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魔物の街 81

「じゃああれか……このままいたちごっこを続けるわけか?その間にも犠牲者が出ているっていうのに」


 投げやりな要の言葉だが、誠もカウラもアイシャも同意見なだけにあたりに沈黙が訪れる。その様子に少しばかり慌てながらランが口を開いた。

「そんな風に落胆するなよ。ライラの山岳レンジャーの人的資源も舐めたもんじゃねーぜ。東都警察だって自分のお膝元で、外国の軍隊が令状持っておおっぴらに捜査活動なんか始められたら面子もあるから動くだろ?」 

「確かにそうなんだけどよう。久間のおっさんやマリアの姐御の話じゃ相手は相当なやり手だぜ」 

 どんぶりを空にした要の言葉に誠は頷いていた。

「それ以前に明石中佐は令状を出さないんじゃないですか?東都警察を刺激するのは同盟としては避けたいでしょうから」 

 カウラは相変わらず一本ずつ麺を取っては口に運んでいる。

「茜。明石からは連絡があったか?」 

 どう見ても割り箸がその頭や手に比べて大きすぎるように見えるランが茜に目をやる。

「明石中佐はとりあえず令状ではなく指示書で動いてくれないかと持ちかけてみたらしいですわ」 

 静かにどんぶりをテーブルに置く茜。その隣では懐かしい味なのか幸せそうにうどんの出汁の浸みたえびのてんぷらを味わうラーナがいる。

「指示書?それじゃあ任意同行しても証拠として採用できないじゃない。大丈夫なの?」 

 アイシャがなるとを口にくわえながら茜を見る。

「そうですわね。明石中佐もなんとか上と掛け合うから今日は徹夜になりそうだっておっしゃってましたから」 

「ああ、ライラはしつこいからな。だから旦那に逃げられたんだ」 

 ニヤニヤ笑う要を見てアイシャが大きくため息をつく。それを見てキッとアイシャをにらむ要だが、いつの間にか厨房の女性店員が久間の耳元に何かを囁いているのを見て真剣な瞳に戻って久間を見た。

「そうか……」 

 頭の白い帽子を手にすると真剣な表情で一人黙々とうどんを食べている小夏のどんぶりを覗き込む久間。

「どうした?」 

 口に残っていた麺を啜りこんだラン。その幼い表情を前に苦笑いを浮かべながら久間は言葉を切り出す。

「早速8体目の暴走法術師が出たそうだ」 

 久間の言葉にたずねたマリアが絶句する。誠が眺めていたお互いのうどんを交換して食べていた島田と皿が箸を取り落とす。

「どこだ!どこで出た」 

 ランも興奮してどんぶりに箸を突っ込んで立ち上がる。

「それが同盟機構本部ビルの正面だそうだ」 

 沈黙が訪れる。

「そりゃあ暴走とは言わねえだろ?テロだよテロ!」 

 引きつった笑いを浮かべて久間を見上げる要。その様子をカウラが心配そうに眺めている。

「珍しく良いことを言うわね。確かにそれは暴走ではなく爆弾テロみたいなものよ」 

 一人黙々とうどんを食べていたアイシャが汁を飲み終えると、そう言って楊枝を手にして口に運んだ。

「まあライラのお手並みを見ようじゃねーか」 

 そう言って不敵に笑うランの姿を見て彼女が嵯峨のお気に入りであるわけが誠にも分かった。

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