」


 あれ?なんか知らないけど機嫌悪い?ぷりぷりしてるぞ??・・・分かった!アレだ!!


「お腹空いたんでしょ?ミーシャ。アッチのチャラ瀬でお魚出してあげるから追っかけたら?」


「え!?やったあ♪おっきいのね!おっきいの!!やっぱりさぁ、川で追い込んでバシッとやったお魚は格別に美味しいんだよね~(≧∇≦)b」


 ほらね?やっぱり。・・・うん、解るよ!同じ養殖のニジマスでもスーパーと自分で釣ったのじゃ段違いだもんね!そんな感覚かな?ん~、なんにしようか・・・この間ヒメマスを美味しいって言ってたからそれにしようかな。


「じゃ、行くよ~!」


 召喚されたヒメマスは一瞬キョトンとしたそぶりをみせたが、直ぐに状況を理解してトップスピードで逃げていった。


「イヤッホ~!まてまて~(*≧ω≦)」


 チャラ瀬をジャバジャバと右から左に走り回り段々とヒメマスを追い込んでゆくミーシャ。楽しそうで何よりだけど、すげぇ体力だな。俺なんかもうクタクタで・・・その辺の岩にでも座って休みますよ・・・。


「ん?若しかして・・・」


 何となく川底の石が気になったので拾いあげてみた。


「やっぱり居た!!」


 どの石にもひっくり返してみると沢山の蜻蛉の幼虫達が・・・チョロ、ピンチョロ、クロカワムシ・・・俺が幼い頃は都心部付近の川でもかなり見かけたものだが最近は本当に減ったものな・・・ここは、うん、豊かないい川だ・・・。


「これはア○マ釣りするしかない!(世の中に配慮して伏せ字とさせていただく。昨今はピストン釣りなんて名前がついているが、幼少より慣れ親しんだこちらの方がしっくりくる。悪意があってついた名称ではないのに、何とも生きにくい世の中だったもんだ・・・)」


 まず、手頃な枯れ竹にハリス付の袖バリをつける。長さはヒトヒロとちょっと。錘は要らない。この釣りは至ってシンプルなのだ。

 川虫を針に付けたら川面に竿を浮かべてエサが自然に流れるように送り込んだらスッと腕を引く。また流す。スッと引く。その繰り返し。石から離れ水中を漂う虫を演出するのだ。時折足で川底の砂利を引っかき回すと濁りと川虫が舞いエサをカモフラージュする。この釣り方の由来だ。

 五回目のスッの時、竿を繰る右腕に

「ココッ」

と小気味良いアタリがきた!竿を立てると、くくくっ、くくくっと小型ながら力強いヒキが竿を通して腕に伝わる。その辺から取って来ただけの竹だけど、やっぱり一本竿はいい!!ヒキに雑味を感じないもの!!これはミーシャにも薦めなけりゃ!


「ミーシャ!これ楽し・・・どうかした?」


 口の端から皮付きの魚肉をダランと垂らしたまま山の方をジッと見つめている。


「・・・ん?なんでもな~い!新しい釣り方??おっきいの釣れる?(`・ω・´)」


 鱒を食べ終えたミーシャがコッチへ向かって来たが、まだ魚皮がぶら下がったままだったので片手で取ってあげた。


「ん~?おっきいのには耐えられないかな~。ほい、釣れた!!・・・そういえば俺、コッチで放流魚以外を釣るのって初めてだ!コイツは・・・背ビレがちょっと違うけどほぼ追川だ。アッチとなんら変わらないや・・・魚も旨そうだし!!俺さ、ぶっちゃけそのうち足とか生えて来て「「なんだよ、コッチみんなよ」」とか話す魚とか居るのかと思ってたよ」


「居ないよ!キモチワルイ(-ω-;)」


 そりぁそうか。ここは完全に異世界って訳でも無いんだよな・・・前にミーシャが基本的には何も変わらないって言ってたっけ。


「おっ!またきた!!このねぇ~、腕がスコン、って持っていかれる感覚が堪らないんだよね~!!へっへっへぇ~、同じクロカワムシで2匹目だぜ~♪あ~、ここに揚げ油が在ったらな~!多分コイツ、食味も変わらないと思うんだ。追川はさ~天ぷらにしても美味いし、塩焼きもいいサイズならイケるんだよね~。なによりも美味いのはカタクリ粉まぶして揚げての南蛮漬けね!!しっかり漬け込むと頭ごと柔らかくて玉葱との相性が抜群でウマウマなんだなぁ・・・鯎でもいいんだけどアイツ骨硬いからやっぱ追川だな~。ん~、エンフェイがきっとビネガーなら持ってるかもだけど・・・醤油が・・・」


