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魔物の街 83

 同盟本部ビルの周りに設置されたカメラからの多数の映像が茜の取り出した端末の上の空間に表示され、その中央にもはや人間であった面影すらない肉の塊が衝撃波で路上のパトカーを吹き飛ばしている様をみて立ち上がり、走り去ろうとする姿があった。

「馬鹿野郎!今更行って何とかなるのかよ!」 

 本来ならば飛び出すタイプの要がライダースーツの島田にしがみついた。黙ってふてくされたような顔をして止めに入るサラに感情を殺したような視線を向ける島田。

「どうしたのよ正人!らしくないわよ」 

 サラがそう言って出て行こうとする島田の手を握った。いつもならムードメイカーとして笑い飛ばすような調子の島田の変調に場は彼を中心に回り始めた。

「ああ、久間さん。包丁持ってきてもらえますか?」 

「腹でも切るのか?」 

 笑えない冗談を言う久間に力の無い笑みを浮かべる島田。画面の中では空中に滞空して肉の塊と化した法術師の成れの果てと戦っている東和警察法術機動部隊の映像が映っている。

「東都警察もやるじゃねーか。法術師の空中行動ってのは結構な技量が必要なんだが……」 

 ランの言葉にしばらく要に押さえつけられていた島田が気がついたように映像に目をやった。

「落ち着いたか」 

 羽交い絞めにしていた要が力を緩めてどさりと床に体を落とす島田。

「おい、下手なことに使ってくれるなよ」 

 そんな島田に久間はカッターナイフを渡した。情けない顔で久間を見つめる島田。

「包丁じゃあ使えなくなるとまずいだろ?」 

 顔を向けてくる島田にそう言って久間はじっとうつろな瞳でカッターナイフを見つめるライダースーツの男を見ていた。

「馬鹿なことを」 

 要が口を開くよりも早く島田は手袋を外した。

「何する気だ?」 

「まあ、見ていてくださいよ」 

 カウラの言葉にそう答えると島田はそのまま手首をかざしてそれにカッターナイフを突き刺した。

「自殺か!自殺志願者か?……?」 

 そんな要の声は手首にナイフを突き刺しても一切血が流れないという状況で沈黙に変わった。

「やっぱりカッターじゃ分かりにくいですよね」 

 島田の顔が痛みにゆがんでいる。手首を切り裂いたはずのカッターナイフの刃には血の跡すらなく、切り裂かれたはずの手首には何の痕跡も残っていなかった。

「異常修復能力者か」 

 マリアの言葉にあいまいに頷く島田。そしてようやく納得が行ったように頷いた要が静かに島田の肩を叩いた。場は一瞬にして島田の笑顔で静まり返った。『仙』と呼ばれる不老不死の存在を前に呆然と茜は島田を見つめていた。誠も存在は知っていた特殊な能力者。宇宙空間に放り出されても蒸発と再生を繰り返しながら生命を維持することが可能とまで言われる不死身の存在。

「とりあえず分かった。でもなあ、一人で突っ走るのはやめてくれよな」 

 そう言うとカッターを島田から奪い取った要。その視線がようやく島田のおかしな態度に得心したと言うように一度つま先から頭の先まで彼を眺めて見せた。

「お前が言うと説得力があるな」 

 突っ込むカウラを無視して要は茜の端末の画面に映している機動隊と化け物の戦いに目を向けた。

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