魔物の街 87
「しかしまあ、衣類の破片とか見つからないもんかねえ。身元が分かればそこから何とか切り込むって手もあるんだろうけど……」
景気良く麺を啜りこみながらつぶやく要。誠もその意見には同意して頷くと真似をして麺を啜りこむが思い切り気管に吸い込んでむせ返る。
「なにやってんのよ!誠ちゃんは」
アイシャが咳き込む誠の背中をさする。そして不意に見上げた先に青い表情でチャーシュー麺とチャーハンセットを見下ろして黙り込んでいる島田を見つけた。
「おい、食えよ。力つかねーぞ」
心配したようにランが声をかける。島田を気にして箸をつけられないサラが不安げに島田を見つめている。
「今回も手がかりは……」
「仕方ねえなあ」
そう言うともう食べ終わっている要は首筋にあるジャックにコードを刺してそのまま一番近かったランの使っていた端末のスロットに差し込んだ。
「見てな」
どんぶりを抱えて近寄るカウラに一言言うと画面が高速で切り替わっていく。
「監視カメラですわね。……それにしては位置がおかしくありません?」
茜の不審そうな顔に不敵な笑みで答える要。同盟本部ビルの前に小夏くらいの年の少女が目つきの悪い男に連れられて画面の中に入ってくる。
「こんなの良く見つけたな」
カウラがそう言った瞬間、少女から発せられた衝撃波で次々と周りの人物や車、そのほかの障害物が撥ね飛ばされていく。
「これがあの肉の塊に……」
そんな低くつぶやくような誠の言葉に、一同からそれまでの歓喜の表情が消える。そして不安定な位置に取り付けられていたらしく画面は転倒し空だけを映し出すようになっていた。
「西園寺、あの少女の写真は?」
「もうすでに所轄に送ってますよ。さすがにここまで話がでかくなれば面倒だろうが動かないわけには行かないでしょ?それと明石のタコ経由でライラの山岳レンジャーにも転送済み。後は彼らの運にかけるしかないけどね。まあこの情報は証拠性でなんどか検察が負けた系統のネットから拾った映像ですからねえ。物的証拠が出てこないと意味無いんだけどさ」
そう言うと首筋のジャックからコードを抜いてそのまま呆然としている島田からチャーハンを取り上げて食べ始めた。
「要ちゃん!」
「サラ。良いじゃねえか。島田もようやく食欲が出たみたいだし」
要の言うようにすでに島田はチャーシュー麺のどんぶりに手をやっていた。
「ええ、食欲は出てますよ。当然デザートに西園寺さんのおごりがあるんでしょうからその分も空けておきますから」
「そうですわね。こんな情報を知っておきながら独り占めなんて……厳罰が必要ですわ」
「つーわけだ。それ食い終わったら……工場の生協は24時間営業だからな。ケーキかって来いよ」
茜とランの言葉に渋い顔をする要。だが、誰もが煮詰まってぴりぴりしていた空気が変わって晴れやかな表情を浮かべていた。