「ケンチ・・・ちょっとヒク位長~い独り言だよ?何?向こうの食べ物??恋しくなっちゃったのかなぁ~(ゝω∂)」


「そんなんじゃないさ!美味いモノを食わせてやりたいという俺の優しさが言葉で漏れてただけ!」


「そんじゃ、その優しいケンチさん。お魚が足りないのでもう一度お願い出来ますか?(っ´ω`c)」


「あいよ」


 竿を左手に持ち替え右手を川につける。今度のヤツは召喚と同時にロケットみたいにスッ飛んで行った。


「まてまて~(≧∇≦)」


 ハハッ。楽しそうだな・・・。ここが境界で縄張り争いとかがあるかも、なんてゆってたけど・・・。


「平和だな~~」


 目を瞑り耳を澄ますとチャラ瀬をサラサラと流れるせせらぎに交じり・・・若しかしてカジカ?までいるみたいだな・・・澄んだいい声だ・・・。


 バキッ、ブチブチッ、バリッ、グッチャグッチャ


 ・・・恐ろしげな不協和音が・・・ん?治まった。

 ふ~・・・おお、またカジカの鳴き声・・・う~ん・・・この大自然に・・・溶け込んでしまうようだ・・・。


「ンなックしょい~(≧ω≦)º。」


「だあっっ!!」


 ミーシャが背中越しにクシャミを放ったようだった。


「びっくりしたなぁもう!!今3センチ位は飛び上がったよ!!」


「え!?ヒトって飛べるの??スゲ~(゜o゜;)」


「飛べません!ものの例えですっ!!」


 びっくりついでに竿から手を離してしまうところだった。この釣りではよくある事なんだけどアタリが意外にも力強くてびっくり!手を離しちゃって竿が川面をドンブラコ・・・なんてことが起きるがそれと似た感じ。俺も記憶あるなぁ~・・・そんで親父に怒られてたっけ。


「ゴメンて~。なんかムズムズしちゃってさ~(*'▽'*)」


「いや、まあ、いいよ」


「あっ、再度ゴメンちょ!背中に食べかすが・・・てへっ(*'-')」


 背中に着いた魚肉の欠片を摘まんでは食べようとするが熊の手では中々掴めない。俺は「ああ、問題ない」とかゲンドウポーズで言ってみたり。当然通じない。


「あ”あ”あ”っ!もう!!ベロってやっちゃた方が早いなあっ(*`Д´*)」


「それは勘弁して?」


 ヒト型になれば・・・と言いかけてハッと気がつき口をつぐむ。


「ん~。山の中はさ、例え私の縄張りだったとしてもいばり散らかしてないと危ないんだよね~。私のとこ水場をいっぱい持ってるからけっこう人気でさ~。今でもたま~に見廻りの時に襲われる事あるよ?まっ!大抵瞬殺だけどっ(´V`)♪♪」


 俺が察した通りだったが瞬殺返り討ちと事もなげに言う所にちょっと安心感を覚えた。

 

「ただね?この辺はもう縄張りの境界ギリギリだからいつ横取りヤローが来ても、逆に勘違いで獲りに来たと思われちゃって襲われるカノーセーもあるの。だからケンチも気をつけてね」


「あ・・・ああ」


 前言撤回。顔文字が無いことでこれは本気で危ないのかもと思い直し釣りをするのを止めた。

 竹竿から糸を外して仕掛け巻きにしまい込むと川の水で顔を洗った。水の冷たさに気持ちが引き締まる。濡れた顔を拭こうと荷物を探るとソントンさんの作ってくれた蓮蓮(れんばす)が目に入る。


「一口頂くかな」


 包まれた葉を解き少しかじるとカロリーメイト的なモフモフ感に口の中の水分が持っていかれた。またノドがカラカラだ。再び川の水を飲もうとかがみ込むとやっばりミーシャが山の方を見つめていた。


 


 

 

 



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